被災地・石巻のワカメ漁師「人と稼ぎと海を守るため」の挑戦
海とともに暮らす人々は、そこに広がる世界がいかに深遠で美しいものかを知っています。ワカメ漁師の阿部勝太さんに伺った、美しい海を守り維持するための方法を紹介します。
☆漁師という仕事を次世代に残すため☆
宮城県石巻市北上町の十三浜で生まれ育った阿部勝太さんが、ワカメ漁師という仕事についてじっくりと考えることになった契機は東日本大震災だった。一般に「持続可能性」という言葉で連想されるのは環境問題だが、漁師にとってはそれだけではない。人材、経済性、そして海。この三位一体がなければ、漁業は成り立たない。そのために阿部さんらは、漁師が支え合う漁業生産組合「浜人」を設立した。
「同じ3.11で被災した漁師でも、復興へのスタートラインはまったく違っていました。船や加工場が流された人もいれば、家が高台で助かった人もいる。その格差を埋め、補い合いながら漁業を続けようと、十三浜で法人をつくったんです。人を守り、稼ぎを守り、海を守っていかないと次はないよねって」
さらに、他の浜の漁師たちと手をつなぐための一般社団法人「フィッシャーマン・ジャパン」も立ち上げた。「人(人材)を守る(確保する)」ために、県内外の漁師になりたい人を募り、30人もの新人漁師を誕生させた。「稼ぎを守る」ため、スーパーや飲食店と共同で魚介類や加工品を適正価格で販売する仕組みを整えた。そしていま、「海を守る」ためにサステナブル・シーフードの国際認証を取得しようと動いている。
「何かが起きないと、仕組みを変えることって難しいんですよ。だから何か起きた地域から、動き出すべきだと思っているんです」