遅ればせながらダウンタウンの約30年ぶりの漫才を振り返ろう
少し前に、島田紳助さんの1985年頃のダウンタウン評を紹介しましたが、もうひとつあったので引用しておきます。
これはいつの発言なのか、出典に注がついていないのでわかりませんが、この本が刊行されたころだと想像します。ダウンタウンの漫才は天衣無縫というか、フリートークなんか見ると、漫才はアドリブだけでできるというふうにも見えますね。
「そんな天才の技巧を真似しようとする若い芸人がいる」と、ナイツの塙さんが嘆いていた動画を見た記憶があります。ダウンタウンのお二人を見ていたら、アドリブは簡単にできるとか、アドリブの方が面白いって勘違いしてしまいそうですよね。
実際、ダウンタウンは2022年、およそ30年ぶりに漫才を披露しました。同年4月3日に行われた吉本興業創業110周年特別公演「伝説の一日」のことでした。長いブランクを感じさせない、爆笑満載の漫才でしたね。これはもう見られないんかな? ちなみに松本さんが言及したのは、ピカソでもマネでもなく、ムンクでしたが。
30分間、アドリブで漫才するって、やっぱり天才にしかできません。ネット配信を見たわけですが、ダウンタウンを長年見続けて来た私にとっては、至福のひとときでした。私は細かいところでそれを感じてしまう。小ネタが好きなんです。
たとえば、冒頭の「しましまんず」への言及。しましまんずって、『4時ですよ〜だ』から出てきたコンビ。詳細は割愛しますが、なんか「おまえらのこと、忘れてへんで」的な愛情を感じます。
それから、「しずかしずかクイズ」は「しずかしずかしずかクイズ」を割愛したものだ、とか。これも、昔からの松本節みたいなもんで。「これだよ!」って思いますよね。
あとは、東京タワーのくだり。自宅マンションの窓から東京タワーが見えるんだけど、カーテンがかかっていて見えないときもあった、というどうでもいいようでどうでもよくない小ネタ。これも若いころからのテイストそのまんま。
こういう若いときの感覚や言い回しが、漫才をすると今でもそのまま出てくるんですよね。じわっと。たまらないです。
30分間の漫才のなかで、ベースとなっているのは3種類のクイズ。➀浜田さんが自分で問題を出して自分で答えるクイズ(なぜか松本さんに不正解といわれる)、➁しずかしずかクイズ(解答者は声を出してはいけない)、➂二択クイズ(浜田さんイジリ)で構成される。
とにかく、ダウンタウンの漫才の特徴は、テーマがいたってシンプルなこと。クイズをはじめ、誘拐、高校野球、医者と患者の父親、司会者と研究家、などなど。ごくごくありがちな、ベタな設定ですよね。
このへんが、彼らの漫才が古典的に見えてしまう理由でしょう。ベタネタだから、「ハイスピード」で漫才をやる必要もないわけで。ただ、こうしたありがちな設定をどうやって裏切るかが肝心なんです。
では、また次回。(梅)
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