209冊目:傘寿まり子/おざわゆき
こんばんは、Umenogummiです。
今日は定年のない作家が高齢者になり、自分の生き方を考えていく物語です。
傘寿まり子/おざわゆき 作
あらすじ
80歳の女流作家・幸田まり子は15年前に夫を亡くし、息子夫婦、孫夫婦、まだ幼いひ孫との4世帯家庭で暮らしています。まり子は未だ現役で群星という文芸誌で短編を書いていますが、年々減っていく連載作品、ページ数に焦りを感じていました。
まり子が若いころ、同時期に活躍していた服部じゅん子の孤独死、終の棲家と考えていた家の建て替えなどから、齢80歳にして「独立」を決意、一人家を出ます。
しかしまり子は、年齢が仇となり現役で仕事をしているにもかかわらず住居を借りられず、インターネットカフェ難民になってしまいます。
ある日まり子はほこりまみれだった捨て猫クロをひろいます。こっそりとネットカフェクロを飼うまり子でしたが、すぐにばれてしまいます。世話好きなネットカフェのオーナーに、まり子は小言を言われるも動物病院を紹介してくれました。
クロを一時、動物病院へと預けまり子はクロと暮らせる家を探しますが、うまくいきません。そんな矢先、じゅん子の元夫・八百坂親承と再会し、二人は恋に落ちます。八百坂が一人で暮らすマンションで同棲を始めることで、まり子はクロを引き取ることができ、さらに八百坂のプロポーズを受け幸せに浸ります。
ネットカフェのオーナーから「そんなに甘いものではない」と忠告されていたように、幸せは長く続かず、八百坂が起こしかけた交通事故のせいで二人は引き離されることになります。
まり子はネットカフェへと戻り、小説を書き続けます。しばらくしてまり子はオンラインゲームを通じて知り合ったちえぞうと親しくなり、やがて彼女の家で居候をはじめますが、群星の編集長から連載終了を告げられてしまいます。
まり子は、アーケードゲームを通じて知り合った若者ガリオの力を借り、動画サイトでかつて活躍し、今は一線を退いている作家を集めた文芸誌をウェブで立ち上げることを宣言します。
感想
様々なものを失い、手に入れ、そしてまた失っていくまり子。それでもまり子は自分の力で生きていくことを諦めません。80を過ぎてなお、新しいことにチャレンジし、文芸の可能性を開いていくまり子はとても格好良いです。
たくさんの人生の大先輩方が登場するのですが、どの方も活き活きはつらつとしています。
隅に追いやられ、忘れられ、居場所を亡くしたご高齢の方たちが悩み、もがきながら、再び花を咲かせてゆく姿に、まだまだ自分は甘く、若いことを思い知らされます。
捨て猫だったクロとの絆も、涙なくして見ることができません。
何歳になってもチャレンジし続ることの大切さ、そしてどのように生き抜きたいかを考えさせられるマンガです。
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