みんな、なかよく。
僕ら大人たちは、子どもたちに「皆と仲良くするんだよ」と言う。果たしてそれは本心だろうか。
大人たちの社会には諍いが絶えず、諍いが諍いで済めば良い方で、相手を罵り合い侮辱し合い、終いには物理的、精神的な暴力を行使し、多くの資本を持つ側が正義と実権を得て弱者は淘汰される。分かり合えず、許し合うこともなく、歪んだまま壊れてしまう人間関係で世界は溢れている。
それでも僕ら大人たちは、子どもたちに「皆と仲良くするのだよ」と言い続けるのか。
皆と仲良くなんてできないのだから、まずは嘘をつくことをやめないか。皆と仲良くするのは無理だ。
同じ国籍同士、同じ地元民同士、同じ性別、同じ特技、同じ趣味、同じ趣向、同じ癖、などなど共感する者でさえ、良い関係を築き続けられるわけではない。それならいっそのことひとり、孤独で幸せになれればそれに越したことはないけれど、そうもいかないのが人類で、どうしても誰かと繋がり合い、認め合い、共感したいと望んでしまう。
面倒だ。
そうやって面倒な性質と付き合いながら生きてきた。だから自分の子どもにどう生きれば良いか教えることは難しい課題で、一度諦めてしまおう。
自分にできることと言えば、これまでどう生きて来て、どう思い悩んできたか丁寧に伝えることぐらいだ。あとは彼がどう生きたいかを彼自身の心で考えることに手を貸し、付き合って行きたいと思う。
自分が仲良くしたいと思う人と出会ったときに、なんて声をかければ良いのか。自分がやりたいことを見つけたときに、どうしたらやり続けられるのか。一つの正解を探すのではなく、たくさんの解釈を見つけていけるように、柔らかくて小さな興奮をたくさん集め、幸せを大きく膨らませよう。
そのとき君の一緒にいられたら、父としてこれ以上の幸せはない。
思いやりを携えて、どうやって生きて行くか、一緒に考えよう。