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元カノが突然家族になったんですが!? #9
〇「なんて清々しい朝なんだ」
史緒里のライブに参加した次の日。
今日は俺も史緒里も休みなので朝はゆっくり。
いっぱい寝れたし、天気も良いし、良い朝だなぁ
〇「史緒里おはよう」
史「〇〇起きるの遅いよ笑」
〇「ごめんって笑なんか久しぶり?」
史「何言ってるの?昨日も会ってるでしょ
頭でも打った?」
〇「んーごめん久々にあった気がして笑」
史「変なの笑」
〇「ねぇ史緒里。」
史「ん?」
〇「今日どっか行こっか」
史「え!行きたい!」
〇「映画でも観にいく?」
史「いいね!私観たいのあったんだ〜」
〇「よし!じゃあ決まり!準備しよっか」
史「うん!」
久々に史緒里と出かけるな…
史「デートね!」
あ、デートらしいです…
なんて幸せな朝なんだ。
可愛い彼女…いや、可愛い姉と一緒に暮らして休日はデート。
我ながら怖いくらい運がいいな…
でも、そんな幸せな時間は一本の着信によって終わりを告げた。
ヴーヴーヴー…
史「〇〇〜!電話鳴ってるよ〜!」
〇「あーおっけー今行くー!」
〇「もしもし?……え…」
史「〇〇?どうしたの?」
『お母様が事故に遭いました』
当たり前のように唐突だった。
忘れていたんだ。
こんな幸せな時間がいつまでも続くものだと思い込んでいたんだ。
気づけば俺は家を飛び出して病院へと向かっていた。
〇「母さん!!」
医者「息子さんですか?」
〇「はい、母さんは!?」
医「一命は取り留めました。今は病室で寝ています」
〇「早く!早く病室に!!」
医「こちらです。」
そこにいたのは酸素マスクを付け、沢山の管と沢山の機械に囲まれて眠る母の姿だった。
〇「母さん…!」
医「お母様の入院の手続き等ございますのでこちらへ」
〇「あ、はい…」
その後は何も考えられなかった。
ぼんやりとした意識の中で何かしらの書類を記入し、病院を出たときにはとっくに日は沈んでいた。
〇「…」
家に帰る気にもならない。
雨も降り始めた。
このまま母さんが起きなかったらどうなるんだろう…
俺独り残して行かないでくれよ…
思えばあの時もそうだった。
朧げに覚えている記憶。
あの日は6歳の誕生日だった。
母さんと父さんの声で目が覚めた朝
父さんに買ってもらった新しいランドセルを眺めながら母さんと父さんの声に耳を傾ける。
どうやらまた喧嘩をしているようだ。
でもこの日は違った。
タイミングが良くなかった。
ちょうどその前日父さんは会社で大きなミスをしてしまっていたらしくすこぶる機嫌が悪かった。
どんどん大きくなる二人の声。
俺は怖くなって近くにあった大きなぬいぐるみと抱き合っていた。
「大丈夫。〇〇は大丈夫だから」
どこかからそんな声が聞こえた気がした。
そのまま父親は出て行き、帰ってくることはなかった。
その時俺は父さんに置いて行かれたという悲しみで暫く母親以外とは話せなかった。
母さん…母さんまでいなくなったら…俺どうしたらいいんだよ…
自分の家族が1人、また1人と消えていくような恐怖が全身を襲った。
歩けない。
朝から何も食べていない。
体が寒い。
服に雨が染み込んでいく。
体が重い。
あぁ…もうこのままいなくなれたら…
いなくなっちゃおうかな
なんて考えが頭を埋め尽くす。
?「〇〇くん!?」
どこかから声が聞こえる。
なんだろう。どこか懐かしい声。
走馬灯ってこんな感じかな…
そんなことを考えながら俺は意識を手放した。
to be continued…