ヒルズに住む女
大昔にマッチングアプリで知り合った20代の女性が、そう言った。
それは決して嘘ではなく、スポンサーが家賃を支払ってくれていたわけでもない。
どこのヒルズとは言わないが、彼女はヒルズにある超高給な企業に勤めるオフィス・レディーであり家賃補助もたっぷりと出たそうだ。
部屋は1Kか1LDKで、詳しい家賃は聞いていないが、当時30〜40万円ほどであろう。何割が負担されるかわからないが、この家賃に対して一定の家賃補助が出る。
彼女はインスタで自分がヒルズ族であることをアピールしたい、ホイップクリーム的な女子でもなく、極めて合理的な理由でヒルズに住んでいた。
しかし、だ。
20代でオフィス・レディが、自分の稼ぎで、ヒルズに住んでいる。
これはなかなかインパクトある話であったし、「ヒルズに住む女」というインパクトある連載名で、そこから派生するフィクション小説を当時プロデュースしていたメディアに載せたい気持ちはあった。
もう、時効だろう。ということで、ヒルズに住む女。について、書きたくなった。
これは興味深い話に思え、その男性に共感できる部分も多かった。
おそらく彼は彼女をレジデンスの入口前まで送り、男性は「おや?こんなに若い子がここで一人暮らしをしているのか?自分とは、住む世界が違うのかもしれない」そう思ったとしても、致し方ない。仮に、理由を聞いたとしても。
あるいは邪推したとして、同棲中だけど別れる予定があるとか。明らかに彼女はオフィス・レディであって、夜の蝶ではないので、スポンサーの線は薄い。それか、親が所有するマンションに住んでいるのか。
それ以来、彼女は男性に送ってもらう際は、「とある坂の下付近」で降りるようになった。手痛い経験から得た、賢明なリスク管理である。
ヒルズに(自分の稼ぎで)住む女。
立派なものだと思う一方で、なかなかのインパクトに思う。仮に自分がアラサーの商社マンだとしたら、ヒルズに住む女は手に負えないと思ってしまうかもしれない。
自営業の僕は、ヒルズに住む女を面白いとは思うが、結婚相手として考えると、それ相応の家賃のマンションに住まなくてはならないのだろうか。と思うと、やや荷が重く感じた。許容できるというか、現実的に審査に通る家賃はこれくらいまでかな。という感覚がある。
住む街や、住むマンションは、その人を表す。
街やマンションが、その人の人格の一部を形成すると言っても、過言ではない。
2024年現在において、「麻布台ヒルズ内覧して検討したけど、住みません!」とわざわざストーリーで内覧報告をするホイップクリーム女子も見かける。
港区にはまた新しいヒルズが増え、「ヒルズに住む女」も、増えるのだろう。
*本記事はノン・フィクションかもしれないし、あるいはフィクションかもしれない。
*アイキャッチ画像はcanvaで購入
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