この選択は正しかったのか…

ペーパーテストにある選択問題とは違って、人生における選択肢には正解はない。
誰しもが、この選択は正しかったのか?と思ってしまう時がある。
そして、また、それが正解かは誰も教えてくれない。誰も分からないからだ。

今日はそんなお話。

あけましておめでとうございます。

今日行きの電車で、お腹が痛くなった為、途中電車を降りて、駅のトイレに向かった。
まぁ毎日のルーティンである。

その駅は個室トイレが4つ。
着いたらどれも埋まっていた。
僕の前には1人並んでいる。

1つ空いたので、僕の前の人は入っていった。

後ろから男子高校生が入ってきた。
男子と付けるまでもないか。だって今男子トイレの中での話をしてるんだもん。

その高校生は、ベルトを緩めて、なにやらギリギリな様子。
うん、あれは漏らしかけている状態だ。
玄人の僕にはよく分かる。可哀想だ。

可哀想だ…

そう、僕はそう感じた。
このまま僕が手を差しのばさなければ、この子は確実に死んでしまう。

漏らした後のことを考えると胸が痛い。
今日学校に行かなければいけないだろう。
けれど制服は汚れてしまう。
何か着替えて学校に行ったとしても、多少なりとも異臭は残る。臭いなんてものは簡単には消えないものだ。
学校の友達には何て言われるだろう?
ちゃんと上手く笑いに変えてくれる友達が沢山いるなら良いが、生涯心に傷を負うような、いじられ方をされては可哀想だ。

ここに2つの選択肢がある。
A.このまま無視する
B.先に譲る

僕はBを選択した。
「先いいよ」

漏れそうなんでしょ?と喉元まで言葉が出たが、飲み込んだ。
この子は「先いいよ」という言葉だけで救われるんだ。それ以外の言葉は求められていない。

高校生はその言葉を聞くや、僕の前に立った。
そして、戦闘モードに入る。
戦闘モードとは、個室トイレが入った瞬間、すぐに着座できる状態のことである。

しかし、なかなか個室は空かない。

私は暇だったので、友人にラインした。

俺もうんこ漏れそうだったけど、俺以上にヤバそうな高校生に先譲ってあげた

メッセージを送ったら、これってもしかして人助け・社会貢献なんじゃないかな?と少し誇れる気持ちになった。

ようやく1つ空いた。
高校生は速やかに個室トイレに突入した。
とてつもない速さで…。この子の就職先はSATに決まりだ。

さて、僕の番だ。

なかなか次が空かない。

さっきまで余裕だったが、だんだんとピークが戻ってくる。

やだよ、絶対間に合いたい。

だって、さっき「先いいよ」ってカッコよく言った兄ちゃんが、漏らしていたら、あの高校生は何を思うだろう?
譲ってもらったばっかりに…と思うだろうか?
かっこわるw…と思うだろうか?

カチャ

やっと1つ、鍵の開く音がした。
この音は何度聞いても安心する。

さっきの高校生が入った個室だ!
きっと僕に悪いと思って、大急ぎで事を済ませたんだろう。

しかし、彼はジャージ姿になっていた。

なるほど…

僕は全てを察した。今あの個室トイレに向かっても、朝から見たくない光景が広がってるだけだ。

僕は列に戻り、別の個室が開くのを待つことにした。

列には僕の他に3人並んでいた。
使える個室は3つ。
この人達も平然とした顔をしながらギリギリだろう。
大人なんてそんなものだ。

あの選択は正しかったのか…?

僕の選択は、誰のためになったんだろうか?


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