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チェルシー×フルハム 〜プレミアの洗礼〜

今冬移籍市場の主役は紛れもなく、チェルシーだった。

オーナー交代後歴史上類を見ない大きな投資を行い、選手を買い漁った。

最終日に〆で英国市場最高金額で、ワールドカップチャンピオンのエンソ・フェルナンデスを購入し、有終の美を飾った。

賛否両論あるだろう。

多額な投資はFFPに引っかかる、市場を乱している、各方面から様々な声が聞かれるがオーナー彼等はアメリカのスポーツビジネスの第一線で結果を残してきたと言われる人物。剛腕と称されるが緻密に練りぬられた戦略が垣間見える。ルールの範囲内で実施しており、FFP違反してもたかが数千万ユーロの罰金で済んでしまう今のルールも彼らの頭の中にうっすらあるのかもしれない。

そんな彼らは冬の移籍市場閉幕後初の公式戦をホームスタンフォード・ブリッジにフルハムを迎えた一戦を振り返ろう。

チェルシー×フルハム~プレミアの洗礼~

スタンフォード・ブリッジに乗り込むフルハムはマルコ・シウバに率いられ7位と大健闘。

それもそのはず。

彼等の守備攻撃共に整備されており、選手たちの意思統一がなされたとても良いチームだった。ホームチームを90分間苦しめる事になった。プレミアの7位がこれほどのゲームを魅せるのだ。とんでもない。

エンソ・フェルナンデス
ミハイロ・ムドリク

両選手が初スタメンを飾り、すでに事実の通り指揮者であったジョルジーニョの姿はない。

想像以上に彼の不在を嘆くことになるかもしれない

▻ 前半

2トップの重戦車ミトロビッチとペレイラがアンカーのエンソを消しながら2CBにプレスをかけるを徹底。それが90分も続いた。彼らの運動量とインテンシティーの高さは、プレミア初舞台のエンソも戸惑いを感じずには得られなかっただろう。


ただし、ここのプレスはある程度想定されていたにも関わらず、ポッターは修正できない。

ジョルジーニョがいれば…そんなことを思わせた前半だった。

チェルシーはビルドアップに苦労し、エンソが消された。

堪らずマウント、ギャラガーが居りてくるものの、そこにはパリーニャとハリソン・リードが自由を許さない。

門番  ジョアン・パリーニャ


移動型指揮者 ハリソン・リード


彼等は群雄割拠のプレミアリーグの中においても、非常に能力が高く何より補完性に優れている私の好きなコンビプレイヤーだ。

両者ともに90分インテンシティーが落ちることなく、パリーニャはデュエルで勝ち、リードは正確な長短を織り交ぜたパスで攻撃をリードする。マルコ・シウバの志すアグレッシブで前から潰すタイルを理解し、体現するのは彼等だ。

そこに重戦車 ミトロビッチが圧巻のポストプレイを魅せ、ペレイラが攻撃のアクセントを加える。両ウイングにも強烈な選手達、デコードバリードとウイリアンは走力に優れサイドを駆け上がりミトロビッチ目掛けてクロスを放り込む。5分のボールなら大抵な相手なら打ち負かすミトロビッチを最大限活かす戦術。

クロスの放り込む作戦だけだと思われがちだがビルドアップでもチェルシーよりは工夫が見られた。ポストプレイからのフリック、リードがどこでもボールを持ってくれる事で数的優位を作り出してからのチャンス創出と、そこに意図がしっかり見て取れた。

監督のビジョンに対して、選手がしっかりピッチで表現している。

そして何より90分激しく戦い続ける姿は、人の心を動かす。たとえこの試合負けていたとしても数千人のアウエイサポーターは胸を張ってスタンフォード・ブリッジを後にしただろう。

彼らの今シーズンの活躍は決してまぐれではない。

レジェンド スコット・パーカーが率いていた彼らの面影はもうない。

ボールを保持するものの攻略の糸口を掴めないチェルシーだが、個人の能力ではやはり一枚上手。

エンソもオンザボールでのパスは一級品だったし、何よりこのチームにはカイ・ハヴァーツがいる。


フルハムはどうしても前からプレスをかけている為、前がかかりになる。そこを逆に利用しチームがビルドアップを上手く出来なくたって、一瞬のスキを突いた裏のスペースへ抜群の走り込みを何度も見せる。

一発で決定機に持っていけるチェルシーの選手たちの“個の力”は流石だろう。特に前述のハヴァーツはやはり“化け物”。オンザボール、オフザボール両方高い次元でこなせて得点力もある。彼はスペシャル。

未来のチェルシーはこの男をなんとしてでも引き止めるべきだろう。

彼はチェルシー2030年計画には賛同しないかもしれない。彼は常に勝ちたいのだ。

まさに彼の表情、プレイからそういったものがヒシヒシと伝わるのは私だけではないだろう。

前半はフルハムが戦術的にしっかりハメる事が出来、チェルシーはビルドアップに苦労。

後半はポッターの修正とシウバのチームのインテンシティーがもつのか?が鍵となる。

▻ 後半

ポッターは修正を加える。

ククレヤをエンソの近くに置き、偽サイドバックを実施。

インテンシティーが前半よりも流石に下がる事でボールが回るようになるが、それでも両ワイドの選手達の位置取りが中に入り、リース・ジェームズも低い位置で張ったままで、スムーズにボールが回ることなかった。もう少しポジションニングを修正するべきだろう。チアゴ・シウバが少し苦しそうなのが印象的だった。それもそう。ピッチ上の指揮官 ジョルジーニョはもういない。彼はノースロンドンのチームへ飛び立った。

エンソはオンザボールは確かに良い選手だが、今の彼こそジョルジーニョが必要だったように感じる。もしかしたら一番ポッターがそう感じているかもしれない。

チェルシーがチャンスを少しずつ作り始めるが、それでもマルコ・シウバのチームは闘い続ける。

彼らのチームが交代で選手がピッチを後にする時は、皆が戦い果てた姿となっていた。

身体を投げ出してデュエルを続けるからこそ皆ユニフォームが汚れ、肩で息をするようにピッチを出る。7位のチームがアウエイでこのレベルで試合をされれば、上位陣は困ったものだ。一瞬の一息すら許されない。戦い方からして選手層で問題がなり、疲労が蓄積するシーズン後半は難しいだろうが今後の彼等を応援したい。ロンドンのライバルチームだがそんなことを思わせてくれた。


フルハムの健闘がヒカリ、両者チャンスはあるものの決めきれずスコアレスドロー。

スコアレスドローで試合は終わった。

試行錯誤のグラハム・ポッター

闘いきったマルコ・シウバ

後半から出てきたラヒーム・スターリングは相変わらずシティーを出てから緩慢なプレスをしている姿を見ても、ポッターは今後も頭を悩ませそうだ。

この試合を見て上層部は何を思うだろう。

今後のチェルシーを見ていく際には、“我慢”が求められる。

良いチームが出来るには時間がかかる。アルテタは3年がかかった。ただし、彼はこれほど短い間で大きな投資、援護射撃は行われていない。それを考慮すれば、ポッターに与えられた時間はアルテタのものよりも長いものではないだろう。

選手獲得だけではなく、監督の獲得を検討していてもなんら不思議ではない。

ありえない話ではあるが、ありえない事を彼はここ1か月見事やって見せたのだ。


剛腕 
ボーリー、エグバリは何をしでかすかわからない

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