ペンパ同好会で作ったオリジナルパズルの歴史
こんにちは。うまや天国です。
普段はパズルを解いたり作ったりしています。
この記事はペンシルパズルI Advent Calendar 2020の12月3日枠です。
0. どういうことですか
題名の通り、ここでは自分が作ったオリジナルパズル(長いので以下オリパ)について、内容を紹介したり、その背景について語りたいと思います。
自分は京都大学ペンシルパズル同好会に所属しています。そこでの活動内容は、会員が予めパズルを作り、毎週の例会で出し合うということをします。題名の「ペンパ同好会で作った」というのは、僕が勝手にオリパを作って、勝手に出していたということです。
そんなパズル活動の中で、良いオリパができるとニコリへ投稿していましたが、大半のパズルはルールが複雑だったりで「あんまりニコリ向けじゃないな」となり、投稿もせずそれっきりでした。
ただ、ここ最近ネット上でのペンパ界隈の発展はめざましく、puzz.linkやPuzzle Squareなど、インターネットパズルの土壌がどんどん豊かになってきていると思います。それに伴い、ネット上のペンパ研究力も勢いを増してきており、マニアックな議論をできる場が増えました。
そのことを象徴する1つの例として、「ぬりみさき」の発展が挙げられます。残念ながらニコリ本誌への掲載はこないだ終了しましたが、ネット上では凄まじい量の手筋が発見され、ニコリとは異なる方向に進化していきました。原作者としては、多くの人に愛されていただき嬉しい限りです。
そのへんをふまえ、パズルも適材適所ということで、あんまり初心者向けじゃないけど何か好きな人は好きそうな感じの、マニアックめなパズルをこの場をお借りして紹介しようと思います。
余談ですが、自分の好きなパズルの種類は、「ルールの制約が強く、少ない表出で勝手にスルスル進む」ものです。そのため、オリパを作る時につい制約を強くしてしまい、どこまで自分の好みに寄せるかという葛藤が起きがちです。今回出てくるパズルにも、いくつかそういう方向性のパズルがあります。
1. パズルの数々
それでは、本題のオリジナルパズルを紹介していきます。
下は時系列順のパズル一覧です。(丸数字は本記事内での順番)
最初は本文も時系列順に書こうと思っていたのですが、初っ端の三角迷路があまりにも複雑なので、本文は内容が分かりやすい順に並んであります。
2回生
⑧三角迷路
⑥割り切れマス
3回生
④シンメトリー迷路
⑤クロスワードパズル作成パズル
4回生 (この辺でぬりみさき)
③全通寺
M1 (この辺で漢語貿易)
⑨四国に切れ
②スノスノーマン
M2
⑦いのちの輝きループ
①シリトリング
2回生とか3回生の頃に作ったパズルはまだあんまり自重してなかったので、全体的に難易度が高かったり、突破口が見つけにくくなってます。
また、パズル内容のおおまかな指標として、簡潔度・手筋度・闇度を個人的な感覚で5段階表記してあります。参考にどうぞ。
pdfファイルは例会で配ったやつをそのまんまアップしています。
なので所々パズルと関係の無いことが書かれてますが、気にしないでください。
あと全然関係ないんですが、pdfファイルの方で名前が「厩天国」と漢字表記になってるのは、サークル内ではそっちを使っているからです。公の場で厩をひらがなにしてるのは、そっちの方が読みやすいし書きやすいからです。議員さんと一緒です。
1.1 シリトリング
簡潔度:★★★★★
手筋度:★★★★
闇度 :★
名前の通り、しりとりをモチーフにしたパズルです。
このパズルはQuizKnockさんの動画を観ていた時に思いついたものです。確かクイズとしりとりを融合させて遊ぶみたいな内容で、「この人達は常にクイズのことを考えているからこういう発想が出るんだろうな」と思った時に、それをパズルに当てはめたらすんなりできました。
内容としては、「ん」を連続して通れないルールが、しりとり感を上手く表していて気に入ってます。ただ、自分が作った時はどうしても全マス通過気味になったり、見た目がゴチャゴチャしてしまったので、部屋分けを使ってその辺を上手く作れたらいいかもしれません。
3問目の鹿児島県にある実在の地名、志布志市志布志町志布志をテーマにした問題がお気に入りです。
↓Penpa-editorで解く(「線>>通常>>緑」で正解判定)
1問目(しりとり)
2問目(トマト)
3問目(志布志市志布志町志布志)
1.2 スノスノーマン
簡潔度:★★★
手筋度:★★★
闇度 :★
名前の通り、雪だるまをモチーフにしたパズルです。
当時、ジャニーズからSixTONES(ストーンズと読むらしい)とSnow Manというグループがデビューしました。しかし、SixTONESにはストストーンというイメージパズルがあるにも関わらず、Snow Manに無いのは不公平だと思い、Snow Manパズルを作ろうと決めました。
作った後で気づいたのですが、このルール、実は「四角スライダー」の制限強い版になっています。なので解き味もその辺と似通いがちになります。
雪玉が雪だるまの頭か体のどっちになるか表出するとかで、雪だるまならでは感が出せたら良いな〜って感じです。
あと完成盤面がかわいいですね。これからの季節にぴったり。
↓さとがえりのpuzzlinkを代用して解く; 実際に動かした方が分かりやすそうなのでこっちにしました。そのため正解判定は出ません。
1問目(かんたんな方)
2問目(ちょいむず、たいへん相当)
3問目(かなりむずかしい、理詰めっぽいのがあった気がするけど忘れた、アゼン相当)
1.3 全通寺
簡潔度:★★
手筋度:★★
闇度 :★★★
盤面に寺院(卍)を建立するパズルです。
どうにかして卍を使ったパズルを作りたいと思い、こんなことになりました。ルール文がかなりはしゃいでいます。
名前の由来は全マス通過と香川県善通寺市です。「マジ万寺」と迷いましたが、後者はそのうち廃れそうなのでこっちにしました。自分で名前を考えたパズルの中では、漢語貿易(ニコリ170号に載ったオモパ)と1位タイぐらいで名前が気に入っています。これは共感できる人がいるかもしれませんが、気に入ったパズル名を思いつくと創作意欲がめちゃくちゃ湧いてきます。
解いた感じは卍カーブデータです。卍が反時計回り(?)なので意外と論理的に決まる部分が多い点は面白いですね。神社や檀家を駆使してカーブデータと差別化していきたい。
1つの卍が最低9マス占めるので、後先考えずに作ると終盤で大量に神社を建てることになります。
「決まった形を何個か置く」系パズルで最小単位が9マスというのはそうそう無いんじゃないんでしょうか。例えば、「ペンシルズ」「OKさんとNOくん(171号初出オモパ)」が3マス、「クサビリンク」が4マス、「へびいちご」が5マスとかです。
盤面に「鬱」の字とか正65537角形とかを配置するパズルを作れば大幅に記録更新できそう。
↓Penpa-editorで解く(「線>>通常>>緑」で正解判定)
1問目(一乗寺)
2問目(無二寺)
3問目(四天王寺)
4問目(三十三間堂)
5問目(万寿寺)
1.4 シンメトリー迷路
簡潔度:★★★★★
手筋度:★
闇度 :★★
対称軸が学べる迷路です。バイト中に紙面上で図形で遊んでたら思いつきました。
最初作った時(1枚めのpdf)はそれぞれのマスに独立した記号が入っていましたが、2枚目のpdfのように記号を複数のマスに跨がらせることを思いつき、芸術性が一気にアップしました。
特に、2枚目最後の問題(本記事ヘッダー画像)は今まで自分が作ったパズルの中で一番気に入っています。ただ、絵を書きながらパズルを作っているようなものなので、作問の手間が尋常じゃないためしばらくは作らないと思います。どのぐらいかというと、個人的に「はなれ組」より作るのがしんどいです。(破綻の概念が無いだけマシかもしれませんが)
これを配った時、先輩から「視認性が悪いほど興味を惹く珍しいパズル」との評価をいただきました。盤面の見やすさはパズルの重要な要素だと思うので、その点でこのシンメトリー迷路は変なパズルだと思います。
後で盤面が見辛いパズルが出てくるので、その時視認性の大切さを身をもって知ることでしょう。
最も正当な理由で音割れポッターを盤面に入れられるパズルではないでしょうか。
↓目解き用のトリミング画像
1.5 クロスワードパズル作成パズル
簡潔度:★★
手筋度:★★★★★
闇度 :★★★★
クロスワードを作るパズルです。「クロスワードにカギの番号を入れるのってパズルみたいだよね〜」って話をしてる時にそのままパズルにしました。
クロスワードのカギの入るマスを題材にしたパズルは「本家黒マスはどこだ(ニコリ35号初出オモパ)」や「元祖黒マスはどこだ(36号オモパ)」がありますが、そっちは記号が1種類(このパズルでいう○記号に近い)なのに対しこっちは何種類もあるので、簡潔さを犠牲に手筋や奥深さを増やしたって感じですね。
なんやかんや手筋がいっぱいあるので、この方向で良いのができそうな気がします。なんで2×3禁とか入れたんでしょうね。
↓Penpa-editorで解く(「黒マス>>濃灰」と「数字>>通常>>緑」で正解判定)
黒マスと数字の両方を入れないと正解判定が出ないので注意して下さい。
1問目(easy)
2問目(normal)
3問目(hard)
4問目(very hard)
おまけ(最密を探そう)
1.6 割り切れマス
簡潔度:★★★★
手筋度:★★★
闇度 :★★★★
最大公約数をモチーフにしたパズルです。確かフィルオミノを解いている時に思いついたんだと思います。最大公約数自体が複雑な概念なので、たった2つのルール文でヤバさが出てます。
印象としては、「ひとりにしてくれ」と同様全てのマスに数字が入っているので、かなり視認性が悪いです。その上各マスの情報量も多いので、全体的に重いパズルになってしまいました。人類の整数力がもっと上がれば流行るかもしれません。
最大公約数の性質が上手く反映されている点が気に入っています。特に、2枚目の第3問のように、2018を使った入り口は最大公約数ならではって感じがして良さげです。2枚目は見ての通り2018年・平成30年の新年初例会の時に配ったやつです。
あとこの割り切れマスというパズル名、自分でつけたんですが結構気に入ってないので、何かもっと綺麗なのが思いついたら是非教えて下さい。
↓Penpa-editorで解く(「辺>>通常>>緑」で正解判定)
その1:1問目(easy)
その1:2問目(normal)
その1:3問目(hard)
その1:4問目(hard)
その2:1問目(やさしい)
その2:2問目(普通ぐらい)
その2:3問目(むずかしい〜おめでたい)
その2:4問目(おめでたい)
1.7 いのちの輝きループ
簡潔度:★
手筋度:★★★★
闇度 :★★★
名前の通り、2025大阪万博のロゴマークであるいのちの輝きくんをモチーフにしたパズルです。元ネタのいのちの輝きくん自体がループになっているので、それでパズルを作ろうと思い立ち、こんな仕上がりになりました。
色を塗ったらマジでいのちの輝きくんそっくりになります。インスタ映えですね。
ルールの制約が強く、少しの表出で勝手にスルスル決まっていく所が好みです。特に目玉が向く隣のマスが空になるルールが、どことなく「数コロ」を彷彿とさせます。
目玉が外枠の方を向いてもいいようにすると、唯一解にするために表出を増やさないといけなくなってあんまり好みじゃないので、やむなく外枠凝視禁を入れました。そのお陰で壁際の挙動が「Aqre」みたいになったのは面白いです。ただ、無理やり感があるのでもっと良い方法があるように思います。
余談ですが当時のニコリ最新刊172号の新作オモパに「輪廻の矢」というものがあり、明らかに矢印でループを作りそうな題名なので最初見た時は内容が被ったんじゃないかと焦ったんですが、全然そんなことはなく安心したということがありました。
↓Penpa-editorで解く(「複合>>物体>>矢印フリック」で正解判定)
1問目(かんたん)
2問目(ふつう)
3問目(むず)
4問目(激むず)
1.8 三角迷路
簡潔度:★★
手筋度:★
闇度 :★★★★
三角比を使った迷路です。なんで思いついたのかは覚えてないです。サークルに入って最初に作ったオリジナルパズルなのにルールが分かりづらくて申し訳ないです。
ルールを詳しく説明すると、このパズルは直角三角形の辺から辺へ移動し、スタートからゴールへ目指す迷路です。
この時、辺の移動の方法には3種類あり、上の図でいうところの
・sin☆の移動:辺AB→辺AC
・cos☆の移動:辺AB→辺BC
・tan☆の移動:辺BC→辺AC
になります。
この例だと☆の角が黒く塗られているので、それに対応したsin, cos, tanの移動が可能です。逆に、角Aは黒く塗られていないので、そこに対応する移動はできません。(例えば、辺ABから辺BCへsinの適用によって移ることはできない)
この移動を最初はsinから始め、sin, cos, tan, sin, cos, tan...の順で繰り返していきます。
これも尋常じゃないほど作問に手間がかかります。特に作画が面倒で、手書きで作問しちゃいました。そのため、そもそもこの問題を正確な直角三角形たちで表せるのか未だに分からないです。一応この問題の中では、全ての最小の三角形は直角三角形ということになってます。
改めて画像で見ると黒塗りの角が判別し辛くなってますね…
申し訳ないですが分かりづらい所は拡大して確認して下さい。
cosθ・tanθ = sinθ の関係を身をもって学べる教育的なパズルです。
|sinθ|, |cosθ| < 1 のせいで tanθ > 1 にしないとどんどんミクロになる欠陥があります。
1.9 四国に切れ
簡潔度:★
手筋度:★★★★
闇度 :★★★★★
「四角に切れ」をガン無視して大量の四国を作るパズルです。その年のパズ同の合宿先が香川だったので、四国パズルを作りました。1.3 全通寺と同様、ルール文がかなりはっちゃけています。線の進み方としては「ヤギとオオカミ」と「ボーダーブロック」を混ぜたような雰囲気があります。
ルール文がややこしいのですが、ルール1の”点”は太線(世界線)や外枠上の格子点にもあります。盤面にグリッドをつけるとめちゃくちゃ見辛くなってしまうので、やむなくグリッドを消して点の間を線が通る方式にしたら点が隠れてしまいました。あと太線上に県境を引くのもだめです。
最悪、pdfのファイルに許されるパターンと許されないパターンが図示してあるので、どうしても分からない場合はそちらも参考にして下さい。
既に辺で分けられている領域を更に辺で分けるという性質上、視認性がまあまあ悪いです。太線で領域を区切る代わりに、「ダブルチョコ」のように各領域を別々の色で塗り分けして示せば多少マシになるんじゃないでしょうか。
↓Penpa-editorで解く(「辺>>通常>>緑」で正解判定、太線上に辺を書くと正解判定が出なくなるので注意して下さい)
1問目(かんたん)
2問目(ふつう)
3問目(むずかしい)
3問目はPenpa-editorの限界サイズすれすれなので、挙動が若干重たいかもしれません。一応正解判定が出ることは確認していますが、その辺が不安な方は注意して下さい。
2. 終わり
内容は以上です。ペンシルパズルを本格的に始めたのが同好会に入ってからなので、実質これが自分の全歴史になります。今回紹介したパズルや、その改作など是非ご自由に作って下さい。いいねしに行きます。
この記事が誰かのインスピレーションの助けになれば幸いです。やっぱり自分でパズルのルールを考え、それで面白い問題ができるととても楽しいので、みなさんも是非軽率に新しいパズルを試しに作ってみて下さい。
見たことのない新しいパズルがとても好きなので、いいねしに行きます。
Snow Manやいのちの輝きくんのように、パズルの種は日常の中に潜んでいます。そうやって色々なものを”パズル化”しようとする視点でいれば、何か面白い作品が生まれるかもしれませんね。
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