76冊目:アドルフに告ぐ/手塚治虫
こんばんは、Umenogummiです。
巨匠・手塚治虫氏が描く、「アドルフ」と呼ばれた3人の男たちの、運命に翻弄された物語を紹介します。
アドルフに告ぐ/手塚治虫 作
物語はナチスドイツが台頭していた時代、峠草平という日本人新聞記者の語りで進んでいきます。
1924年オリンピックに沸くベルリンで、草平はベルリンに留学中の弟・勲に大事な話があると呼び出されます。しかし草平が勲を訪ねると、すでに勲は殺されていました。
勲の遺体は警察と名乗る男たちに運ばれていきますが、その後行方不明になってしまいます。それどころか、弟が住んでいた家には別の家族が住んでおり、近所の住民も誰も勲を知らないと言います。
途方に暮れる草平の元に、リンダという勲の恋人だった女性が現れます。また、勲を見たという百姓から連絡を受け、駆け付けた草平でしたが、百姓一家は惨殺されていました。草平は一家の家からほど近い木の下で勲の亡骸が埋められているのを発見しますが、怪しい男たちにつかまり、拷問を受けます。
草平が目覚めると、ホテルのベッドの上で、記憶の一部を失っていました。そばにリンダいて、彼女はBDM(ドイツ女子青年団/ナチズムを信奉するヒトラーユーゲントの下部組織)で、コミュニスト(共産主義)だったという勲とは意見が合わず、別れたと語ります。
自分を暴行した男たちを見つけるため、リンダと行動を共にします。しかし実はリンダは偽名で、本当はローザという名であり、しかも暴行した男たちのリーダー格の娘であることが判明。さらに、勲をSS(ナチス親衛隊)に密告したのも彼女でした。草平と勲の話をしたのちローザは窓から飛び降り自殺してしまいます。
ここで場面が日本・神戸へと変わり、草平の視点から、2人の「アドルフ」の視点へと変わります。(3人のアドルフといいましたが、残る1人はアドルフ・ヒトラーのことです)
母が日本人で神戸キリスト教学校へと通うアドルフ・カウフマンと、ユダヤ人で母親がパン屋を営むアドルフ・カミルは友達です。しかし、カウフマンの父親はドイツ人(外交官)ですので、それを快く思っていません。カミルと友だちでいたいカウフマンは、ヒトラーユーゲントに入れという父に反発します。
カミルはある日、父親たちの密談を盗み聞きし、アドルフ・ヒトラーのとんでもない秘密を聴いてしまいます。ひょんなことからカウフマンもそれを知ることとなり、カミルに口止めされていたにもかかわらず、カウフマンは父に話してしまいます。そのことが遠因となり、父はまもなく病死し、カウフマンはドイツのAHS(アドルフヒトラーシューレ/ナチ党幹部養成機関)へと送られ、カミルと別れることになってしまいます。
ここまでが1巻のあらすじなのですが、もう濃ゆい。すでにおなか一杯。
これがあと4巻分あります。さすが手塚先生です。
歴史的に間違っている部分も多々見受けられますが、まぁマンガですので。
カミルがもし、ヒトラーの秘密を知らなければ、あるいはカウフマンがもし、AHSに入れられることがなかったら、違った結末があったのかもしれません。