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8月の風景 ~記憶~

南信州の実家に里帰りしている

ご近所さんにみつからないように
こそこそ隠れて帰ってきてたけど
久しぶりに堂々と
お隣さんにや近所のおばあちゃんに
「こんにちは」の挨拶ができるのは気持ちが良い

扇風機の風に乗って漂ってくる

お盆の迎え火とか
お墓参りのお線香とか
蚊取り線香の煙たい香り


雨が降りそうで降らない
灰色の空

脳梗塞で体が不自由になり
介護が必要になった父の
「お~い。お~い」と
母を呼ぶ声

…………………

父の記憶はぼんやりした記憶だけど
昔の記憶はしっかりしている

父が口にした女の子の名前は
私の高校時代のクラスメイト

保育園の頃から
小学校も中学校も高校まで一緒だったのに

何十年も会っていないし
ここ数年は思い出すことすらなかった

友人の名前…




高校生の頃とか
ちょっとひねくれたところがあって
友達なんていらないって思っていた。

女の子同士のじめじめした話し
「好きな人」の話とか聞くのが大嫌いで

男の子と好きな音楽の話とかしているほうが
気楽で楽しかったな…

友達ってなんだろうね。

母が聞いているラジオから
あの頃、だれかが教えてくれた曲のフレーズが
流れて来た。

Winter, spring, summer or fall, all you have to do is call,
And I’ll be there, yes I will,
you’ve got a friend

冬でも春でも夏でも秋でもいつだって僕の名前を呼んで!
君の元にいくからね。必ず。
だって、僕は君の友達だから…

蝉の声がぎれとぎれに…記憶の彼方から…









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