おとうと ~あとがき~
弟が亡くなって暫く経った。
何の感慨もない別れ。何を思うこともなく。
「最後まで人に迷惑かけやがったな」
以外の感想はなかった。
子供の頃の愛らしい記憶さえも乱しかねない
ヤツの生き様に憤っても仕方ないけれど。
いい加減な生き方しか選ばないヤツには
いい加減な人生しか歩めない。
あいつの死を悼んだ人が傍にいてくれただろうか。
知る由もない。
ここに「おとうと」の存在を記したのは
一昨年のGWにあるLGBT活動家に
「お前に弟がいたなんて嘘だ」
と罵られたことが起因している。
ゲイだった弟はとんねるずの
保毛尾田保毛男で大笑いしていた。
同性愛者全員が保毛尾田保毛男を毛嫌いする事実はないと
私がSNSに書き込んだものに噛みつかれたのだ。
実に下らない男だった。
人に聞かれたところでその存在を
胸を張って話せるような人物では決してなかった。
けれど。
その存在を己の主張のため掻き消すような
気侭な俗物にいい様にあしらわれることには
聊かの抵抗を覚えた。
どうでもいいはずのやつに。
「弟がいたなんて嘘」
どういう心境で放言できたのか私には分からない。
ああいう人物はどの場面においても
白眼視されることを知っている。
そんな人物の軽口に付き合うほど私は暇ではない。
とはいえ確かに弟はこの世に存在した。
40年に満たない人生を閉じたのは、ちょうど今の頃。
私の知らぬ土地で生き、そして死んだ。
LGBTにまつわる全ての法律を唾棄する私にとって、
活動家の戯言など弟の存在と同等なのだが。
身内をその思想に優位性を持たすが為
穢されるのはいくら私でも。
抗うさ、そりゃ。
長々と記した「おとうと」は
弟がこの世に生きた証になればいいと
勝手に感じたに過ぎない。
あいつは間違いなく生きた。
あの活動家に
ともすれば弟を否定する私自身に。
伝えたいことなのかも知れない。