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「シン・仮面ライダー」で見る!白倉伸一郎の考える仮面ライダーとは?ってやつ
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シン・仮面ライダー、マジ面白かったのでみんな見て!!
※「シン・仮面ライダー」のネタバレを大いに含みますのでご注意ください
2023年3月17日18時ーー全国最速公開され、翌18日より全国公開の始まった「シン・仮面ライダー」。仮面ライダー生誕50周年記念にまつわる企画の最大の目玉として発表され、公開までの間の綿密なプロモーション活動や「シン・ゴジラ」や「シン・エヴァンゲリオン」などの庵野秀明監督を起用という話題性で強い作品が、絶賛公開中である!!
自分は最速上映を観に行ってきた、いわゆる仮面ライダーオタクなのだが……観てきて正直、ド肝を抜かれたし、個人的には100点満点中10,000,000,000点の傑作でした!!
見どころをざっとあげるだけでも……
・仮面ライダーらしさと庵野秀明監督らしさ
・スピーディーかつキメのあるアクション!
・変身時のヘルメットやバイクのメカニカルなギミック!
・随所に散りばめられたマニアがニヤリとする小ネタの数々
・クールだけど甘えたいところもあってバリバリ仕事できるうえで、
忙しくて着替えとかシャワーが出来てないことに苛立つ……
監督の性癖過積載のヒロイン!!
・カッコよすぎる一文字隼人!|
・ダブルライダーの活躍が最高にカッコいい一文字隼人!!
・2号ライダーのステレオタイプとして資料に載せたいくらい
最高に良くできた一文字隼人!!!
・見覚えのある、庵野作品常連の皆さん!
・何よりもヒーローのかっこよさ!
・そしてあのED!!!!泣いちゃった!!
ざっくりこの作品自体の良いところを上げてもこれだけ出てくるし、
色々と語りたい部分は多分にあるし、たぶんしたい。
でも、今回はそこじゃない。そこじゃないんだ
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「シン・仮面ライダー」は、『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース』という「シン・ゴジラ」から続く流れの作品群にラインナップされる作品で、これは庵野秀明の世界観で繋げられた作品たちである。
そこの一作品として見る「シン・仮面ライダー」は、間違いなく庵野秀明の作品だし庵野ワールドとしてみるべきなのが自然な見方だと思う。
しかし、これを"仮面ライダーのリブート作品" という文脈で見るとき、
その点において欠かせない人間が間違いなく存在している。
仮面ライダーを作っている東映の人間ーーそう、白倉伸一郎である。
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白倉伸一郎……平成の東映特撮においてはきってもきれない存在。
平成仮面ライダーシリーズの数多くの作品をはじめ、鳥人戦隊ジェットマンや超光戦士シャンゼリオンなど数多くの作品に携わり、近年でも暴太郎戦隊ドンブラザーズのチーフプロデューサーとしてかかわり続けている。
そんな彼の仮面ライダー作品との関わり方として特徴的なのが、
"仮面ライダーのリブート作品" に数多く関わってきたという点にある!!
今回の「シン・仮面ライダー」での仮面ライダー像に辿り着くまでに、
これまで白倉が関わってきた作品たちを通して見ることで、白倉伸一郎にとっての「仮面ライダー像」の変化も見て取れると思う。
というわけで、今回は白倉伸一郎の仮面ライダー像について各作品に触れながら追っていきたい!!!
白倉仮面ライダー論すべての序章!「真仮面ライダー〜序章〜」
まず、白倉伸一郎が関わってきた仮面ライダーリブート作品で最初に触れるべきなのが、「真・仮面ライダー序章」(長いので以下、真と表記)は、1992年に発売されたオリジナルビデオ作品。仮面ライダー20周年を記念した作品である。
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あらすじとしては、謎の組織「財団」が進めるプロジェクト。
それは人間を改造兵士「サイボーグ・ソルジャー」へと変え、生体兵器として商品化する研究であった。
その研究所「ISS」の被験者となっていた風祭真は、科学を狂信する研究者によってバッタの遺伝子を融合され、改造兵士へと変貌。
恋人と父の命を奪い、自身を異形の姿に変えた財団を壊滅させるべく、真の戦いが始まった!(仮面ライダーWEBより引用)
ビデオ作品というテレビではない媒体だからこそ挑戦した表現の数々ーー
特に当時最新の特撮技術を駆使して人間から改造兵士へと変身する姿は、
数多くの視聴者を震撼させた!
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この作品での仮面ライダーとは、”造られた異形の者としての哀しい宿命”だった。
真仮面ライダー序章で描かれたのは、「仮面ライダー=改造人間であるバッタ男」という、異形の存在としての宿命と悲哀。
この作品、本来であれば本編の戦いを経て仮面やバイクなどを獲得してヒーロー=仮面ライダーになっていくという想定だった……らしいが、諸事情で序章のまま終わってしまった。
その流れであれば、ヒーローのオリジンとして仮面ライダーという異形の存在の背負う哀しみを描いたのがこの作品における仮面ライダー像だったと思う。白倉伸一郎にとっては、人ならざるものになった宿命を背負うということが、仮面ライダーということだったのではないかと作品を通して考えられる。
次なる展開!仮面ライダーザ・ファーストとザ・ネクスト
真・仮面ライダーから13年、そこまでに仮面ライダークウガからはじまる平成仮面ライダーシリーズをすでに何作も携わってきた白倉伸一郎は、新たな仮面ライダーリブート作品に関わる。
それが「仮面ライダーTHE FIRST」と、その続編「仮面ライダー THE NEXT」である。
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本郷猛、一文字隼人、ショッカー……「仮面ライダー」の基本的な要素を入れてリメイクした原点回帰、リブートを試みた作品だったTHE FIRSTでやったのは、真でも触れていた「改造人間の宿命」の部分を改めて掘り下げて人間としての幸せや感情の揺れ動き(そこを当時下火になっていった韓流ブームの恋愛ネタ入れつつ)、同じ改造人間同士としての1号と2号の生き方や対立、交流によって「改造人間として生きる人間=仮面ライダー」を描こうとしていた。その対立として、仮面ライダー以外の改造人間のエピソードも少し挟まれ、改造人間になるということを描いている。
そしてその宿命を生きる者たちが生きている日々を描いたのが、THE NEXTである。前作では将来を期待された研究者だった本郷が、風紀乱れまくり治安激ヤバ不良高校の教師になっており、一文字は女遊びに興じているなど、これまでの生活とは変わっているが、それでも生きようとする姿を描いているといえる。
そこに付随して、かつての仮面ライダーの怪奇性や異形のものの哀しみ要素をなんでかJホラー要素でぶつけたからよくわかんないけど、登場人物たちのカッコよさ仮面ライダーとしてのデザイン・アクションは今見てもとてつもなくカッコいいし、シン・仮面ライダーもある種この路線の地続きにいるのが伝わる。あと井上敏樹最高!
このときの白倉伸一郎の定義する仮面ライダーは、”真から人ならざる者になっても戦い、生きる者”という仮面ライダー像だった。
だからこそ2作続くことで改造されてからのその後の日々を描く事の意味がより強く描けていたと思う。
単なるリブートにしないために入れているオリジナル要素が受け入れないなどで、大絶賛というわけではなかったこの2作だが、仮面ライダーのリブートとして高く仕上がっている印象がとても強い。
生命!本郷猛という男としての仮面ライダー仮面ライダー1号
2007年のTHE NEXTのあと、仮面ライダーとはなんぞや、ということを前面に出す作品は少ない印象の白倉。2009年に仮面ライダーディケイドを生み出したり、春映画でワイワイやっていたが、9年ぶりに仮面ライダーの原点的な部分を描く作品をやったのが2016年公開の仮面ライダー1号である。
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春映画で平成に対する昭和ライダーとして、歴史に存在しない仮面ライダー3号という存在と対峙させる本来のライダーとして仮面ライダー1号を象徴的に扱ってきていたが、仮面ライダー生誕45周年を迎えた年に、満を持しての1号を主軸にした作品を生み出してきたのだ。
しかしこの作品、これまでの白倉伸一郎の仮面ライダーリブート作品とはアプローチを大きく変えている。
今回の着眼点は仮面ライダーを変身している男、本郷猛を通して仮面ライダー像を改めて描こうと試みた点にあると思う。
本作は、仮面ライダー1号=本郷猛を演じた藤岡弘、本人に出演してもらい、彼を軸として作品を作っていった。
ところが、この作品は起用した藤岡弘、の今の人間性やイメージにあんまりにも引っ張られすぎてしまい、藤岡弘、のイメージビデオ的な作品になってしまった!
暴漢を蹴散らし!
女子高生とデートし、
デート代を工事現場で稼ぐ!
藤岡弘、ファンに是非見てほしい!
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いろいろと言ってはいるが、個人的には好きな作品である。
本郷猛とショッカー大幹部、地獄大使との敵でありながら通じ合う関係性、本郷猛が文字通り炎の中から蘇り、復活したことで明確に仮面ライダー1号になっていったと思えるストーリー。仮面ライダーゴースト=タケルどのとの孫とおじいちゃんみたいなやりとり……と、これまでと違うアプローチを試みてきたからこそ見せられる仮面ライダー像はあったと思う。
とはいえ、白倉にとっての仮面ライダー像とは藤岡弘、はまるっきり同じというわけではないため、これ以降少しずつ仮面ライダーの描き方も変わっていくことになる。
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仮面ライダーを「仮面ライダーという作品」としての描き方に行き着き始めた「平成ジェネレーションズ FOREVER」〜「スーパーヒーロー戦記」
仮面ライダー1号の後、平成仮面ライダー20周年記念作品の仮面ライダージオウなどを手掛けることになる白倉。その劇場作品などでは、新たな仮面ライダー像の描き方をしていくことになる。
それは、仮面ライダーをテレビ作品・原作者のいる漫画作品としてのメタ的な目線で物語を描くこと、”受け取り手がいる存在”として、仮面ライダーを描き始めていくようになった。
それが平成ジェネレーションズ FOREVERや劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer、そしてスーパーヒーロー戦記である。
どの作品も、通常のテレビシリーズとして進行してきた部分とは別に、仮面ライダーを見て育った少年や、仮面ライダーになれなかった存在や、原作者である石森章太郎を登場させて、仮面ライダーを登場人物やヒーローとしてでなく、作品としての仮面ライダーという点で問いかけるようになっていったのだ。
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物語のないヒーロー、仮面ライダーディケイドを生み出した白倉が通ってきた道だからこその「作品」とその「受け取り手」を通しての仮面ライダーを描くことに行き着いたようにも思う。
視聴者がイメージするヒーロー、作品としての仮面ライダーという仮面ライダー像になったことで、受け取り手が持つ仮面ライダー像がそれぞれにあるし、そういうイメージがあること、消費される存在であることが仮面ライダーという、新たな方向で仮面ライダーを定義して描くことが出来るようになったのだと思う。
「シン・仮面ライダー」は「庵野の考える仮面ライダー」という仮面ライダー像
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庵野秀明というクリエイターは、非常に優れた作品を作りつつ、その中に自分の好きだった作品の要素を入れ込む、オタクのパロディー表現のうまい作家だと思う。これは彼が作ってきた作品でずっとやってきたことだし、かつて古典文学では過去作品からの引用やオマージュは知識あるものの特権的な遊び要素としていた部分を現代で煮詰めた結果とも言えよう。
そこから生み出されたシン・仮面ライダーは、仮面ライダーを見て育った、仮面ライダーが好きなクリエイターから出力される”仮面ライダーとしての仮面ライダー像”ともいえる。
庵野の生み出す仮面ライダーに、白倉も委ねることにしたのだ!
そうすることで、その作品の持つ本質に近づこうとしたのだと思う。
これは改造人間の宿命、異形の者の哀しみ、ヒーロー、本郷猛、テレビ・漫画それぞれの仮面ライダーという作品……そういった要素すべてを内包したものーー庵野秀明という仮面ライダーの受け取り手が見て感じていた、「仮面ライダーとはなにか」をひとまとめにして煮詰めた仮面ライダー闇鍋!!
そのあらゆる感情が渦巻いたものを仮面ライダーとして描いたのだ。
これまで白倉が考えてきた「仮面ライダーとは」というものに、白倉以外の誰かの考える仮面ライダー像もあってそこに仮面ライダーがあるという考え方になったのは、一つ大きな変化なのだと思う。
さいごに
「時代が望む時、仮面ライダーは必ず甦る」。
これは仮面ライダーの原作者、石森章太郎が遺した言葉である。
時代が望むたび、初代仮面ライダーへの原点回帰を目指す仮面ライダーたちはテレビシリーズ含めて何度でも……いやもう結構な頻度で何度でも蘇りつづけ、なんだったらその原点回帰を目指した作品のリブート作品すら出てくるほど、頻繁に仮面ライダーはよみがえってくる。そしてそのたびに強く仮面ライダーとは?を問いかけるリブート系の作品たちも数多く生まれてきた。
仮面ライダー生誕50年の歴史、その過半数に及ぶ30年は白倉伸一郎による、「仮面ライダーとはなにか」という問いかけの歴史でもあったと思う。
真・仮面ライダー序章から連綿と続く、白倉伸一郎の”仮面ライダーとはなにか”という作品論は、シン・仮面ライダーを通してまた一つ答えを見ることができたと思う。ここから先、次の仮面ライダーはどうなっていくのか楽しみでしょうがない。
……まあ、よく知らないけど。