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67冊目:メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション/乙一

こんばんは、Umenogummiです。

物騒なタイトルですね。
今日はちょっと方向を変えて乙一氏の短編サスペンス小説集です。
以前紹介したコミカライズ作品(50冊目:山羊座の友人)の原作が収録されています。

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メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション
(乙一・中田栄一・山白朝子・越前魔太郎 作/安達寛高 解説)

以下作が収録されています。
「愛すべき猿の日記」乙一
「山羊座の友人」乙一(※コミカライズで感想を書いたので今回は割愛)
「宗像君と万年筆事件」中田栄一
「メアリー・スーを殺して」中田栄一
「トランシーバー」山白朝子
「ある印刷物の行方」山白朝子
「エヴァ・マリー・クロス」越前魔太郎

いろいろな作家さんが書いているんだね、と思いきや解説の方も含め、すべて乙一氏の別名義なんだとか(解説は本名)
わあびっくり知らなかった!(無知)
ちょっと、もう一度読み直さなくては。

各作品のちょっとしたあらすじと、感想を書きますね。

愛すべき猿の日記
失踪した父親の残したインクで日記を書き始めたことによって、自堕落した生活から抜け出すある男性の物語です。
後半の作品のインパクトが強すぎて、うっすらとしか覚えてないのですが。最初の作品なので、さらっと読めるものにしたのでしょうか。

宗像君と万年筆事件
ある小学校のクラスで起きた万年筆盗難事件。罪を着せられた女子生徒に代わり、貧乏で皆から煙たがられている宗像君が事件を解決に導きます。
小学生でも意地悪い子は意地悪だなー。あと先生が事なかれ主義で、えこひいきでムカつく。
某身体は子ども、頭脳は大人の探偵と違い、宗像君は身体も頭脳も子どもです。でも犯人を追い詰める様は、ちょっと末恐ろしい。
子どもの感情をこんなにもリアルに描けるものかと。いるいるこういう子、ってなります。

メアリー・スーを殺して
醜い自分を受け入れられず、二次創作にのめりこむ女子生徒のお話。ある日言われた一言から、二次創作中の「メアリー・スー(作者の理想が具現化された非現実的なキャラクター)」を殺すために、自分を満たせば理想のキャラクターである彼女を消せると思い、徐々にイメージチェンジしていくお話。
誰でもあるような若かりし頃の過ち(いわゆる黒歴史)を、彼女はリアリティを追求することによって昇華させていきます。そしてメアリー・スーと語らうことによって、オリジナルの作品を作ることを始めます。
読後感のよい、さわやかな作品です。タイトル作になるだけあるわ。ちょっと物騒ですけど。

トランシーバー
津波で流され妻子を失った男性の再生の物語です。酒浸りになっていたある日、行方不明の息子の声が、息子のお気に入りのおもちゃであるトランシーバーから聞こえてきます。
2011年に起きた東日本大震災をもとに作られた作品。
シンプルに泣けます。こういうのに弱いんですよねー。でもちょっとクスッと笑ってしまう部分もあって、切ない。
今もなお、家族を待っている方々がたくさんいらっしゃる。それでも、皆前に進んでいく。いろいろと考えてしまいますね。

ある印刷物の行方
やることが少ないのに高給な、ふしぎなアルバイトのお話です。
ある研究所から一日一回運ばれてくる四角いケースを焼却炉で燃やすだけの簡単なお仕事です。主人公の女性はある日、ふとした弾みからそのケースを落としてしまいます。そして中から聞こえてくるはずのない音が…。
この短編集で2番目に胸糞悪い作品。
どこか儚くて、生命のいとしさを感じる作品です。


エヴァ・マリー・クロス
「人間楽器」に魅入られたある資産家を追う貧乏記者のお話です。
もう本当にだめ、これはダメ。胸糞悪すぎる。ダントツNo.1。
あ、作品自体は素晴らしいもので、素晴らしすぎて胸糞悪いんです。
この作品のこと語りたくて、この短編集を紹介しているくらいいい作品です。
主人公の行動がやっちゃダメな方向へ行くものだから、もうこっちはひやひやしっぱなし。ラストはああほら、やっぱりーあほー!と叫びたくなる。ホラー映画見ているような気分になりました。
いい作品だけど、二度と見たくないものってあると思うのですが、この作品はまさにそれ。二度と見る勇気はないですね…(私の場合、「ミリオンダラー・ベイビー」とかもそうですね…いい映画なんですけどね…)


一つ一つ感想書いていたら思わぬ長さになってしまいました。
長文を読んでいただき、ありがとうございました。




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