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[紅(くれない)の盾]| 青ブラ文学部

#青ブラ文学部
#紅一点の魔物
山根あきらさんの企画に参加させてもらいます

(653字)

私の産まれるずっとずっと前の先祖の話。

この国の戦士は、戦場で白い鎧に身を包むのが習わしだった。
ある時、美しい赤毛の馬に跨り、真っ赤な鎧に長い朱槍をタズサえた女戦士が現れた。
その女戦士の働きぶりたるや、一騎当千、鬼神の如し。「あの女目立ちやがって」と陰口を叩いていた男どもを一気に黙らせてしまった。
まさに紅一点。クレナイ姫の異名を持つようになった女戦士は「戦場の魔物」と呼ばれ、いつの間にか大将となり、白い鎧の男たちが周りを守り固めるようになっていた。

「みんな、私から離れろ。固まるな。赤い鎧の私の首を敵は狙っているのだ。」
「そのご命令には承服しかねます。大将を守るのが我らの役目です。」

白い戦士たちの心配もどこ吹く風と、クレナイ姫は戦場を駆け巡った。

白い戦士たちを従える紅一点。
─それがこの国の国旗のモチーフとなった。



クレナイ姫万歳!」
伝説のクレナイ姫の名前を呼ぶ大歓声が沸き起こる。
クレナイ姫を彷彿とさせる真っ赤な出で立ちで、この国初の女帝が民衆の前に姿を見せた。
今日から私がこの国のクレナイ姫となる。

─ヒュッ!

風を切る音と同時に胸に焼きごてを当てられたような熱い痛みが走った。

「姫!しっかりなされ!誰か!この矢をどうにか!医者を呼べ!」

遠くに聞こえる皆の声を聞きながら、白い戦士の中へ落ちていく。
これは幻か。

クレナイ姫よ、私の国をお守りください。

(終)