【お寺写真展開催記】「記憶の方舟」@経王寺(東京都新宿区)をふりかえって
こんにちは。UMA(ゆま)です。
「はじめまして」の投稿をしてから、あっというまに日にちが過ぎてしまいました。
転校先で一言挨拶したところまではいいものの、次のとっかかりがつかめない、そんな気持ちです。
でも、グズグズしているとさらに時間がたってしまうので、まずは、写真家としての自己紹介も兼ねて、3月にやった写真展のことを書いてみようと思います。
写真展のタイトルは「記憶の方舟ー福島県大熊町、大震災から11年、海辺の小さな原発立地町のいま」です。2022年3月18日から24日まで、東京都新宿区の経王寺というお寺で開催しました。
展示した作品は、2019年から2020年にかけて、福島県の大熊町で撮影したものです。私は震災後から福島の写真を撮っていて、これまでに3つのシリーズと1つの動画を作って発表しています。今回まとめた作品は4つめにあたります。
大熊町は南北約8キロメートル、東西約15キロメートルの小さな町で、震災前は約1万人の方が暮らしていました。2011年の事故以来、まだほとんどの区域が帰還困難区域で、立ち入りは厳しく規制されています。
外からは見えにくい状況の中で、除染や放射性廃棄物関連施設の建設のためにかつての町の姿は失われつつあります。
その一方、保育園、小学校、中学校、高齢者施設、個人のお宅などでは、その直前まで人がいた痕跡が、長い時を経てまだそのまま残されているところがあります。
普通の暮らしがある日突然、普通にできなくなること。その不条理は私たちがこの2年あまりの間で経験したことに似ていないでしょうか。
コロナ禍で私たちは分断されたような気持ちになりました。でも同時に、意識してこころを寄せ合うことの大切さにも気づいたように思います。他者を思いやるその気持ちをいま一度、福島にも向けて、こころを重ねていただければ。誰にでも起こりうることと捉えていただければ。今回の写真展にこめたのはそんな願いでした。
プリントは、千年以上の歴史を持つ福島県の手漉き和紙、上川崎和紙に乳剤を塗布して行っています。産地である二本松市では、職人さんが自らの土地で楮を育て、伝統の手法で紙漉きを続けています。自然の力を得て作られる紙だからこそ再現できる土地の記憶があるような気がして、私は前作からこの手法を用いています。
お寺で写真展というのはあまりないことですが、このお寺の住職はお寺を開かれた場にしたいとのお気持ちから、一年を通して一般の方が参加できるいろいろなイベントやワークショップを開催されています。
お寺ということもあって、写真ギャラリーでやる時よりも幅広い方が来場してくださったようです。写真を見ながら、戦時中の体験、ご家族の病気のこと、今の世界情勢など、お話が広がることが多かったのも、私にとっては深く感じ入るところがありました。
大熊町の方が来てくださって「ウクライナの人たちがバスに乗せられて、行き先もわからず避難させられるのを見ていると、原発事故の直後のことを思いだします。みんな同じです」とおっしゃっていたのがこころに残りました。みんな同じ、そうですよね。
大熊町の人たちも、ウクライナの人たちも、当たり前の日々が唐突に失われるとは思っていなかったはずです。私も阪神淡路大震災で近い経験をしました。誰にでも、そういうことは起こりうる。個人的な喪失でも、コロナのような社会的な災禍でも。
写真展の様子を1分半ほどの短い動画にまとめました。よろしければご覧ください。
このシリーズは29点の写真で構成されています。ほかの写真は私のウェブサイトからご覧いただけます。
写真展を開催してくださったお寺、経王寺はこちら。「新宿山ノ手七福神巡り」ができることでも人気です。経王寺には大黒さまが祀られています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。少しでも引っかかるところがあれば、とてもうれしいです。