「生物学的性」が本当に意味するものとは？（2015年1月24日）

https://parkertrondelta.wordpress.com/2015/01/24/what-does-biological-sex-really-mean/ の翻訳です。

人々の言う「生物学的性」とはなにか？

表面的には、「あなたは男性ですか、女性ですか？」という極めて単純なもののように思われます。しかし、生物学の多くの側面がそうであるように、これは思ったよりも複雑なものです。この150年ほどの間、科学者らは（ほとんどは特権的な男性です。素直になりましょう）なにがその人の「本当の」性を決定するのかを解明しようとしました。そして、人体の仕組みが解明されるにつれ、「本当の性」や「生物学的性」の意味に関する考え方も変わってきました。

今は普通、人々はあなたが男性であるか女性であるかを聞きます。赤ちゃんが生まれたら「男の子ですか、女の子ですか？」と聞くのは普通のことで、多くのベビー用品（お祝いカードや風船、服、おもちゃ）は、女の子のものはピンク、男の子のものは青で作られていて、他の選択肢は多くないのです！

赤ちゃんが生まれたとき、外性器を見て「男の子か女の子か」を判断しますが、多くの場合は見分けがつきません！様々な理由で、女の子は陰茎や陰嚢のようなものを持って生まれてくることがあります（これを医療現場ではVirilisationやAmbiguous genitaliaと呼びます）。または、男の子は陰核のような小さい陰茎を持って生まれてくることもあります。

男性か女性かがはっきりしない人をIntersexと呼びます。インターセックスには生まれつきのものと、思春期になるまで明らかにならないものがあります。1500人に1人の割合で、インターセックス状態やDisorder of sexual differentiationを持って生まれてくると推定されていますが、中には非常に軽めのものもあります。

歴史的には、女性に惹かれる人は男性に違いない、その逆もしかりだ、と言われていました。これは現代の視点から見るとばかげた見解に見えます。今ではSexual attractionやSexualityがジェンダー（感じ方）やセックス（体の外観）とは違うことがわかっています。

その後科学が進歩し、様々な生物学的特徴が発見され、ホルモンが人間を男性または女性たらしめたり、生殖腺（精巣、卵巣、またはその間のなにか）の細胞が顕微鏡でどのように見えるかを決定すると言われています。染色体が発見され、「本当の性」を知るための新たな方法が生まれました。

しかし実際のところ、これらの特徴のうちどれを適用しても、ある人が男性か女性か、あるいはインターセックスかを判断することはできません。確かに、ほとんどの女性は陰核、膣、子宮、卵管、卵巣を持ち、テストステロンが低く、エストロゲンやプロゲステロンが高く、XX染色体を持っています。

しかし、生まれつき膣がない女性（Vaginal atresia、これはMayer-Rokitansky-Küster-Hauser syndromeやComplete androgen insensitivityによって引き起こされることがあります）や、XY染色体を持って生まれる女性（Complete androgen insensitivity）、多少または完全に陰茎を持って生まれる女性（これは例えば、Congenital adrenal hyperplasiaによって引き起こされます）もいます。テストステロンが多い女性もいます（例えば、Cystic ovarian syndrome）。

実は、ある人の「本当の性」などというものは存在しないように見えます。むしろ、一つの検査で得られる二つの値ではなく、ホルモン、生殖器、染色体などからなるスペクトラムです。

自分は「XX」だとか「XY」だとか公言している人をよく耳にしますが、その中で染色体検査を受けた人はどれぐらいいるのでしょうか？世の中には自分では気づいていないインターセックスの人がいます。インターセックスが汚名を着せられ、子どものころに真実が隠され、この重要な知識も知らずに育ってしまったためでもあるのです。

最近では、脳スキャンにより「女性の脳」や「男性の脳」の特徴を解明しようとしていました。「男性の体」なのに女性だと感じる人、あるいはその逆の人がいることへの「答え」だとして、初期の違いが宣伝されたことがあります。

これらの論文のいくつかは、ホルモン治療による汚染がなくても、シス女性とトランス女性の脳に類似性があることを示していました。他の論文では両者の違いがあまりはっきりしませんでした。

あるレビュー論文では、驚くことに、男女の脳には共通する特徴はあれども、体がそうであるように、「真の女性の脳」「真の男性の脳」というものは存在しないと結論づけています。

生物学的性に関しては、「男性」や「女性」のリストにどれだけ多くチェックを入れるかによって自分や他人を分類することができます。しかし、これらの特徴のうちから1つだけから相手の性別を予測しようとすると、毎回正しくなるとは限らないのです。

これはトランスジェンダーに関係しており、一部の急進的なフェミニスト（Trans-exclusionary radical feministsと呼ばれる。Radical feminist separatistsという呼び方を好む人もいる）はトランス女性は「本当は」女性ではなく、トランス男性は「本当は」男性ではないと考えるからです。そして、彼らの使う議論はたいてい生物学と「本当の性」の考え方に関係しています。

私がこれを書いたのは、ジェンダーと同様に、「生物学的性」もまた社会がそれに同意しているからこそ存在している考え方であることを示すためです。それは、それが存在しないということではなく、それが何であるかは社会的に決められ、「生物学的事実」に基づいていない、ということです。

性自認に関するセックスによる脳の違いについての包括的な説明については、やや専門的なところになりますが、下の記事が役立つかもしれません。

http://www.shb-info.org/sexbrain.html