ちょっと傷ついた話
体感しないとわからないよな、という話。
一月ほど前に左ひざのけがをした。腫れは個人的には非常に大きくて、部分的には比較すれば右ひざの倍くらい腫れていた。病院に行って骨などに異常はなかったものの、歩くのはしばらく困難だった。
これが一月前。おおよそよくなったが、うずく日もまだある。おそらく、ひざの中心の腱が炎症を起こしているのでは?という感じ。それでも歩くには支障はなく、階段などでは多少引っかかる程度。だったのだが、昨日に外出して立つ時間が長かったせいで、今日起きたら腫れてはいないものの歩くのがまた結構困難なくらいには痛みをぶり返してしまった。
更に言うと、持病と薬の副作用のせいで日によっては頭痛やめまいなどの症状がある。これが原因で、障害者手帳持ちである。そして、しょうしょうきつめの頭痛があった。しかし、今日は区役所に行かなければならなかった。
いつも乗るの倍の時間をかけてバス停に行き、バスに乗った。(「そんな状態ならバスに乗らなければ良かった」という意見もきっと出るだろうが、それはあとからなら何とでも言える意見である。)
ここからが本題。
バスに乗ると席は空いていなかった。バスのエンジンの振動は、ひざのけがに常に疼き、痛みを与え続ける。そして常に視界がぶれ続けることで、頭痛を助長する。2つ先のバス停で優先席が空いたので座った。
更にいくつかのバス停に乗ったところで、5、6名のご婦人グループが乗ってきた。当然だが、座るところはない。60ぐらいのご夫人がバス全体を眺め回したあとで僕のところに近づいてきて、
「席を譲ってくれませんか?」
と。多分、僕が優先席で一番若かったからに違いない。しかしこちらは、けがをしている上に、めまいもある。そういった事情があることを話そうとしたら、次のようにまくしたてられた。
「みてわかりませんか?80の人がいるんです。その人が倒れてけがでもしたら、バスは止まりますよ?若いんだから譲るのが当然じゃないですか?」
めまいがなければ、何かしらの反論をしていたかもしれない。しかし、もう譲らないといけないような視線(おそらく気のせい)を感じ、席をおもむろに立って、左足を軽く引きずりながらバスの後ろに移動した。このときに声をかけてきたご婦人がなにかに気付いた顔をしたのが一瞬目に入った。
目的のバス停まではあと5区間でそれほどない。しかし、交通量が多いのとカーブが多く、停止や大きな揺れがある。いくつかカーブをしたときに左足に力が入らずにふらついて一つ後ろの席のポールまで移動した。もう少しいったところで、また足がふらついて強い痛みを感じ、ポールをつかんでかがむような姿勢になった。そこで、つかんでいたポールのところに座っていた女性が席を譲ると声をかけてくれた。遠慮しようと思ったが正直にきつかったため、言葉に甘えて譲っていただいた。
座ってしばらくしたところで、声をかけてきたご婦人が気まずそうにこちらを見たのを最後に、目を合わせないように窓の外をずっと見続けた。
優先席を陣取るほどのけがではなかったかもしれない。こちらが事情を話せば別の人を当たってもらえたかも知れない。そもそも、バスに乗らなければよかったかもしれない。いろいろ考えた。
いろいろ考えて、自己嫌悪に陥った。ただ思うのは、何が悪かったのかなぁ、という結論がみえていないことだ。
フリーランスをしていますが病気で働けないことがあります。記事がなにか琴線に触れたら支援いただけるととてもうれしいです。