【三国志を語りたい】梁冀 〜権力で宮廷を混沌と化した悪漢〜 vol.1
権力をほしいままにして、恐怖政治が始まることはこの中華では往々にしてあります。
その中でも梁冀の行いは凄まじいものでした。
この梁冀という男は順帝の后の一族でいわゆる外戚です。
父の梁商は清廉潔白に政治を進めてきた、その裏に隠れて毒牙を研ぎ澄ましたかのように次代を狙っていました。
梁商は彼の本性に気づかず、また、それを咎める人がいれば奸計を使って追い落とすのがこの梁冀のいやらしいところでした。
順帝、梁商が善政を行い、宮廷は宦官、外戚、官僚のバランスの取れた政治体制を維持したのは束の間、梁商が死に、大将軍という地位を梁冀が継承したことで後漢は谷底への下り始めます。
そんな梁冀の悪辣さを示すエピソードが質帝の毒殺です。
順帝が崩御して、その子の沖帝もすぐに崩御すると、幼い質帝が即位します。
李固という梁冀の本性を知る官僚は、幼い質帝の即位より、青年の帝を迎えるべきと異を唱えたようですが、梁冀とその一族の決断が強かったのか10代目には質帝が即位します。
しかし、この質帝は子供ながらものの判断ができたのか、梁冀を危険視します。
順帝でも気づけなかった異様さを見抜くあたりに聡明さがあったと思われます。(順帝も梁商の息子というバイアスがあったことも否めません。)
ただ、質帝は幼過ぎました。
黙っていられなかったのか、こともあろうに公衆の面前で梁冀をけなしてしまうのでした。
梁冀の怒りが凄まじかったのは言うまでもなくありません。
ここで、梁冀も質帝を危険視して早めに手を打ったのか、それとも梁冀自身の精神がまだ子供だったのか不明ですが、時を置かずして、質帝の食べ物に毒を混入させ、殺してしまうのでした。
恐ろしい・・・
梁冀が殺したという事実がちゃんと後世に伝わっているくらい動機、証拠がありながらもこの男を咎められない現実は恐怖です。
この梁冀を掘り下げる上で語るべき人物に李固という者がいます。
思慮深く、正義を貫く李固はこの時代の白の為政者であれば、梁冀は黒の存在でしょう。
ということで、次回からはこの2人のエピソードを語っていきたいと思います。
なぜ、こんなに面白いのか?読めばわかる。
①光武帝→②明帝→③章帝→④和帝→⑤殤帝→⑥安帝→⑦少帝→⑧順帝→⑨沖帝→⑩質帝→11桓帝→12霊帝→13少帝→14献帝
三国志
宮城谷昌光
文集文庫