松竹芸能の古典漫才を見るには
これまでにしばしば松竹芸能の古典漫才について言及してきました。古いのでなかなか容易には見られないのですが、公式的な映像資料としては、『伝説の昭和上方漫才 松竹名人会』というDVD-BOXがあります。
松竹芸能50周年記念に発売されたもので、32組の漫才師・芸人を紹介しています。4枚組のボックスで、84ページの解説ブックレットつきです。戸田学さんが解説文を担当しています。価格は高くて、定価19,000円(税別)とちょっと手が出ないようなものです。各コンビにつきネタ1本は、残念ながら少ないです。
中味は、戦前から活動していたような古い漫才師も多いです。その代表が最晩年の砂川捨丸(すながわすてまる、1890-1971)です。問答などが得意で、トリネタ(おしまいの定番ギャグ)である「舞い込み」も収録されています。
上方漫才の歴史では、まず元祖ともいうべき玉子屋円辰(たまごやえんたつ、1865-1944)という人が出てきて、漫才のもととなる近代的な「万歳」を作った。歴史的にその次に出てくる人が砂川捨丸です。ちょっと大げさですが、徳川幕府でいえば二代目秀忠みたいな存在かな。この人についてはまた触れることになるでしょう。
あとは、ほんとうに「芸」のある人が多いですね。桜川末子の数え唄とか、荒川キヨシのあほだら経など、漫才史的には知っておくべきネタが多い。
あと、以前に私が推した、はな寛太・いま寛大も収録されているのですが、定番ギャグ「ちょっとまってね」が収録されていないという、あるまじき失態を犯しています。これには立腹です。
京唄子・鳳啓助とか、ちゃっきり娘、レツゴー三匹、ゼンジー北京も収録されています。ゼンジー北京さん、小さいときによくテレビで見たなぁ。京唄子さんも数年前までお元気にされてましたね。なつかしい。
漫才史的には、松竹芸能にはこうした味のある漫才師が多かったし、こちらが上方漫才の本筋、という感じ。
ただ、松竹芸能は演芸場での展開が多かったので、新しくてテレビ的な吉本興業系の漫才との差が、マンザイブームの1980年頃に大きく開いてしまった印象です。その後、落ち込んでしまった松竹芸能を一人で支えたのが笑福亭鶴瓶でした。
ともかく、映像資料が少ない。困ったものです。では、また次回。(梅)
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