ベーシックインカムを民間主導にしてはいけない理由
イケダハヤトさんがベーシックインカム(BI)を民間主導でやるという案を、書籍からの引用で紹介しています。書籍引用なので、孫引きになりますが、こちらでも引用しておきます。
書籍『世界で突き抜ける』からの引用になります。
竹中 私は頑張って稼いでる人が報われるような国になってほしいと思うと同時に、今の新しいテクノロジーは、格差をつくるテクノロジーになる可能性があると思います。
(略)だから今のうちに、この社会の本格的なセーフティネットをちゃんとつくったほうがいいと思う。みんながそんなにやっかまないで、ちゃんと安心して暮らしていけるようなセーフティネットは、政治の責任でつくったほうがいいと思ってる。
そしてそれは実現できるんですよ。なぜならマイナンバーできたでしょう。マイナンバーがあると、負の所得税といわれる給付付き税額控除が可能になる。これは1999年に労働党のブレア政権が採用して、翌年、翌々年、フランスやオランダでも採用されている、究極のセーフティネットです。これができるチャンスがあるんだから。安倍内閣は、これを実現させたら歴史に名を残すと思いますよ。
佐藤 あとは、ベーシックインカムという手もありますよね。政府のベーシックインカムじゃなくて、民間企業によるベーシックインカムって私はありかなと思っています。
結局これからのマーケティング活動って、どんどん安くできるようになるから、安売りの競争になっていくじゃないですか。となると、複数のバリューチェーンを総合して利益を出す会社が有利ですよね。
こっちで利益を出して、そのぶんこっちを安くするというようにできるから。となると、コングロマリットみたいにいろんなサービスを提供していく会社は、いろんなものを無料にできるはずなんですね。
だからテクノロジーによる格差の競争も行われるんだけれども、ものすごく低価格になっていくと、結果的に企業は競争していって、ものすごく安くいい商品を消費者に届けていくと、働いて得る収入が低くても、けっこう人間は生活できるようになる。
民間主導によるベーシックインカムは、絶対に避けねばならないと考えています。
理由は簡単。民間企業の目的は利益の創出です。であれば、BI支給者がその利益に反することを行ったら、どうなるか?
たとえば強烈な批判。食品会社として、その会社の商品をまずいとか、環境に悪いとか批判しまくる人に、果たしてBIを支給し続けるでしょうか?
ですがこれが政府なら、どんなに福祉の受給者が政府批判をしても、それを理由として福祉が停止されることなどありえないし、あってはいけないことです。どんなに生活保護受給者が「日本クソ、日本死ね!」と言ったところで、支給が停止されるなどあってはいけません。
これは、「主権者」の違いによります。
民主主義国家であれば、主権者はあくまでも国民一人ひとりです。その主権の度合も、一人一票。金持ちだから何票ももらえるとかはありません。強者と弱者が同等の権利を持つ主権者であるというのが、民主主義国家の大原則です。
ですが企業は違う。主権というようなものを持つのは、オーナーであり、株主です。お客さんは客であり、主権者ではありません。株主も、一人一票ではなく保有株数に応じてはっきりと権利行使の力の強さが変わります。
民間企業がBIを実施した場合、受給者は常に、企業を怒らせないようにしなければいけないとビクビクした日々を送らねばいけなくなります。
また、些細な規約違反にも気をつけねばいけなくなります。検索するとわかりますが、googleやamazonのアカウントを、本人が把握してない規約違反などで停止されたり、剥奪される事例があります。検索すると思いの外出てきますので、よければ調べてみてください。
googleアカウントを停止させられると、androidが使えなくなりますよね? スマホは今や生活インフラそのものと言ってもいい。それがいきなり停止させられたら?
kindleでたくさん本を買っていた人が、停止させられていきなり全部読めなくなったなんて話もあります。これも、電子書籍の購入が「所有権」ではなく「閲覧権」にすぎないがゆえの問題ですね。
ましてこれが、BIなら? 「あなたは規約違反を犯したのでBIを停止します。弊社のコミュニティから明日までに出てください」と言われたら? エデンの園を追い出されるアダムとイブみたいなものですよ。
では、民主主義国家には規約違反はないのか? あります。その場合は刑務所に収監し、矯正を行います。でも衣食住を奪われることはありません。
これが民間企業だったら? 規約違反を犯したものを、私設刑務所に入れるのですか? そんな強権も、オーナーと株主が権利を持つ企業が決めるんですか? それに同意したものは企業が運営するBIタウンに入居できるけど、同意しないとダメ?
BIのような生存権を守るための仕組みを民間企業に任せるなどというのは、極めて危険であると同時に、絶対にやってはいけないことであると考えます。あくまでも、どんな弱者でも平等な権利を持つ民主主義国家の概念を最上位にする。
BIをあくまでも生存権を守るための権利とする。企業や金持ち、強者からの慈悲や恩恵にしない。これはとても大事なことと、自分は考えます。
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