予備試験対策反省会:各科目編

こんにちは。からかさです。
前回の全科目共通編に引き続き、今回は予備試験においてやって良かったこと、やれば良かったことについて、各科目編と題して具体的な教材に言及していきたいと思います(問題集の周回など論証集の暗記などは全科目共通なので前回に譲っています)。

また、振り返るにあたり科目単位で「やらなくて良かったこと」が基本的に思いつかなかったので、「やらなくて良かったこと」は基本的に割愛し、その分「やって良かったこと」と「やれば良かったこと」に分けてみました。
それなりに長くなってしまったので、気になった部分だけのかじり読みでも良いのでぜひどうぞ。
また、これを公開した時点では令和6年の予備論文まであと30日弱となっていますが、論文を受験される方は原則としてこれを見て新しく教材を追加するのはやめておいた方が無難です。(ちなみに私自身は新しい教材の追加は原則否定例外条件付肯定派です)



憲法

論文B~C

やって良かったこと

  1. 起案

憲法は答案の形式に慣れると同時に、いかに問題文の事情を拾い切るかが勝負な部分があります。なので、実際に起案してそれぞれの感覚を身につける・自分なりの工夫を編み出すことが特に重要だと感じています。

やれば良かったこと

  1. 総まくり論証集(カトゼミ)
    総まくり論証集は司法試験の対策で使い始めました。審査基準の定立までの考え方や基準ごとの運用の方法、そして判例の要点など、受験生が現実に書ける答案を目指す上で必要な情報が詰まっています。
    予備の段階から取り組んでいればなあと後悔しました…。
    令和元年以降、予備試験憲法では特定の判例を念頭においた出題が目立つので、判例をその使い方も含めてしっかり理解しておくべきだと思います。


行政法

予備論文A〜B

やって良かったこと

  1. 起案

  2. 行政法解釈の技法

行政法は、頻出分野が3つ(処分性、原告適格、裁量)固まっており、それぞれの処理手順を確立する必要性及び、現場での個別法の取り扱いに慣れる必要性が高いので起案は必須だと思います。
個人的には訴訟選択や上記3大頻出分野における考え方や概念の整理において『行政法解釈の技法』は非常に役に立ちました。

ちなみに基本書は学部の講義レジュメを基本にしつつ、適宜大橋行政法と基本行政法で補っていました。どちらもケースメソッドを用いていて、具体的に問題になる場面や制度の建てつけを踏まえて理解できるので良かったです。
特に大橋行政法は2冊に分かれている分、記述が丁寧で辞書として重宝しました。


やれば良かったこと

  1. 基本行政法判例演習

予備論文後〜東大ロー入試の段階で使いました。掲載判例自体は多くないものの、重要判例のロジックをしっかり追うことができ、論証として使っていた判例への理解が高まりました。
令和5年の予備試験のモデルになったであろう判例がまんま載っていたのもあり、やっておけば良かったなあ…と強く感じています。


民法

予備論文D〜E

やって良かったこと

  1. 判例六法への一元化(短答)

短答の一元化教材を判例六法にしていたことで、条文の位置付けと関連する判例をも併せて体系的に理解することにつながったと思います。民法はとても出題範囲が広い一方で、特に私自身が民法に時間を割けなかった(割かなかった)ことも相まって、初学者段階以降で体系的なインプットができたのは良かったです。

やれば良かったこと

  1. 要件事実

  2. 改正債権法の補強

民法の答案の書き方(への理解度)には要件事実の理解度がかなり寄与していると感じます。実際口述の後司法試験の過去問を解く際に自分の答案の構成がやりやすくなったのを感じました。しかし私は予備論文時点であまり要件事実を詰めず…。やっておけばよかったです。
また、これは改正債権法施行後限定の傾向ですが、予備(場合によっては司法でも)改正債権法の理解が問われる問題の出題が続いています。なので、以下の『事例でおさえる民法』をやっておけばよかったと感じています。私は大学の図書館で借りたもののほぼ読めずに予備論文に特攻しました。この傾向がいつまで続くかわかりませんが、参考までに。


商法

予備論文A〜B

やって良かったこと

  1. Law Practice

  2. 田中会社法

  3. 学部のレジュメ

百選判例を中心に重要分野を網羅的に取り扱ってくれているほか、ロープラは問題の所在や事案の解決について記述してくれているので、とても助かりました。
基本書は田中会社法を使っていました。個人的にはいっぱい情報量がある基本書を辞書がわりに使うことがほとんどだったので、コラムも含めて網羅性の高いこちらの基本書が良かったです。
緑色の第3版を買った約8ヶ月後にピカ◯ュウカラーの第4版が出ました。タイミング…
学部のレジュメは、基本概念の深掘りや、判例の解説を信頼のおける1人の先生が行なってくださったということで、田中会社法と合わせて参照していました。気になる方は『会社法判例の読み方』を見てみてください。


やれば良かったこと

特になし
割とロープラの網羅性と田中会社法の記述の厚さに信頼を置いていたので、特に後悔はありません。強いて言えば、周りは会社法事例演習教材を使っていたので、余裕がありかつ解答例などが手に入るのであればやってみても良かったとは思います。


民事訴訟法

予備論文A〜B

やって良かったこと

  1. Law Practice

  2. Legal Quest

民訴法は百選の学習が大事だよ〜と散々言われました。しかし個人的には百選の通読が苦痛だったので、問題形式で百選掲載判例の問題意識やその論点における学説の対立、具体的事例における当てはめについて網羅的に学ぶことができたのが非常に良かったです。
基本書としてはリークエを使いました。買った半年後に新版が出ましたその2。なんでや。

やれば良かったこと

特になし
民訴法もリークエの記載も網羅性に欠けるところはなかったので、これらに加えて何かに手を出す必要性は感じませんでした。もっとも、リークエは有力説・少数説への記載も多い分若干混乱しやすいかもしれないです。


(予備対策としては)やらなくて良かったこと

  1. 事例で考える民事訴訟法

令和5年度の出題がそうだっただけという可能性もありますが、予備試験ではマイナーな論点も含めて幅広く聞いてくる一方で、司法試験ほど誘導が丁寧ではありません。なので、基本的な概念や重要論点は基礎基本から押さえた上で、マイナー論点も当たりをつけられるようになっている必要性が司法試験に対して高いと思います(私見。他の科目もそうだとと言われればそうかもしれないですが)。
一方で、本書は重要分野に絞って学説の流れや対立も含め詳しく書いてあります(事例は28個)。ゆえに、少なくとも予備試験対策としてこれだけに頼るのはやや心許ないです。とはいえ、かなり記述が詳しいので弁論主義、自白、既判力など頻出分野に限って+αとしてやってみるのは良いのかもしれません。
個人的には司法試験との関係では非常に重宝しました。


刑法

予備論文B〜C

やって良かったこと

  1. 基本刑法

言わずもがな、司法試験受験生にとってのバイブルだと思います。記載の量や事例の処理方法など、どれをとってもかゆいところへ手が届くありがたさですね(妄信)。自分は短答〜口述まで、論証集とは別に一元化教材(それは一元化というのか?)としてずっと書き込みやマーカー引きをしながら使っていました。相棒です。


やれば良かったこと

  1. 悩みどころ/応用刑法

  2. 刑法事例演習教材

1は予備論文後または司法試験対策後に辞書的に使っていました。確かに通読するのはオーバースペック感はあります。しかし、法的因果関係における考慮要素についての整理や、百選に載っている重要判例の説明などがどちらも秀逸です。自分が問題を解いていてわからなかった部分の理論の展開・事案への適用の説明が腑に落ちる感覚がありました。応用刑法は司法試験対策で図書館で借りて一部辞書的に読んだのですが、悩みどころ以上に司法試験向きに感じました。

2は買ったのち予備論文後〜司法試験対策で1/4くらいやりました。解説が若干薄いので、解答例と上記1のテキストは欲しいですね。問題意識が予備・司法のそれと共通する部分も多く、以前はタネ本と呼ばれてたらしいです。現在でもその傾向が弱まったとはいえ健在だと思います。


刑事訴訟法

予備論文A〜B

やって良かったこと

  1. 学部のレジュメ(or川出判例講座+事例演習刑事訴訟法)

東大生ならぜっっったいに学部またはローの刑訴の授業はきちんと受けた方が良いです(私見)。判例の分析や現在の学説の動向までしっかり押さえてくださっているので、レジュメの内容を理解しておくと試験にめちゃくちゃ活きます。
ちなみに、事例演習刑事訴訟法や川出判例講座でもかなり共通した内容を扱っているので、講義がわからなかった部分は図書館でこれらを借りて復習していました。


やれば良かったこと

特にはないですかね…レジュメが相当深かったので…。


実務基礎

予備論文A〜B

やって良かったこと

  1. 事実認定問題の型の用意

あくまで伝聞ですが、1年先に予備に受かった大学同期から実務基礎の事実認定問題がかなり重要だと聞いており、重点的に対策をしておこうと決めました。そこで、過去問の参考答案やインターネットから拾った型集をまとめて、民事・刑事それぞれで事実認定問題のパターンごとに記述の流れをまとめた「型」を用意していました。
令和5年度はそこまで捻った形式で事実認定をさせてきたわけではないと思いますが、事前に流れを押さえておくことで本番中に構成で悩む時間を減らせるのでおすすめです。

やれば良かったこと

  1. 要件事実

民法でもちらっと書きましたが、私は予備論文段階で要件事実をしっかり詰めきれていませんでした。どれくらいかというと過去問・答練で出てきたものしか押さえていないくらい…。幸い令和5年の問題では爆死は避けましたが、要件事実は民事実務基礎において他の受験生が確実に点をとってくる部分だと予想されるので、しっかりやっておくことをおすすめします。
私はこのせいで後の口述でめちゃくちゃ対策に追われて精神状態悪化していました泣

選択科目(倒産法)

予備論文B〜C

やって良かったこと

特にないです。というのも過去問を8年分くらい+論証で手一杯だったためですね。

やれば良かったこと

  1. 判例百選

  2. アガルート一問一答

倒産法は特に条文検索能力が何より重要で、さらに百選掲載判例の知識が求められる科目だと感じています。なので、百選の判例の事実と判旨、できれば解説まで(特に重要判例)は読み込んでおき、どの条文のどの文言が問題になったのか、又はどの制度との関係で問題が生じているのかを把握しておく必要があったと思います(なお気づいたのは司法試験後)。

また、2もその条文の関係や要件論、そして制度を体系的に理解するのに役に立つと感じました。自分は司法試験前に使用し、潰し切る前に本番を迎えてしまいましたが、これを完璧にしておけば今年の条文問題ももっとできたのではなかったのかなあと思います。


終わりに

ここまでお読みいただきありがとうございました。
運よく合格したものの、完璧とは程遠い予備試験対策を行なっていたことが伺えると思います。これをお読みになった方は、ぜひ私の「あれやればよかった」を反面教師サンプルそのnとして、対策を進めていただければと思います。
少しでも参考になれば幸いです。
それではまた。

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