マーケティングファネル(ファネル思考)を、できるだけ易しく解説
最近はウメキワークスと新高値マガジンという、スタートアップと株式投資についてしか記事を書いていませんでしたが、たまには違う趣向の話を。
いろいろな人と話していると、マーケティングファネルの概念を全く持たない人がいるなと感じます。
私は一応会社員時代はマーケティング職もやったり、独立後は最初はスタートアップのマーケ系のコンサルをしていたこともあるので、マーケティングは好きな分野です。
今はクライアントワークはゼロで、オンラインサロンとnoteの収益がメイン(弱小YouTubeの収益もありますが)ということもあり、一応自分自身をマーケティングした結果、それ単体で生活が成立しています。
マーケティングファネル(以下ファネルと記載)はマーケターだけが意識すれば良いものではなく、全ての人が意識すべき概念だと思いますが、その割にはこの思考を持たない人が多いです。
ビジネス書っぽく、「ファネル思考」とでも名付けましょうか。
ファネル思考を持たない人は、率直にいうと単に不勉強ですねとも言えるのですが、逆にいうと学ぶ機会がない人が多かったのだろうと推測します。
私も特に会社から押し付けられて学んだということはなく、独学で学びましたが。
ファネル思考を身に付けることで、皆さんのビジネスにおける打ち手がロジカルに鮮明になるかと思います。
それでは、できるだけ優しく解説していきます。
1.ファネルとは
通常、逆三角形で表され、理科の実験や珈琲の抽出に使われる「ロート(漏斗)」のような形で解説されます。
シャッターストックで購入した図からの解説ですが、上から「認知」「興味」「比較検討」「購入」の4段階に分かれるのが一般的。
図では上から3つ目が「DECISION(決定)」となってますが、「比較検討」の方がわかりやすい。もしくは「DESIRE(欲求)」と表現されることもあります。
①認知:1万人
②興味:3,000人
③検討:300人
④購入:30人
何かしら商品を売る場合、その商品に対して、ユーザーは上記の4レイヤーのプロセスを経ます。
まずその商品を知って、興味を持って、買おうか悩んで、買っちゃえ!という感じです。
マーケターが考えるべきは、この4段階ごとの施策を考え、実行すること。
大企業によっては、各段階ごとに担当が分かれて分業化されていてもおかしくはありません。認知担当、購入担当。のような。購入段階の担当は、マーケ担当ではなく、カスタマーサポートや営業担当がここに入る場合もあり得ます。
2.認知施策
ファネルの入口となる認知をまず考えてみましょう。
できるだけ多くの人に知れ渡っていた方が、最終的に購入してくれる人が増えますから、その商品のターゲットユーザーに対してできるだけ認知してもらえた方が有利です。
マーケティング用語では「リードを獲得する」「リードジェネレーション」という呼び方もしますが、「リード」とは「見込み客」を指します。
一般企業であれば広報がこの認知を担当することも多く、広報がメディアと折衝して日経新聞に掲載してもらうとか、そういう施策となります。
TVCMを出稿するのも、認知施策です。TVCMを見てすぐに買おう!と思う人は少ないはずです。
インフルエンサーであればSNSのフォロワー数を増やし、見込み客のプールを作ることです。
私個人でいえば、Twitterで決算情報を発信する、YouTubeで株式投資の解説をする、質問箱やYouTubeで質問に回答する。などは「認知施策」の一貫です。全て無料コンテンツです。
「認知」は見込み客獲得のためのフェーズなので、フリーミアムの概念でコンテンツを無料配布することもあります。インフルエンサービジネスの場合、記事や動画の無料配布は認知施策の入口となります。
少し専門的な言い方をすると「オウンドメディア」と「アーンドメディア」の2種類あり、オウンドメディアは自分や自社自身がメディア化すること。アーンドメディアは他者や他社(TV出稿や交通広告など)を利用することを指します。
広告費が潤沢な企業であればアーンドメディアに投資するのが今まで一般的でしたが、5年前くらいからオウンドメディアへの投資も進んでいます。
広告費を持たないインフルエンサーは当然ながらオウンドメディアである自らのSNSを広告費を出稿せずに伸ばすことを考えるのが良いと思います。
3.興味施策
次の興味施策です。
何らかの接点があり、Aという商品やBという人物を認知したとします。
「あの人見たことある!」というのが「認知」の状態であり、「あの人見たことある!面白いよね!」というのが「興味」の状態です。
インフルエンサービジネスであれば、認知施策と興味施策はセットなのですが、コンテンツを発信し続けることで、「単なる認知」から「こいつおもろいやん」に変わり「この人のことをもっと知りたい!」となってきます。
単に認知されただけで、コンテンツを継続発信しないと「興味」は育まれないわけです。一発屋に対する世間の興味は、長続きしない。
YouTubeでは「毎日更新」が暗黙のカルチャーとして存在していたのは、「毎日継続配信しないと興味を持ってもらえない」とか「忘れられてしまう」という配信者側の恐怖心があったのだろうと推察します。
実は興味施策はインフルエンサービジネスより単なるメーカーの方が難しいのかなと思っています。
フリーミアム的にお試し体験ができるとか、単純接触効果で「iPhone12のTVCMを10回くらい見ちゃったから、なんか欲しくなってきたな」とか「友達が買い換えたって言ってたから、欲しくなってきた」とか、「興味を起こさせる」には接触回数のパワープレイに打ち手が偏りがちな気がしました。
結論としては、ターゲットユーザーに「継続的に接触」することが、興味を育む唯一無二の方法かなと。この接触方法が、単純接触効果を狙うでも良いし、毎回違うコンテンツを当てに行くのでも良い。
4.検討施策
認知し、興味を持ったターゲットユーザー。
そのユーザーは、自社商品を買ってくれるのか?
その商品を買うために、他社商品と「比較」されることはあるのか。比較対象がない場合、その商品を買うことで「何ができるようになれば」買っても良いと考えるのか。
いくらかお金を出して何かを買う際、私たちは意識的にせよ無意識的にせよ、こういう思考が働いているはずです。
この検討段階で強いなと感じるのは、比較されることがないオリジナリティの高い商品。こういう商品は、実は決して少なくありません。
例えば、ホテル業界でいうと、京都のラグジュアリーホテルには、アマン、パークハイアット、リッツ・カールトン、フォーシーズンズがあります。
アマン以外の3つは同じような価格帯で比較されやすいですが、アマンは立地も街中から外れていますが、森の中にあることから、ユーザー体験がかなり異なるため、他3つと差別化できていると言えます。
上記写真:筆者撮影のアマン京都の敷地内
リッツ・カールトンとフォーシーズンズ、どちらに泊まろうという比較はされやすいと思いますが、アマンと他3つは比較されにくい。
アマンに泊まる場合は、立地的その旅はアマンを中心に設計しなければならない。祇園の街並みを楽しむより、今回はアマンを楽しもうという気分で行く方が、有効活用できます。
このように、商品自体が差別化されている場合は、比較されにくいので、「検討」フェーズに入ると、強いです。
一方で、比較商品がたくさんある場合は、何かしら他社に優れた点があれば、そちらを選ばれてしまいます。
検討段階においては、「その商品を得ることで、どんなメリットがあるのか」を具体的に提示できると、購入率が上昇します。
ライザップの場合は「2ヶ月で痩せます!」とか、何の課題に対する解決となるかを、明確に提示している。
「具体的に何を得られるのか」の訴求が弱い商品は、いくら認知されても、購入率が上がらず、結果的に売上が伸び悩むはずです。
なので、検討段階で際立つためには「そもそも、そのカテゴリーにおいて唯一無二の比較されない商品であること」か「ユーザーが持つ課題に対して明確な解決策を提示すること」のどちらかが求められます。
マーケター観点の難易度としては、ジャンルによっては「オリジナリティある商品開発」ができた方が楽です。
P&Gなどの消費財のマーケターの市場価値が高いのは、シャンプーなどのコモディティ商品のマーケティング経験が豊富だからです。一見、ユーザーにとってはあまり差別化がない商品を売ることは、非常に難しい。
理想としては「唯一無二の商品」を持つこと。それが難しければ、ターゲットユーザーが持つ課題に対して、ダイレクトに「この商品を買えば、あなたの課題が解決できます!」というメッセージを、様々な手法で伝えること。
それが、検討段階における施策となります。
インフルエンサービジネスでは「検討施策」が上手いというか、ビジネス設計上そこが成果地点になっているので、ここに力を入れざるを得ないのが、インスタグラマーです。美容コンプレックス系商材の場合は「課題解決」が明確なため、伝えやすいですよね。
あと、身も蓋もない話をすると、株式投資系TwitterやYouTuberは「その人から買える商品」をそもそも置いていないので、再生回数に応じた広告収入か、noteを書いても投げ銭を求めるくらいです。
個人的には価値がある情報にはきちんと対価が支払われるべきと考えるので、有料で販売した方が良いのではないかと思います。最近だと、YouTubeでもメンバーシップを導入している人もいて、良い兆候だと思う。
5.購入施策
検討施策を経て、めでたく!ターゲットユーザーがあなたの商品を購入しました!
購入してもらったら、それで終わりで良いのでしょうか?
買切り商品の場合、それでも良かったかもしれません。
しかし、サブスク商品の場合は「関係性、アクセス権に対する課金」ともいえるので、「2ヶ月目以降も課金継続いただくこと」が事業者にとっては重要です。
1人のユーザーが何ヶ月その商品を利用するかの平均を「ライフタイム」と呼び、それに利用単価を掛け合わせると「ライフタイムバリュー(LTV)」と呼びます。サブスクサービスでは「LTV」は最重要指標と言っても過言ではありません。
LTV向上のためには「解約率」を下げる必要があります。
インフルエンサービジネスで「サブスクサービス」をやっている人は少ない気がしますが、例えば、購入時に事業者からユーザーへ個別にウェルカムメッセージを送る。これはオンラインサロンで、私がずっとやってきた施策です。
新高値投資マガジンでは、購入特典のスプレッドシート共有を希望する際は、メアドを教えていただく必要があるので、twitter DMでメアドと記事の感想を送っていただくようにしています。
こちらからするとマーケティングデータの取得にもなりますし、どんな人が購読してくれたのかわかりますし、ささやかなコミュニケーションにもなります。
サブスクの場合、「コミュニケーション」が解約率低下につながる。という仮説のもと、私はそういう施策を実行してきました。
サブスクではない買切り方の商品でも「購入段階」でできる施策はあります。
ターゲットユーザーが商品を「購入」し、「満足している」様子がわかると、言い方は悪いですが、それを利用しない手はありません。
例えば、私たちは何かを買う際にAmazonでレビューを確認することがありますよね。
あのレビューを商品に組み込んだり、付随させるのです。
例えば、この高級賃貸物件の記事ですが、けんすうさんが面白いと言ってくれている!特にけんすうさんにPR費用はお支払いしていません。
やった!ありがとう!記事の中に追記します!ということで、追記させていただきました。けんすうさん、事例に出してすいません。。
いろんな人がこの記事を面白いと言っている!というのが、購読ページの前でわかると、購読率が上がることは想像に難くないでしょう。
ここでやってはいけないのがステルスマーケティングで、そのサービスを利用する人にお金を払って「この商品いいよ!ってSNSで言ってください!」という施策をすること。
人の感想を、お金で買ってはいかんよ。というのと、「金で買われた感想かどうか」は現代のユーザーは非常に敏感に見抜きますので、効果がないどころか、逆効果となります。
なのでインスタグラマーは「#PR」と投稿にテキストで入れるわけです。
記事に感想を入れるというのは、ちょっとあからさまではあるものの、購入者の「感想」を紹介することで、未購入者の購入促進につなげるのは、購入検討者にとっては検討材料が増えるので、メリットしかないはずです。
6.さいごに:この記事を書いた意図
以上、ファネルと各段階について、できるだけ平易に解説してみたつもりでしたが、ご理解いただけたでしょうか。
理解できたよ!もうちょっとこの辺知りたいな。という方は、投げ銭は要りませんので、twitterでシェアいただけると、私が気付いて反応しやすいです。
このファネル思考の記事自体は、私自身のファネルの中では「認知」と「興味」の段階に位置付けるもので、この記事の先にマーケティング記事の販売とかは予定がないので、フリーミアムでもありません。
実は私がYouTubeを本格的に始めた動機の一つにもあるのですが、「周囲の人への説明コストを下げたい」というのがあります。
個人的には、このファネル思考の話は自分の中ではふつうの話であり、マーケター同士で話すと、特段価値がある話だとは思いません。
しかし、冒頭のアンケート結果からも推測できるように「ファネル思考」を知らない人が一定数いて、その人たちに一から説明するよりは「記事を見て不明点があれば聞いてくれ」という方が、コミュニケーションコストが低い。
株式投資を教えてくれという友人がいたときに、「YouTubeの初心者向けリストを見といてくれ」と言った方が、同じ話をしなくて済む。
実はそういう「コミュニケーションコストを下げる」効果を狙ってもいます。
もちろん、直接お話しする機会がない読者の方に対しても、「ファネル思考について少し理解できた!」とお役に立てたり、かつ株式投資に興味があれば「YouTubeも見てみようか」とか、その先に「新高値投資マガジン買おうかな」となれば、それに越したことはありません。
折角なので、ファネル思考の記事と合わせてYouTubeと新高値投資マガジンの説明もすると、「4の検討段階」において、特に新高値投資マガジンの場合は「類似商品がない(オリジナリティの高い)」設計にしていたり、単に決算解説をするのではなく、「投資に対する思考方法」をYouTubeでは紹介するようにしています。
YouTubeの場合は、YouTubeを見続けることで「株式投資で勝てる考え方」を養うことを目的としており(道半ば私自身も勉強しながら養っています)、再現性ある考え方を身につけてほしいと思っています。
今回のファネル思考も「再現性ある考え方」という点では、共通しています。
企業や人によって、各段階のどこが得意でどこが苦手かは異なるでしょうが、ファネルの存在を意識して、各段階を少しずつ改善していけば、最終的な成果地点である「売上増加」に寄与するはずです。各段階が少しずつ改善するだけでも、掛け算で最終的には劇的な効果があるかもしれない。
こうしたファネルの考えなしに、単純に「売上を増やしたい!」というのは、無策です。デートで言えば、初対面の相手に「結婚しよう!」と口説き出すようなもの。
丁寧にファネルに分解し、どの段階に課題があり、その段階に最適な打ち手を実行していくべきです。
とはいえ、私も全て綺麗に対応できているわけでもなく、課題だらけです笑
まずはこの記事で私を「認知」し「興味」を持ってくださった方で、「株式投資」に関心のある方は、YouTubeのチャンネル登録をお願いします^^
新高値投資マガジンという「投資関連の記事やスプレッドシート」も販売しているので、興味ある方は「検討」「購入」段階へ、お進みください。笑
最後に!マーケティング関連の過去記事で、有益そうなものがあったので、リライトしてご紹介しておきます。
マーケティングの勉強は、マーケター以外の人もしておくべきです。ビジネスマンとして、いや、SNSでビジネスをしたい「個人」にとっても、必須ですね。