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総合学科とはどんな学科ですかの質問に答えてみる

 総合学科とはどういう学科ですか?
 普通科とはどう違うのですか?
 こんな質問がよくあるので、今回はそれについて解説します。
 例によって埼玉県限定の情報です。

 現在、埼玉県には公立の総合学科校が9校あります。
 そのほかに、国立の筑波大付属坂戸高校、私立の国際学院高校にも総合学科がありますが、ここでは触れません。

1 総合という名称

 校名に総合がつく公立高校がいくつかありますが、それらがすべて総合学科の学校というわけではありません。
 伊奈学園総合高校は、総合選択制という他校にはない独特の科目選択方式を採用しており、そのことから総合と名付けていますが普通科高校です。
 越谷総合技術高校と新座総合技術高校は、工業系・商業系・家庭系の三分野の専門学科が併設されていることから総合(技術)と名付けています。分類としては専門高校あるいは専門学科校となります。

2 第三の学科

 総合学科は1990年代(平成の初め頃)に新しく作られた学科です。
 それまでは普通科と専門学科(工業科や商業科など)しかありませんでしたが、そのどちらでもない「第三の学科」として誕生しました。
 総合学科では、生徒が自分の興味や関心、進路希望に応じて科目を選択して学ぶことができます。
 普通科や専門学科でも選択科目はありますが、それらよりも幅広い選択科目の中から自分で科目を選択できるのが特徴で、自分の適性や能力、進路希望に応じた柔軟な学習ができます。
 平成6年度に文部科学省が導入しましたが、その翌年、平成7年(1995年)には埼玉県で最初の総合学科校として久喜北陽高校が誕生しています。

3 系列とは

総合学科校は多くの選択科目から学びたい科目を自由に選べるところに特徴があります。
 普通科にも必修科目のほかに選択科目はありますが、総合学科には圧倒的に多くの選択科目が用意されています。
 1年生の段階では必修科目が中心となるため普通科とほとんど変わりありませんが、2年、3年と進むにしたがって選択科目の割合が多くなります。
 ただ、多くの選択科目の中から選ぶのは生徒にとっても大変な作業になります。また、選び方が偏ってしまうこともあります。

そこで各校とも系列というものを設けています。
 生徒は自分の興味関心や目指す進路に合わせて系列を選び、その系列の中から科目選択します。ただ、系列は科目選択のためのガイド(指針)のようなものであり学科やコースほど厳密なものではないので系列を超えて科目選択することもできます。

総合学科には、ありとあらゆる系列や科目が用意されているわけではありません。施設や設備の関係もあるからです。
 ですから、総合学科校を選ぶ場合には、その学校にどんな系列が用意されているかを調べる必要があります。

4 総合学科校の成り立ち

 現在、埼玉県には総合学科のある学校が9校ありますが、その成り立ちにはいくつかのパターンがあり、それがその学校の特徴にもつながっています。
(1)専門高校から総合学科校へ
川越総合高校は前身が川越農業高校です。
 農業高校がそのまま総合高校となったため、校地には最新の温室が何棟もあり、校外には広い農場もあります。
 系列も「農業科学系列」「食品科学系列」「生物活用系列」「生活デザイン系列」と農業高校そのままと言っていいほどです。
 県西部地区では本格的に農業科目を学べる学校がないことから人気となっています。

幸手桜高校は前身の一つが幸手商業高校です。
 普通科の幸手高校との統合という形をとりましたが、校地は元々の幸手商業高校であり施設設備等もそのまま引き継いでいます。系列も「総合進学」「教養基礎」「情報マネジメント」「総合ビジネス」の4つで、商業高校の色合いが濃い総合高校となっています。

(2)普通科校から総合学科校へ
久喜北陽高校は普通科に情報処理科を併設した学校としてスタートしました。前述したように埼玉県で最初に総合学科を設置した学校です。
 普通科を引き継いだのが「人文社会国際系列」と「理数科学系列」で、情報処理科を引き継いだのが「情報ビジネス系列」と考えていいでしょう。「人文社会国際系列」は文系大学への進学、「理数科学系列」は理系大学への進学を目指す人向けということから、「進学型総合学科」と称しています。

滑川総合高校は形式的には吉見高校との統合という形をとりましたが、実質的には普通科の滑川高校が総合学科に転換した学校です。
 「人文社会」「自然科学」など6つの系列を用意していますが、ここも「普通科をベースとした進学型総合学科高校」と称しているように普通科の近いイメージです。

寄居城北高校は形式的には川本高校との統合という形をとりましたが、実質的には普通科の寄居高校が総合学科に転換した学校です。
 久喜北陽高校や滑川総合高校のように明確に「進学型」とは謳っていませんが、少人数(30人)学級や習熟度別授業、あるいは「特別編成進学クラス」の設置などどちらかと言うと進学に力点を置いた指導が行われています。

小鹿野高校も普通科から総合学科に転換した学校です。普通科当時から進学者と就職者の割合は半々程度だったこともあり、特に大学進学を前面に打ち出してはいません。「地域観光系列」に見られるように地域連携に力を入れています。

(3)専門学科を併設
誠和福祉高校は元々は不動岡女子高校(普通科)でしたが、その後いくつかの変遷があり平成20年(2008年)に福祉科と総合学科を設置した誠和福祉高校となりました。
 県で唯一の福祉科をもつ学校であることから、総合学科の系列も「福祉系列」「保育系列」「看護系列」「教養系列」など専門学科である福祉科の内容を生かしたものになっています。

進修館高校は行田市内の3つの公立高校を再編する形で平成17年(2005年)にできた学校です。(その歴史は古く複雑なので同校ホームページで確認してください)
 前身の一つが工業高校であったため、総合学科のほかに、電気システム科・情報メディア科・ものづくり科といった工業系の3つの専門学科が併設されています。
 系列は「文科探究系列(文系進学コース)」「理科探究系列(理系進学コース)」など5つです。併設の工業系専門学科との関連性はあまりなく、どちらかというと進学志向が強いようです。

(4)他の課程を併設
吉川美南高校の前身の一つは普通科の吉川高校ですが、平成25年(2013年)に、全日制と定時制(Ⅰ部・Ⅱ部)という2つの課程を持つ学校に再編されました(学科はいずれも総合学科)。
 Ⅱ部定時制は従来からある夜間の定時制ですが、Ⅰ部定時制は昼間の定時制という新しいスタイルで、全日制とあまり変わりません。全日制が商業系科目が充実しており就職向けと言っていいのに対し、Ⅰ部定時制は特別進学クラスを設置するなど進学志向が強くなっています。

 以上、9つの総合学科校をその成り立ちと共に見てきましたが、一口に総合高校(総合学科校)と言っても、普通科に近い総合高校もあれば専門学科に近い総合高校もあり、特徴はそれぞれだと分かります。

5 総合学科を選ぶ理由

 将来の希望が大学進学と決まっている人は、そのカリキュラムから言って普通科を選ぶほうがいいでしょう。ただし、久喜北陽高校や滑川総合高校のように、はっきりと「進学型」と謳っている学校は、普通科と同じ感覚で選ぶことができます。
 将来就きたい仕事や職業が決まっている人は、専門学科を選ぶほうがいいでしょう。ただし、川越総合高校や幸手桜高校のように学べる内容が比較的はっきりしている学校は、農業高校や商業高校と同じ感覚で選ぶことができます。

 中学生の皆さんの中には、将来のことがはっきりイメージできない人もいるでしょう。進学するか就職するか決まっていない人もいるでしょう。その場合、いろいろな科目を幅広く学べる総合学科は一つの選択肢となります。ただ、ここまで見てきたように総合高校には学校ごとに用意された系列が異なります。好きなことが何でも学べるというわけではありません。そのあたりは学校説明会や体験入学、個別相談などでしっかり確かめなければなりません。

6 総合学科の志願状況

 令和7年1月9日、埼玉県教育委員会から第2回進路状況調査(令和6年12月15日現在)の結果が発表されました。
 それによると、総合高校9校の倍率は次のようになっています。
 全日制総合学科のみのデータであり、学校名(カッコ内は募集人員)、志願者数、倍率の順です。
 小鹿野(119人)  32人 0.27倍
 川越総合(238人)367人 1.54倍
 久喜北陽(318人)279人 0.88倍
 幸手桜(198人) 115人 0.58倍
 進修館(198人) 152人 0.77倍
 誠和福祉(79人) 30人 0.38倍
 滑川総合(278) 282人 1.01倍
 吉川美南(119人) 79人 0.66倍
 寄居城北(198人)161人 0.81倍

 以上、必ずしも十分ではないと思いますが、「総合学科とは」に対する回答です。 

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