ちび、お空へ 2
■ 2016年5月 18歳と3カ月
尿検査・血液検査。
白血球数増加、脱水疑い、腎機能の低下、尿路感染症の疑い。
いろいろ悪化しているなあ。悲しい。
先生からは入院して点滴するか、通院するかを選んでと。
悩んで通院選択。しばらくは毎日通って点滴と注射。
実は2年ほど前からちびの足腰は弱っていた。高さ40センチのソファに登ることができない。ソファはちびのお気に入りの寝場所だったのに。
そこで高さ20センチほどのお風呂用の椅子をソファの前においた。ちびは早速、その足場を使ってソファに登る。降りるときも風呂椅子をきちんと使っていた。
以後2017年1月までの記録紛失。
高齢の猫はどのコもそうだと思うけれど、粗相が多くなる。トイレ以外の場所でおしっこ。その回数が増える。部屋中ペットシーツだらけだ。
2017年1月 18歳と11カ月
白血球数が61,600まで増加。腎臓の数値も悪化。
足腰もずいぶんと弱ってきた。
通院は1週間おき、または3日おき。体重は2キロをきってしまった。
2月に入ると顔をあげて歩けなくなる。まるでゾンビみたいだ。
速攻で病院へ。
先生は「多尿による脱水とカリウム不足です」
病院で買うよりネットから買った方が安いですよという先生の助言で、アマゾンでカリウム剤を購入。それをスポイトであげると、あっいう間によくなる。これで元気になったと思った。
2月25日に血液検査。
ヘマクリットも赤血球数も大幅に減少。血液がうすくなっている。腎臓の値ももちろん悪化。ただ白血球数は35,000と1月よりは改善。顔は上げられている。
■ 2017年3月 19歳
どんどん足元がおぼつかなくなる。歩いてもすぐに倒れる。
体重は1.5キロになった。まるで紙のよう。食欲も激減。
先生、「食べるものなら、もうなんでもいいです」
好きなおかかや白身のお魚、マグロのお刺身など。あとはヒルズのA/D缶。もちろんレトルト腎臓食も。一日中、ソファで寝ている。
3月26日。
この日が最後の通院となった。
「食べないし、水も飲まないんです」
そう伝えると、ちびを見た先生が言葉につまる。先生の様子からもう長くはないことを悟った。
この日は点滴をしたのだったっけな? 忘れたけど、いつも診てくれている先生とはまた別の若い先生で、彼の申し訳なさそうな顔が印象に残った。
ちびは、ぶーちゃんと違って歩けなくなるのが早かった。亡くなる3カ月前からよたよた。1週間前には、ほとんど食べないし水も飲まなくなり、3日前から絶食状態。もう自分に栄養は必要ないとわかるんですね。すごいな、猫。
3月27日。
変わらず絶食。一度起き上がってその場でおしっこ。あとはずーっと静かに寝ている。息が苦しそうとかはない。
深夜1時。ちびがぶーちゃんと一緒に寝ているのを確認してから就寝。
息子はソファに座ってゲーム。1時半すぎまで起きていたという。
3月28日、朝5時半。
朝に弱い私だが、異変を感じて飛び起きた。すると、ちびはもう冷たくなっていた……。
家族全員を大声で起こす。
息子は一目見てまた布団にもぐりこむ。
とりあえずちびの瞼を閉じようとしたが、亡くなってから時間が経っていたためきれいに閉じることができなかった。ごめん、ちび。
ちびは寝ている間に静かに死んでいった。
私はそれまで「生きることが尊い」と思っていたけれど、ちびは「死ぬことも尊い」と教えてくれた。
生きている個体が自然に亡くなっていくことは誰にも止めることはできない。トランプにも、お釈迦様にもムリ。
生物独自の最高のプログラムが死。書き換え不能。
だからこそ、他人が死を勝手に奪ってはダメだ。
生の尊さと死の尊さはイコール。死は尊重されるべき。
ちびは淡々と亡くなって、強いメッセージを残していった。