ピンチの時ヒーローが現れるときの話
よくある演出というかピンチのシーンで、ヒーロー的な登場をしてピンチを救うシーンがあるが、僕はあれが好きじゃない。
というより、1話目や読み切りでその手法を使うことが多いが、ほぼ全部上手く使えてない。そもそも不可能なんだ。
では、良いピンチでの登場の仕方と悪い登場の仕方をわけてみる。
●良い登場の仕方
・「キングダム」合従軍最後の楊端和
・「BLEACH」仮面の軍勢の登場(平子の待てや)というセリフ、ノイトラ箇所の剣八等の隊長の登場、一護の最後の月牙天衝の助け
・「NARUTO」の九尾と合体したときのシーン
・「ワンピース」のシャンクスが戦争を止めに来たシーン
・「銀魂」沖田六角屋事件のときの銀さんたち、新八と九兵衛の時の銀さんたち(やや例外)
●悪い登場の仕方
・「ブラッククローバー」の氷割ってピンチを救うアスタ
・「ワンピース」ルフィとドフラミンゴの最後
●何が違うのか?
これらは何が違うのかというと、簡単に言うと「先が容易に予測できてしまう」からだ。
まず悪い点の方から。
ブラクロのピンチのシーンはあの場面で先輩がピンチで、水使いも魔力コントロール下手なら助けるのはアスタしかいない。
ルフィも10カウントで確実に助けに来るって分かってるせいで、緊張感が全く出ておらず、登場しても「はいはい」ぐらいだった。しかも10カウントで2・3話使っていたけど、読者的にはテンポが悪く感じた。「どうせ来るでしょ」って。
でもここで「一護とナルトも助けにくるってわかるじゃん」って考えると思う。その通り!!絶対来る。
良い登場の仕方にはいくつか要因がある。
1:予期しないやつが助けにくる
2:覚醒したやつが来る
3:未知の力を持ったやつが来る
これが大きな要因だと考える。
1の例
ここ最近で1番「来たああああ」となったのはキングダムの合従軍だ。あそこで山の民が助けに来ることは想像できた人はいるだろうか。
次に戦争を止めに来たシャンクス、次にカラクラ町での仮面の群勢、剣八の登場が当てはまる。
共通することは「絶望的なピンチ」ということだ。
主人公含めボロボロの状態、現状の環境からの援軍はありえない状態だ。
山の民では国の兵士は全部戦っている。シャンクスでは白髭海賊団とルフィたちは疲弊しきっている。平子は護廷十三隊はボロボロで剣八たちも虚園にいるて助けられない。
他所の全く違う環境から助けが来る時は、登場としては異常なほど盛り上がる。読者の「驚きと喜び」が絶頂になるからだ。
例えばここで絶望的なピンチから主人公が「うおおおおお」とか気持ちで解決されても何だそれってなる。ブラクロのアスタはそっちよりに見えた。
合従軍最後で信の気持ち1つで李牧に勝ち出すとか、コビーが覚醒するとかは現実味が全くないのだ。
もし気持ちで強くしたいなら、それなりの理由がいる。例えば、悟空だとボロボロでもクリリンがやられて覚醒する。リボーンのツナもシモンと仲が良くなりリングの覚醒、ガッシュも新しい呪文の覚醒など、次を期待する展開が必要だ。
そして覚醒するにもその前に修行してたり、何かしら動機がないと「きた!!」と報われた感じにならない。つまり…
ワクワクしないんだ!
アスタみたいな「おらああああ!」で解決されたら、「え?なんで?」としか思えず応援できない。ユノの風の精霊がいきなり出てきても「ご都合主義じゃね?」としか思えない。
少年には良いかもしれないが、これは作者が楽できる方法でもある。だって気持ちで解決できるんだもん。
だからピンチの時は全く関係ないところからの援軍を、読者に悟られない様に展開する必要があるんだ。
そしてこの手法には注意がある。「使い回さない」ことだ。
BLEACHが最後人気低迷した理由はこれの繰り返しだったから、「どうせ誰か来るだろ」って考えてしまう。
2:覚醒したやつが来る。
主人公に多いタイプで一護とナルトが覚醒したときに出てくるのは興奮した。
それは登場に期待するのではなく、能力に期待するからだ。だから登場はベタでいいし、ベタだからこそいい。
ルフィの2年後もワクワクしたが、強化後の敵が弱すぎてルフィの力がどれくらい強くなったのか分からなかった。一護なら愛染、ルフィならマダラと敵が最強クラスであるからこそ強さがわかるのだ。
ルフィが覇王色を武装してカイドウと戦っているのは良いが、ドフラミンゴとカタクリに関してはどうなんだろうか。2年前でも七武海を2人も倒しているルフィが同じ七武海に苦戦しているのはレベルアップがわかりづらい。もちろん七武海の中で強さの序列もあるが、それでも1つの団体jと見てしまう。じゃあ2年前に負けたクロコダイルと2年後に負けたドフィは圧倒的にクロコダイルが弱いのか?となってしまうからだ。(これが王道の難しいところだと思う。インフレしすぎてもダメだ。)
3:未知の力を持ったやつが来る
仮面の軍勢とかぶるが、先に出てきてたやつが「どんな力があるのか」お披露目する場合だ。
BLEACHやハンターハンターで多く使われる。
ブリーチで平子が出てきたのは21巻あたりで戦いは35巻あたり。死神の卍解など、事前に強キャラだと分かった上での登場は「強い」という前提があるからこそワクワクするんだ。
幻影旅団の戦いや、クロロとゾルディック家、クロロとヒソカ、ノッキングマスター次郎などもそれだ。
ブリーチの最後人気低迷を支えたのは、隊長たちの卍解のオンパレードで60巻分のネタバラシがあったからだ。
以上ピンチの時の登場の仕方だ。
予期しない人、覚醒した人、未知の能力を持つ人が大事だ。
ここからは読み切りや1話目での活用。
上記は長期連載じゃないと難しい。
1話目で予期しない人はいないし、未知の能力を持つ人を出す事前準備はない。
覚醒はチェンソーマン、ナルト、ブリーチ、ワンピースで能力を発揮している。しかしこれも「うおお」とか気持ちではなく、何らかの理由が必要。
では他の登場人物を助けに来るシーンだと何がいいかってなると、銀魂だ。
助けに来るのが分かっているのなら、逆にバラせばいい。ただ第3者に言わせるんだ。
「大丈夫よ。だってあの人はじっとしてられないから。」とかで登場させることで、登場のドキドキ感は薄いが「それくらい信用された強いやつ」とか「こいつだったらそうするよな」と人間性が強調されることでヒューマンドラマが成り立つと思う。ただある程度助けがこないピンチな状態という場面設定は必要だ。
海で溺れてる人がいたら、海のレスキューが助けにいく。でも、レスキューの主人公が休憩で好きな人とご飯できるチャンスが来たときに、それを捨てて、助けにいったら「おお!」っとならないか?
女性が一人で食べてるときに、他の人に「子供が溺れてるって聞いた?」と聞かれて、主人公の空席を見ながら「そうなんだ。でももうすぐ解決するわよ。」って言ったら、周りは「?」となるが、その女性は主人公を信頼してる1番の理解者なんだと分かってもらえる。
登場のドキドキ感がないなら、ヒューマンドラマを押すことでよくなると考える。
これが読み入りや1話目での1つの選択だと考える。