環境・地域・都市・社会運動などの読書記録
雑な備忘録
・足立重和 ・金菱清編著,2019,『環境社会学の考え方――暮らしをみつめる12の視点』ミネルヴァ書房.
姉妹編(応用編)として『生活環境主義のコミュニティ分析』がある(あとがきより)。母親の出身が長崎・壱岐島であり、第8章のし尿処理の話は今度母親に聞いてみようと思った。当たり前といえば当たり前なのかもしれないが、(特にざっくり1950~60年代頃までの)し尿の肥料としての活用は自然環境のことを考えておこなわれてきたわけではなく、経済的合理性に基づく当然の帰結(生活の知恵)であった。
・石井亨,2018,『もう「ゴミの島」と言わせない――豊島産廃不法投棄、終わりなき闘い』藤原書店.
島を離れてからの事情がやはり切ない。また、島内での開拓村の位置づけをより考えるべきなのだろうと思った(調べる機会や資料のアテがあるならば)。
・宮本憲一・淡路剛久編,2014,『公害・環境研究のパイオニアたち――公害研究委員会の50年』岩波書店.
公害研究はおそらく理論としても実践としても学際的であり続けてきたということだろうか。法学、経済学、医学、衛生学など様々な知見が動員されている。各論者の紹介がなされており、各章末の文献リストを見ると読んだことの無い本ばかりだった。少しずつ買い集めていきたい(遅まきながら本当に読んで良かった)。一点、宇井純の自己規定が興味深い。「化学実験屋」「化学者」「技術者」という自己規定、自己認識を持ち続け(さらに「適正技術」の開発に努め)ることは、職業倫理のあらわれだと思う。
・松原治郎・似田貝香門編著,1976,『住民運動の論理――運動の展開過程・課題と展望』学陽書房.
「自治体労働者の政治参加」という論点にしぼり、(いつかそのうち)読み直してみたいと思う。「自治体労働」論は芝田進午から。また、やはり松下圭一(シビル・ミニマム)、宮本憲一(社会資本)、革新自治体の誕生といった同時代の文脈を頭に入れて読む必要もある。加えて、カステルの集合的消費論との接合についても……。勉強が足りず情けない。
・濱西栄司・鈴木彩加・中根多惠・青木聡子・小杉亮子,2020,『問いからはじめる社会運動論』有斐閣.
調査裏話的な要素がありがたい。それから、技法の習熟などはもちろん大事になるのだが、何かを知るために勇気を出すことが一番むずかしいように思う。例えば第5章、調査先にはじめて国際電話をする場面は、自分ならできるだろうか……と尻込みしてしまう。
・高崎裕士・高桑守史,1976,『渚と日本人――入浜権の背景』NHKブックス.
まとめながら気づいたが、刊行年が『住民運動の論理』と同じ年であった。開発の歴史を考えるにあたって、海岸の埋め立ての歴史を掘り下げようと思わせてくれた。他方、民俗学的な話についてはどうも相性が悪い。また、開発の近代に対抗するもう一方の極として、入浜権の思想は「復古思想」として位置づけられている。環境権やシビル・ミニマムの延長に入浜権の思想があると同時に、その「復古思想」たる性質がどこから来たのか。おそらく民俗学的なところを掘らないと理解がおぼつかないのだろうという気がしている。
・金太宇,2017,『中国ごみ問題の環境社会学――〈政策の論理〉と〈生活の論理〉の拮抗』昭和堂.
4章以降の記述にひきこまれた。都市と農村のあいまの「液状化地域」、いわば第三空間にごみ山がつくられていく流れであったり、ごみ山をめぐる縄張り争いもおもしろかった(手元に本が見当たらず、別のところに残していたメモから一言)。
以下、思い出したときに追記していきたい(あるいは別エントリにまとめたい)。
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