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\梅田の地下を完全攻略!「うめ地下・夜のまち歩き」活動レポート/
梅田。そこは、JR大阪駅や私鉄各線のターミナル駅であり、商業施設や飲食店、オフィスビルも目白押しな日本有数の規模の繁華街かつオフィス街。観光客から仕事や学校への通勤、通学者まで、たくさんの人々が集まる大阪を代表するまちです。
これを読んでくださっているみなさんの中には、梅田を訪れたことのある人も多いのではないでしょうか。そして、梅田を移動するときに多くの人が通るであろう場所、梅田の地下街「うめ地下」も、利用したことがある人はきっと多いと思います。
では、みなさんは、うめ地下の歴史や造りにどのような秘密があるのか知っていますか?
日々多くの人で賑わっているうめ地下ですが、普段は素通りするだけという人も多いのではないでしょうか。
そんな、「利用しているけど実はよく知らない」うめ地下を紐解くべく、梅田の!ローカルメディア企画編集会議から発足した部活動、その名も「梅田攻略部」は、9月12日(木)の18時より、うめ地下・夜のまち歩きを実施してきました!
このレポートでは、梅田の!ローカルメディア編集チームの多久島まい(たくしま・まい)が、先日のまち歩きを通して見つけた、知られざるうめ地下の秘密や実際に歩いてみて感じたことをみなさんにもご紹介します!最後まで読んでいただけると嬉しいです。
梅田ダンジョンなど、あらゆる梅田を攻略する「梅田攻略部」誕生!
梅田でローカルメディアを作る「梅田の!ローカルメディア」というプロジェクトは、2024年2月からスタートしました(これまでのあゆみが気になる方は、こちらからどうぞ)。
これまでに開催された座談会に参加したメンバーが集まり、座談会終了後も「梅田の!ローカルメディア企画編集チーム」として、ローカルメディアづくりにゆるく携わりながら活動しています。
6月の梅田の!ローカルメディア企画編集会議では、梅田でどんな部活動があればおもしろいかをテーマに、グループごとに「梅田の要素×自分の興味関心」を掛け合わせて考えました。そうして立ち上がった部活動の一つが、今回まち歩きを実施した「梅田攻略部」です。
ちなみに、その他に立ち上がったのは「立ち飲み部」や「梅田世界グルメ旅行部」です。梅田であそび、学び、編集する、今後の活動の様子もお届けする予定なので、お楽しみに!
泉の広場に集合し、いざ、うめ地下のまち歩きスタート!
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来たるまち歩き当日。18時に集合場所の「泉の広場」に集まったのは、梅田攻略部総勢12人。お仕事帰りの時間帯というのもあり、帰路につく人や晩ご飯を食べに向かう人など、相変わらず梅田には人の賑わいが溢れているようです。部員が揃ったら簡単に自己紹介をして、ついに、まち歩きが始まりました。今日のまち歩きは、企画編集チームのメンバーであり、梅田博士ことルイスさんに舵を切ってもらいます。
なんとルイスさん、本日のまち歩きのための資料を用意してくださいました。中には縄文時代の梅田の地層など、初めて見る情報が盛りだくさん。いったいどこから見つけてきたの??という疑問がみなさんの頭の上に浮かびますが、いざ出発です。
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今回の舞台は、梅田の地下街「うめ地下」。うめ地下がオープンしたのは、なんと今から60年以上前の1963年で、オープン初日には100万人が来場したと言われています。1970年の大阪万博では初日の来場者数が約30万人と言われていますから、3倍近い人が梅田に!ちなみに先日オープンしたグラングリーン大阪はオープンの3日間で50万人が訪れたそうです。それにしたって倍近い人数が。長い歴史を持つ梅田の地下街ですが、実は元々は沼地だったのだそう。そこから埋め立てられてできた地に今足を踏みしめていると思うと、何だか不思議な感覚になります…。
ここからは、今回発見したうめ地下の見どころをピックアップしてご紹介します!
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泉の広場と赤いワンピースの女?
まずは集合場所でもあった「泉の広場」から。泉の広場はホワイティうめだ内にあるスポットで、地下街のオアシスとして、大阪市の姉妹都市であるイタリア・ミラノの建築を参考にして作られたのだそう。実は、現在の泉の広場は3代目で、初代は1970年、2代目は1981年、3代目は2002年に作られました。形は変化していますが、人々が「集う場所」であることは今も昔も変わらない、記憶に残る大切な場所です。
「そんな泉の広場には、とある怪談があることを知っていますか?」と稲川じゅ...じゃなくてルイスさんが唐突に。
というのも、かつてここに出現していたとされるのが、異様な速さで近づいてくる「赤いワンピースの女」。泉の広場では、目撃談がちらほらあったのだとかなかったのだとか...。
ルイスさんの説明の面白いのはここからです。ただ「赤いワンピースの女という怪談がありました」で終わるのではなく「ではどうしてそのような怪談が生まれたのか?」という背景まで説明してくださいました。
1990年から2000年にかけて、実は噴水の水は止められていました。そうすると水が澱むし、風水的には、水が澱めば気も澱みます。ルイスさんによると、そんな場所は異界との境界になりやすい場所なので、妖怪も出現しやすくなるのだそう。その証拠に、噴水が再び動き出した2000年以降、赤いワンピースの女の目撃情報は、ピタッと止まったのだとか。信じるか信じないかはあなた次第…
暑い夏の夜に少し冷やっとしたところで、お次は地下街の縁の下の力持ち「止水板」を見ていきましょう。
地下街への水害防止のカギとなる、止水板
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夕方に突然のスコールに見舞われた、まち歩き当日。今日のように大雨が降って雨水が地面に溜まってしまった場合、そのままだと地下街に入っていくのが普通ですが、それを防止しているのが止水板です。うめ地下への入り口には様々な止水板が設置してあるとのことで、一旦地上に出て、階段の手前から止水板を確認してみました。
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このように、止水板とひとくちに言っても、観音開き・下から引き上げる・横から閉めるなど、様々な形態の止水板があります。ちなみに、深夜24時を過ぎると、改札に遠いところから順に従業員の方が階段の出入り口を塞いでいくのだそうです。
今回まち歩きに参加した人の中には「止水板好き」の方もいらっしゃって、その方自身の推し止水板があるのだとか。意外と奥が深い止水板、ハマるのも何だか分かる気がします…この記事を見たあなたも、ぜひ止水板に注目して地下街を通ってみませんか?
ホワイティうめだの壁に出現!廃材を使ったアートオブジェ
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2019年のホワイティうめだリニューアルに伴い、泉の広場の最奥地に廃材をアップサイクルしたアートオブジェが作られました。作品名は「いのちの木」です。
目を凝らして細部までよく見てみてください。なんだか見覚えのあるパーツがありませんか?そう、吊り革や前照灯らしきパーツなど、ところどころ電車にまつわる素材が使われているのです。この作品はOsaka Metroとホワイティうめだの廃材を再利用して作られており、電車好きにはたまらない貴重なパーツを使い、躍動感のある木やかわいらしい動物を表現しています。
廃材から生み出される新しいカタチ。いのちの繋がりを感じられるアート作品ですね。
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地下街「〇〇番街」のヒミツ
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うめ地下では、「〇〇番街」という数字を含む施設の名前をよく見かけると思います。なぜ、数字が施設の名前になっているのでしょうか。実は、ただ住所の違いで付けられただけではありません。
例えば、阪急三番街や新阪急八番街の数字は、住所に由来しています。一方で、阪急17番街や阪急32番街は、ビルの階数が由来なのだそうです。それぞれ17階建、32階建のビルだったことから、その名前が付けられました。同じかと思いきや、施設によって由来がバラバラなのも面白いところですね。
また「地下街」には「公共的な地下施設」と言う定義があるため、私有地の阪急三番街などは、形式的には地下街ですが、地下街の定義には当てはまらないんだそう。うめ地下の名前にまつわるあれこれ、初知り情報が満載です…
日本で梅田だけ?川が流れる地下街!
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阪急三番街と言えば、この流れる川。地下街の中に川が流れているなんて画期的すぎます、梅田。
集客力を上げるために斬新な商業施設を作ろうと、地下街に「自然」を取り入れた結果なのだそう。川が流れる地下街というのは全国初の試みで、かつてはエスカレーター横に滝が流れていたらしく、筆者も非常に驚きました。忙しなく人が行き交う地下街において、流れる川の存在は人々の側で癒しを与えているのかもしれませんね。
あえて北を向き、人々の願いを叶える北向地蔵尊
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阪急三番街、紀伊国屋書店梅田本店の横には、お地蔵さんが祀られているのを知っていますか?
大都会の中に突然現れるお地蔵さん、気になったことがある方もいるのではないでしょうか。
このお地蔵さんは、明治26年に付近の畑より掘り出され、阪急三番街の完成とともに移設されました。仏様は南や東を向くことが多いと言われていますが、北を向くこの北向地蔵尊。お地蔵さんは、私たち民衆と同じ立場に立って同じく苦しみを背負ってくださる存在であるため、北を向いているのだとか。
しかし、北を向いているからと言ってわざわざ「北向」と呼ばないことが多いのですが、このお地蔵さんはなぜ「北向」地蔵尊と呼ばれているのでしょうか。ルイスさんが言うには、このお地蔵さんは元々地中に眠っていて、民俗学的に言うと地中は真っ暗な「黄泉の国」なのです。そんな暗闇の中で唯一頼りになるのは北極星。スターナビゲーターである北極星を頼りに私たちを導いてくれるお地蔵さんなので、「北向」と呼ばれるようになったのだそう。
また、こちらのお地蔵さんは耳が悪く、そのため裏に回って背中を叩きながら願うことができます。お地蔵さんの後ろに回ることってなかなかないので、筆者もこの機会に背中を叩きながらお願い事をしてきました。
思い出の待ち合わせスポット「ビッグマン」
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阪急大阪梅田駅2階改札から階段を下りてすぐのところにある、大型ビジョンの「ビッグマン」。
関西有数の待ち合わせスポットとも言われるここで、待ち合わせしたことのある人もいるのではないでしょうか。50年ほど続く大阪再開発の過程で様々なものが変化しても、なんとビッグマンだけは唯一変わっていないのです。ビッグマンはこれまでもこれからも、梅田を利用する人々にとって、シンボル的存在であり続けること間違いなしでしょう。
ちなみに、筆者は現在福岡に住んでいるのですが、福岡にもビッグマン的存在があるんです。西鉄天神駅前の「大画面」という大型ビジョンも、福岡の人々にとって欠かせない待ち合わせスポットなのです。大阪でも福岡でも、大型ビジョンに集まる文化は共通しているのかもしれませんね。
ドーチカの天井に描かれた天使たち
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堂島地下センター、通称ドーチカ。ドーチカの天井には、天使の絵が描かれています。上を見上げれば、中世ヨーロッパの絵画のような世界観が広がっています。この絵画は元々手書きで描かれていましたが、経年劣化のため維持することが困難になり、現在は一部しか残っていません。そもそも手書きで天井画が描かれていたことにびっくりしましたが、それを残していくとなると難しいところもあるのだろうなと思います。今後も、この天使たちはドーチカの空に居続けることができるのでしょうか。お目にかかることができる今、目に焼き付けておきたい地下街の芸術ですね。
大阪駅は梅田にできなかったかもしれない?!
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今でこそ、大阪の玄関口として凄まじい繁栄を見せる梅田ですが、大阪駅ができるまでは何もない田園地帯でした。神戸〜大阪間の鉄道敷設を検討していた明治初期、大阪駅の候補地は、実は梅田ではなく堂島でした。しかしながら、「蒸気機関車は火事になるからやめてくれ」という堂島の地域住民の猛反対や、神戸方面から京都方面へ線路を通すためにはスイッチバックが必要だという問題が生じたことが理由で、梅田が選ばれました。
現在では、「梅田ダンジョン」と呼ばれるほど迷宮のように複雑に入り組んだ構造のうめ地下ですが、こうした背景を聞くと、今日に至るまでいかに先人たちの手によって作り上げられたかがひしひしと伝わってくるような気がします…
日本一おしゃな名前の交番?ダイヤモンド地下街交番
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ディアモールの突き当たりに行くと、何やら交番らしからぬ名前の交番を発見。
その名も、「ダイヤモンド地下街交番」。なんでダイヤモンドなんだろう?
実は、ディアモールは「ダイヤモンド地区のモール」という意味なのだそう。ここの地域の形が五角形であることから、このような名前がつけられました。その名残で、地下街にある交番の名前にもダイヤモンドが入っているのです。ディアモールを訪れた際には、ぜひこの交番を確かめてみてください。くれぐれも交番にお世話になることはありませんように。
ここで、ディアモールのプチ情報を一つ。ディアモールに行くと特徴的だと感じるのが、吹き抜けになっている天井です。地下街にも関わらず、開放的な空間を演出してくれる吹き抜けの天井。元々は地下1、2階にする予定でしたが、過去に起きた静岡の地下街爆発事故を受けて、吹き抜けを作ることになったのだそうです。こうした歴史の中で作られたことに思いを馳せながらディアモールを通ってみると、また違った感覚を抱くことができるかもしれませんね。
凸凹うめ地下の不思議は一体?
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今回うめ地下を歩いてきて気になったことの一つは、あちこちに謎の小さな段差やスロープなどで高低差が付けられていたことです。移動途中で通った通路も急にやや上り坂になっているなど、凸凹だらけなのはどうして??と思うことが何度も…
実は、その不思議には理由がありました。梅田は元々天満砂州の上にできている土地なので、地盤沈下に悩まされてきた歴史が存在します。そのため、地下街を建設する際に同じ高さの天井を作ることが難しく、段差やスロープで高さを調整せざるを得なかった、という訳なのです。
他にも、西梅田駅と大阪駅第一ビルの地下1階の高低差が揃わずにうまく繋がらなかったせいで、中途半端な長さのエスカレーターが設置されてしまった例など、一見すると謎な構造になっているポイントがたくさんあるのです。
実際に歩いてみることで見えてきた数々の不思議。これらに理由があることを知ってから改めて振り返ると、梅田の地下街が、梅田独特の土地に合わせて作られてきたという歴史の結晶に触れることができたように感じます。
梅田攻略部、第1回目の活動はこれにて終了!
18時のスタートからあっという間に時間が過ぎ、もう終了時刻の20時前に。気付けば約2時間近く、歩きっぱなしでした。ふつうは疲れるものですが、なんといってもルイスさんのツアーが面白い!みなさん「もう2時間経ったの?」と驚きを隠せない様子。
最後に、部員のみなさんで、ディアモール大阪の円形広場にある銅像の前でパシャリ。実は、この広場も不思議なところで、驚くほど声が響くんです。最後まで面白い発見が止まりません
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今回の活動を通して、まずは梅田のうめ地下を攻略することができたように思います…!ルイスさん、本当にありがとうございました!
しかし、まだまだ見どころが尽きないのが梅田です。今後も、梅田攻略部を含む梅田の!ローカルメディア企画編集チームは、梅田のまちの面白さや魅力を発見し、掘り下げて、メディアを通じてみなさんに楽しくお届けします。
次回の企画編集会議は、梅田蔦屋書店の店長をお呼びして、どなたでも参加できる開催です!
そして月に1度、企画編集会議を重ねている「梅田の!ローカルメディア企画編集チーム」ですが、なんと次回の開催より、興味のある方ならどなたでも参加できるオープンな会議へとアップデートすることに!
次回会議は、11/6(水)19:00~21:00 @TSUTAYA BOOKSTORE イノゲート大阪 SHARE LOUNGE にて開催です。前半はゲストの話題提供から始まり、後半は梅田を舞台にしたローカルメディア制作について、参加したメンバーと共に企画を煮詰めていきます。
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そしてなんと、今回のゲストは梅田蔦屋書店の店長でもあり、出版社としての活動や『本屋のミライとカタチ』(PHP研究所)などの著書でも知られる、北田 博充 (きただ ひろみつ)さんをお招きしての開催です!詳細・申し込みについては下記のリンクよりご覧くださいませ!たくさんの方のご参加をお待ちしております!
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