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お局図鑑(やす代の場合)

◎はじめに◎

これは本当のことなので、謙遜なしで言うがわたしは仕事ができる。
敏感な性格も手伝って、今誰が何を欲しているかも察知できるので、痒いところに手が届く的できる奴だ。仕事外では、ひとつのことしかできないポンコツ人間だけど、なぜか仕事となると脳みそが覚醒され、複数のことを一気に処理できるスーパーすごい人になる。
(なぜなのかは解明されていない)

「あいつ、口ばっかで全然進んでねーなー」
「あいつ、最近ミス連発してるな。家でなんかあったんか?」
(口悪いのはご愛敬)

なんてことを、横目で見ながら思いつつ
でも、半分の脳みそは常に次やるべきことを考えていて手は『絶対に』止まらない。この時の脳波と人を野次ってる時の顔どうなってるんだろ、きっと針は振り切れていて、顔はドブスだろうな。


そんなわたしはこれまで5回ほど転職をしている。
会社は変われど、職種は毎回事務職なので仕事内容にさほど変わりはない。

❛❜変わらないこと❛❜といえば、どこに行ってもちゃんとお局様が鎮座しているということ。

お局様ってよくよく考えるとなんかすごい言葉だな。
御局、おつぼね、OTSUBONE、オツボネ、、、、。

仕事は抜かりなくやってきたけど、この人種だけは扱いきれなかった。
ひねくれた視点を持って、斜め上から見てきた
人生の先輩ではあるけど、あんまり尊敬できない人たち
集めてみたら、この『お局図鑑』ができました。

わたしが転々としてきたある意味歴史上の人物たちを
とくとご覧あれー。

『お局図鑑』~はじめに~

アイドル好きの納豆お局(やす代)

◎特徴◎
・当時40歳くらい
・独身、同棲している彼氏アリ
・鼻の横に大きなホクロあり
・制服の襟の黒ずみ
・タバコ吸う


この人は、今まで会った中でTHEお局様だったな。
入社した当日から、その独特な雰囲気でなにかを察知していたわたし。
退職予定の人から引き継ぎを受けていたので、そのすごみは薄まってはいたがその方が辞めて、事務所に2人きりになるとすぐにわかった。

とにかく激しい。
キーボードがバチンバチン(特にエンターキー)、電卓もバチンバチン(特にイコール)、電話の受話器もバウンドしている。
常に感情が外に排出されている。
それを所長はじめみんな黙認している。

メーカーへの物言いが強く
「か・な・ら・ずお願いしますね!ガチャ!(受話器を置く音)」
言ってることと、言ってるテンションが乖離かいりしている。
彼女の後に電話をする際にはいつも
「うちのやす代がすいません。」と言って回っていた。
実はここだけの話、メーカーサイドにわたしの母が働いていて、やっぱり彼女のことは有名だったそう。

やす代の苗字は、アブさんという。
メーカーに自分の名前を伝える時には必ず
「安全の安に、武士の武で、安武です!」と言っていて
「出たー!お決まりのやつ!
てか、安全な武士ってなんだよ。武士なめんなよ。」
と毎回心の中でツッコんでいたわたし。

月末や、決算の時期になると、彼女のイライラは頂点に達し、机の引き出しの開け閉めの音も加わり、しーんと静まり返った事務所で、わたしは仕事などそっちのけで彼女の機嫌のレベルを計ることに注力していた。(仕事せえよ)

わたしが買ってきて名前を書いていたヨーグルトを、トイレから戻った時にやす代が飲んでいた時はさすがに引いた。
「それ、わたしのですよね?」
え?そう?という顔をしていたのが信じられない。
買ってないんだからわかるだろうよ!
名前書いてるのにプリン食べちゃうお父さんみたいなことやってんじゃないよ!
名前書く意味ないじゃん。リアルジャイアンじゃないか。
これが、白昼堂々ヨーグルト強奪事件。現行犯逮捕。

ある時には、出社してきて車から事務所に入るまでに、鳥にフンを落とされ黒いタイツが汚れて、慌ててコンビニで買ってきたら、『トレンカ』というやつで一日足がスースーすると言っていた。

ごめんやけど、その時はさすがに神様って見てるんだなと思った。
フン落とされた瞬間から目撃していて
まさか大声で笑うこともできず、
下を向いて福笑いのエロ目みたいな顔で必死に堪えていたんだよ、わたし。笑いたいけど笑えない、こっちの身にもなってくれよ。

近くにいた営業さんを呼び出し、コンビニまで運転しろと命令して、ダッシュで買ったらまさかのトレンカ。
やっぱりさ、日頃の行いだと思うよ。そうやって人を顎で使ってさ、お天道様もやっぱり見てんのよ。悔い改めるチャンスはたくさん転がってるよ、見失うなや。

基本、事務所には大お局様とわたしだけなので、会議でみんないない日なんて「大丈夫?」と営業さんから電話がかかってくるとすぐに「誰から?」と聞かれてこっちが痛い目見るので、もう余計なことはしてくれるな、ただ早よ帰って来いと思っていた。

担当の、しかも割と仲の良い営業さんがいるとお局様の機嫌はまぁまぁよかった。機嫌が良い時には猫なで声で「〇〇さぁ~ん」って言うけど、機嫌が悪い時は「はぁ?で?」と、こんな感じ。
営業さんは、担当の事務員さんに嫌われたら発注入れてもらえないから、お菓子買ってきたり色々気を遣って大変そうだったな。みんなおつかれ様。

結局、わたしは入社して1ヶ月で辞意を伝えたけど、なかなか受け入れてもらえなくって、『もう1人いれるからそれで堪忍しておくれ作戦』で入社した人もお局様と対等にやりあえる人で、ただお局が2人になっただけで、変わらずずっと辞めたくって社長にお願いしまくって辞められたのは一年半後のことだった。

辞めたい理由はお局様の存在もひとつではあるけれど、わたしは逃げた形で辞めたので、やっぱり次の職場にもお局様はいる訳で。

わたしのお局ジャーニーはまだまだ続く。

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