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BDashCamp2022 Fall:Pitch Arena出場企業16社を紹介

毎回、事前にピッチアリーナ出場企業を紹介し、本選進出企業を予想する定例記事です。前回の記事はこちら。

今回はWEB3ピッチというコーナーが新設され、そちらに10社出場する関係からか、ピッチアリーナ自体は前回の18社→今回16社に減少。

前回の優勝はAI作曲のSOUNDRAWでした。

目次の見方:番号(サイト掲載の左上からの順)/社名/調達を公表してる場合は調達額/ジャンル/UWで扱いあれば判定

結論を先に。今回の本選進出予想は下記。

☆優勝
6.Fivot/FinTech(RBF)
▷進出
8.レイヤード/ヘルスケア(かかりつけ医)
11.Pictoria/Vtuber
12.クアンド/ConTech(施工管理)
15.ユーティル/WEB幹事
16.Yuimedi/医療データクレンジング

下記で1社ずつサクッと紹介。

1.aifie LP制作運用改善

smartLPというLPの制作運用改善。一応、ノーコードサービスのようだ。

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感覚としては、バナーなどのABテストのKAIZENに近しい領域。KAIZENが買収すれば良い領域ではないか。と思う。LP特化だとTAMが小さそう。月額6,451円で年間払いというのもARPUが低い。あまりピンとこない。

2.BabyJam 音楽プロモーション

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楽曲とインフルエンサーのC2C的サービスのMemeを提供。たしかにこういうサービスは見たことがない。tiktokなどでバズれば楽曲の再生回数は加速度的に上昇し、制作者も潤うだろう。

しかし、「楽曲をプロモーションしたい」という市場にそんなにニーズがあるものなのか。最近は、川本真琴氏のサブスク批判発言が注目されたが、サブスク事態において再生単価ビジネスだと楽曲制作者に旨味があまりない。

ただし、前回のSOUNDRAWの課題は「YouTuberがオリジナルBGMを簡単に制作できるように」というものであり、インフルエンサーにとって背景BGMを手軽に入手できるようにするニーズは確かに存在はする。しかし、その市場性がそんなに大きいのかが疑問であり、私はさほど大きくないと判断する。

3.BoostIO 1億 オープンソース報奨金サービス B判定

投資家:ANRI、NOWなど

2018年12月に1億調達。オープンソースプロジェクト向け報奨金サービス「IsuueHunt」を運営。4年近く経つのに次のラウンドに進出してない点が気になる。

2018年のリリース時点では150カ国で利用され海外ユーザー比率90%とあった。私はエンジニアでもないのでサイトの中身へのアクセス権もなく、そんなにサイトが盛り上がっているのかは表面上からは判断できない。

4.CrossBorder セールステック

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SalesMarkerというセールステックサービスを提供。海外サービスでいうところのZoominfoであり、国内だとSansanが名刺データからから派生させるとこういうアプローチが可能になるはず。

リストをどう作成しているのか。ZoominfoはLinkedinのクロールがメインと言われていたが、日本のLinkedinには海外ほどはデータが蓄積されていない。Sansanがやれば良いのではないか。という気がするし、「営業リストの精度」の担保が気になった。

5.Firstcard FinTech(学生向けデビット)

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学生向けデビットカードですが、サイト下部にチェースやバンカメとの比較がありますが、初期にキャッシュバックがある程度。サインナップが簡単である点も優位とされていますが、大差ないと感じます。よほどのプロモーションコストを投下しないと、ユーザー獲得は難しいのでは。

6.Fivot 10億 FinTech(RBF)A判定

投資家:(新規)Angel Bridge、SBIインベストメント、SuMi TRUSTイノベーションファンド、株式会社三井住友銀行、SMBCベンチャーキャピタル、新生企業投資株式会社グループ、Sony Innovation Fund、(既存)キャナルベンチャーズ、DEEPCORE

9月に10億調達を発表したばかりで、今回の出場企業の中では、調達額的に群を抜いています。1社だけステージが違う企業がいる。という感じ。

スタートアップ向け融資サービスのFlex Capitalで下記の3つのラインナップ。

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銀行借入、株式での調達以外の、第三の資金調達の道となるが、それなりのニーズはあると考えたため、UWでもA判定としている。今回の優勝候補とも言えるだろう。

7.Intelligence Design ビッグデータ

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AIモデルを最適化し、エンプラ向けに利用しやすくしたサービス。と思われる。この手のビッグデータエンプラ向け系は、エンプラ向けという性質上、サクッと売上が立ちやすい。極論、数社の顧客から1億ずつ年間売上が経ち、営業利益率も高ければそれだけでサクッとIPO可能。しかし、それ以降が全然伸びずに頭打ちとなる傾向がある。

ビッグデータ系といえば上場企業ではアルベルトがアクセンチュアからのTOBに同意したばかり。Intelligence Designも外から見ただけでは売上規模などは全く不明であるが、過去の事例からアップサイドは限定的と見る。

8.レイヤード ヘルスケア(かかりつけ医)

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Kakariteというサービスを提供。クリニック向けCRM<PRM(Patient Relation Management)>で患者にとっての「かかりつけ医」へ。

クリックのCRMという観点でAPUR向上に良いだろうが、ユーザーにとってもかかりつけ医がアプリなどで可視化され、過去の疾患や病院に行ったデータがまとまっているとわかりやすい。お薬手帳的な紙は個人的にはうんざりである。

ユーザーにもクリニックにも双方にメリットがあり、クリニックDXの観点で有用と感じる。

9.luco デザインツール

投資家:Skyland Ventures3号など

調達額は非公開だが、2021年12月に調達。

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配信画面デザインサービスのスコラボを提供。スマホの壁紙や、ガラケーの待ち受け画面的な、背景デザインサービスだ。ガラケーの待ち受け画面のデザインは多少は売れた気がするが、TAMは大きくない気がする。

ユーザー数はPRTIMESによると1万人突破。VTuberの運営もしているようだ。

10.nat AI測量

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サブスクの計測サービス。不動産、建設、引越しなどがユースケースのようだ。うーん、そんなに使われるだろうか。ファーストインプレッションではピンとこないが、B2Bで契約して、引っ越しの内覧時に窓をの大きさを計測する。とかの需要はありそうではある。しかし、これもそんなにTAMがあるのかは疑わしい。

11.Pictoria 1.2億 Vtuber B判定

投資家:海外投資家2社、Skyland Ventures、XTech Ventures、90s

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紡ネンなどAI Youtuber事業が中心。YouTube登録者数6万人強で、すごいスケールしているというわけでもない。

Vtuber市場は2022年6月のANYCOLORのIPOで今やメルカリを上回る時価総額の3,000億台をキープ。営業利益予想も60億程度と、ドル箱事業であることが白日に晒された。ただ、ANYCOLORの場合は成長を牽引するデジタルコンテンツ販売のレベシェア比率がANYCOLORにかなり有利な設計であるという話も聞く。

後続としてはホロライブのカバー社のIPOも年内に噂されているが、その次にそこまで強いプレイヤーはいない。AI Vtuberとなると、普通のVtuberよりコストが大幅に下がることもあり、ヒットすれば高粗利を確保しやすいモデルに思える。

ヒットするかは正直全然わからない。しかし、今回のピッチアリーナにおいてはVtuberへの注目度も高まっていることから、本戦進出を予想。

12.クアンド ConTech(施工管理)

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SynQRemoteという施工管理SaaSを提供。九州本社の企業。施工管理系は一見たくさんあるように思えるが、微妙に細分化されている可能性もあり、素人目にはパッとはわからない。

HPには導入事例がそれなりにあるので、既に割と使われている可能性があることから、一定のトラクションが出ているかもしれない。

13.サグリ 農業

3つサービスを展開しているが、企業名でもある「サグリ」が主力だろうか。

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衛生などで農地の状態を可視化して管理するサービスだが、それだけでそんなにマネタイズできるものだろうか。最近は農業系スタートアップが全然EXITが出てこないので、この領域に幻滅している自分がいる。そんなに金にならないのではないだろうか。

14.UPBOND ウォレット

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WEB3のその先へ。か、気が早いですねw

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図解を引用するとわかりやすいですね。ただ、ウォレットサービスは暗号通貨関連でもそうですが、そんなに使われているものでしょうか。Paypayなど決済サービスがウォレット的な役目も果たしている気がします。暗号通貨は取引所に置きっぱなしの人が大多数ではないでしょうか。

そもそも「スタートアップ」と「ウォレット」の相性が悪い気がしていて、性質上、強固なセキュリティが求められるウォレット事業において、歴史が浅いがゆえに信頼がないスタートアップのサービスを使うインセンティブがユーザーにあまりないのですよね。ピンと来ませんでした。

15.ユーティル 2.4億 WEB幹事 A判定

投資家:NVCC、コロプラネクスト、グリーベンチャーズ、岡三キャピタルパートナーズ、、CAC、basepartners

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WEB制作って相場感がわからなかったりするので、その相談比較依頼ができるサイト。ニーズ的には平成からあるはずですが、ありそうでなかったサービスであり、需要の手堅さが伺えます。動画やシステム、LP、ECに横展開しており、地味ではあるがそこそこな規模のGMVになりそうな気がする。優勝候補の一角と見て良いと思います。

16.Yuimedi 医療データのクレンジング

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医療データのクレンジングに特化したノーコードのクレンジングソフトウェア。データクレンジング自体、エンプラに手堅いニーズがあり、上場企業ではダブルスタンダードが提供。今期予想では営業利益率30%程度を確保見込みです。

推測ですがデータクレンジングも業界ごとに特有の癖とかがあるはずで、医療データ特化というのはニーズはあると思う。ただし、データクレンジング自体のアップサイドが大きいとは限らない。手堅いニーズはあるが、ホームランにはならないという判断。

雑感

ピッチアリーナ的なイベントは、シードアーリーの傾向の定点観測として位置づけになります。

SaaSが減ってきている気がして、VTuber系(Pictoria、luco)がいくつか。ヘルスケア、FinTechも領域としては毎回1社は入ってきている気がします。

ピッチアリーナからスケールしていく企業は数年経ってみないとわからないことが多く、今回も同様ではないかなと。その中では、Fivotなど既に10億調達している企業は手堅そうに思えましたし、WEB幹事など令和感のないレガシーサービスに思えますが、堅調に売上を立てていそうにも思えます。

WEB3ピッチはWEB3が全くわからないため、私は触れません。未だにWEB3に全然ピンときていませんが、Vtuberが登場した初期の熱狂もよくわかっていなかったのですが、上場して営業利益率めっちゃ高いということがわかり、ようやく熱狂の意味を理解したのでした。

シードアーリーには自分は向いていないのだろうなと、WEB3の熱狂を見て感じています。

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