カーボンクレジットはアフリカの経済的な救世主となるか
世界でカーボンクレジット、とくに民間のボランタリークレジットの取引が活発化しています。排出量の多い特定産業以外でも社会や投資家からカーボンゼロ/カーボンニュートラルを求められるようになり、早く安価に炭素削減を行いたい先進国の企業と、新たな収益源を見つけた途上国などの思惑がマッチした形です。
アフリカでも同様にブームの兆しで、昨年のCOP27のあとアフリカの政府などが参加して結成された団体は、2030年までに60億ドル、2050年までに1200億ドルのクレジット収入を上げるという目標を掲げています。
アフリカには、森林面積が残っている国も多く、再生可能エネルギーに適した土地が広がっています。省エネや輸送効率、廃棄物管理が十分でないため、炭素排出量を削減する余地が多いにあります。
カーボンクレジットを販売することができれば、森林を保護するという本来コストでしかなかったことから逆に収益が生まれます。アフリカで電力が不足している大きな理由は財政難ですから、再生可能エネルギーを取り入れることで、発電量が増えるのはもとより発電公社の財務が改善でき、発電網のメンテンナンスなどにも当てることができるようになります。
古い中古車が多いアフリカの物流を電気自動車におきかえたり、木炭を使った調理をバイオエネルギーなどにおきかえれば、事業にクレジット売上を追加することが期待でき、それにより価格を下げて普及を促進したり競争力を増すことができます。
たとえば、ジンバブエは、森林保護であるREDD+で世界2位のカーボンクレジット取引規模を持つとされます。大手カーボンファイナンス企業であるスイスSouth Poleが、78万5,000ヘクタールの森林の保護を行い、カーボンクレジットを販売してきました。
Micro Energy Creditsはケニアとウガンダで、灯油ランプをLEDライトにおきかえるというクレジット創出事業を行っています。前述のSouth Poleはウガンダやルワンダで、Obenはコンゴ民で、KOKO Networksはケニアで、調理用コンロの燃料転換を行うことで、カーボンクレジットの販売を目指しています。
新しい技術の導入もあります。ケニアでは、直接空気回収技術(Direct Air Capture)のプラント建設が合意されました。ケニアには火山帯があり、地熱発電が国の発電量の半分以上を占めているので、その地熱を動力源に、年間1,000トンの二酸化炭素を大気で捕まえ、火山に貯留します。
日本企業においても、アフリカからカーボンクレジットを買ったり、その仲介をする動きが見られます。先日週刊アフリカビジネスで紹介したように、みずほ銀行と伊藤忠商事は、調理用コンロによる燃料転換カーボンクレジット創出を図るKOKO Networksのカーボンクレジットの仲介や購入に関して合意する契約を締結しました。
丸紅はアンゴラで、現地の農業企業IEP社との間で、森林再生によるカーボンクレジット創出の事業性の検証のためのMoUを締結しています。日系スタートアップのDegasは、ガーナで環境再生型農業とバイオ炭の使用を根拠にカーボンクレジットを発行する計画を発表しています。
アフリカ側にとってはいいことばかりに思えるカーボンクレジットの販売ですが、メリットを享受するには、取引のルール化を急がなければなりません。前述のジンバブエのケースでは、政府とプロジェクト開発者の間でクレジット収益の分配率が決まっていなかったためトラブルとなり、現在事業が中断されています。
ケニア、南アフリカ、エジプト、モロッコ、タンザニアなどがカーボンクレジットに関する法規制や管理手法、分配率などを定めるべく法案策定に動いています。
また、炭素削減量の認証や管理を行う第三者認証機関の信頼性も問われることになるでしょう。第三者機関を通した相対の取引だけでなく、日本でも検討されているような市場での販売がアフリカでも検討されており、2022年にケニア政府は、ナイロビ証券取引所にカーボンクレジット市場の創設を目指すとして、シンガポールのAirCarbonとMoUを締結しています。
サムネイルはジンバブエの夕暮れ(ABP撮影)
週刊アフリカビジネスでは随時、アフリカにおける政府や民間の脱炭素やカーボンクレジットに関連するニュースをとりあげています。
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