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うましき台所帖 第4回「出汁が教えてくれたこと。津野朋恵さんとさがす、自分だけの出汁」レポート

うましき台所帖とは?

2022年7月より、秋田市文化創造館の1階キッチンスペースを拠点に開催している料理教室。毎月、講師が代えて開催しています。(2023 年3月までの全9回)ここで学ぶのは料理の手順やコツだけではありません。ともに手を動かし、味わいながら、講師と参加者がともに語り、学び合い、この土地の魅力や生き方をあらためて考える場です。


うましき台所帖 第4回 
出汁が教えてくれたこと。津野朋恵さんとさがす、自分だけの出汁

■ 講師:津野朋恵さん(由利本荘市)
■ 開催日:2022年10月10日(月・祝)
■ 会場:秋田拠点センターALVE 4階 調理室


乾物を扱う「津野商店」に生まれ育った津野さん。父母の仕事をそばで見ながら自分の道を模索するなか、たどり着いたのは、やっぱり「出汁」の世界でした。 自身は料理が得意ではないからこそ「出汁の力」に助けられてきたという津野さん。ここでは、様々な出汁を比較しながら、自分に合う出汁の取り方、自分に合う味を探っていきます。


自分に合う出汁とは?

前半は、津野さんによる出汁についての座学と、出汁の飲み比べ。
まずは、日高昆布、原木椎茸、うるめいわしの3種の出汁を試飲。自分でブレンドしながら味比べをしました。

その後、班ごとに、「水出し法」「煮出し法」「沸騰法」の3つの方法で出汁をとり、どんな変化が生まれるか、さらにそれを味噌汁にするとどうなるかなどを比較。それぞれを味わいながら、自分の好みはどれかを考える時間となりました。

トークの時間

【津野商店】

津野商店は現在、私の両親が3代目として営んでいます。1950年くらいに曽祖父が創業した店で、2代目から乾物商品を本格的に揃え始め、3代目では、そのニーズを広めているというところで、現在、由利本荘市の小中学校でも、うちの昆布や煮干しを使っていただいています。

私は3姉妹の真ん中で、数年前から店の仕事に携わっています。
元々、継ぐ気は全くなかったのですが、じつは、十数年前にもらい火で店が全焼する、ということがありました。その際、両親は店を畳むことも考えたんですが、地元の方々が「焼け残ったものでもいいから売ってくれ」と来店して、泥がついた商品も洗って買っていってくださったんです。誰よりもショックを受けていたのは両親だったはずですが、お客さんに支えられながら、本当によくがんばって立て直しました。そんな二人の思い、地元の方の思いを受けて「私もやってみるか!」と思ったんです。

【乾物屋さんの仕事】

乾物屋ってどういうことをしているのか、ご存知の方は少ないと思います。うちでは、届いたものを単に袋詰めして販売しているのではなく、お客様が扱いやすいように、もう一手間かけるようにしています。
例えば、煮干しであれば、魚体のまま、尻尾も尾ひれも付いて、大きな段ボールに冷凍や冷蔵の状態で届けられます。それを、そのまま袋に詰めてしまうと生臭くなってしまうので、専用の部屋で天日干ししてから店頭に並べていたります。

そして、乾物屋として、お客さんとの対話を通して「その料理だったらこの乾物も合うと思うよ」などと使い方の提案をしたりと、その方の食生活を支えるような役割も担ってきたとも思っています。大半は、店頭でお茶を飲みながらの世間話なんですけどね(笑)。

両親にとっては当たり前にやってきたことなのですが、これからは「うちはただ乾物だけを売っているだけの店ではない」と、言葉にして伝えていかなければと思っています。

【出汁の魅力】

私は元々、料理が得意ではないんですが、県外で働いていた頃、疲れて帰ってきたけれどどうしても味噌汁が飲みたくて、出汁をとって味噌汁を作ったら、ものすごく体に染み込んで「手間をかけてないのにとっても満足できた」という記憶が残ったんですね。

その後、地元の料理店の方に「日本の出汁って、フレンチのフォンドボーのように手間をかけていないのがなんだか物足りない気がする……」と話したら「そうじゃないよ。フレンチは作る人がゼロから全てやらなければならないけれど、日本の乾物はすぐに食べられるように、漁師さん、加工業者さん、乾物屋さんたちが手間をかけてくれているから、自分たちがやらなくてよくなっているんだよ」と言ってくださったんです。

それを聞いてから、自分たちはいかに良いものを使わせてもらえているのかを再認識するようになりました。

最近は、今日のような教室をたびたびやらせていただいていますが、以前開催した教室で、参加したお母さんの一人が「私、出汁の取り方、間違ってたな〜」とおっしゃたのを聞いて「しまった!」と思って。今日もみなさんと体験したように、本来、出汁の取り方には、正解も間違いもなくて、その方の美味しい方法を見つけていただくのが一番なんですよね。そのお母さんにも「あなたのやり方でいいんですよ」って伝えたかった。

専門家が推奨する方法もありますが、それに囚われすぎず、自分のやり方で楽しんでもらえたらと思っています。


参加者の声

●毎日の忙しさを理由に、出汁をとったり、自分にとっていい食事を作れないでいたんですが、今日「正解がない」ということを知って、ハードルが下がりました。

●津野さんのお話を聞いて、ただ販売して終わりじゃなく、その先のことも考えながら取り組まれている姿に感激しました。

●私は出汁にはコンプレックスのようなものがあって、出汁よりも、調味料で誤魔化していました。自分でブレンドして、自分の旨味を作っていけるなら楽しそう! 台所を自分の拠り所にしていけたらと思いました。

●スーパーでなんでも手に入る時代ですが、津野商店さんのような使い方やそのものの良さを聞ける「買い物+アルファ」の場は、これからの価値のあるものになるのではないかと思いました。

うましき 台所帖の詳細・今後の開催については、こちらでご確認ください!
https://www.facebook.com/umashiki.kitchen


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