そして今年も終わる

芸人になるつもりの友達と飲む

友達といってももう23歳のお兄さん

今年の春に一人暮らしをするまでは毎週のようにつるんでいたお兄さん

僕から見てきっと仕事のできる彼が芸人になると聞いたときは意外だった

けど説得力もあった


2019年の春 晴れて大学生になった僕

長い受験生活と校則から解放されたけれど自分の殻からは出られなかった僕

かくかくシカジカあってこの友達を含めた数人のお兄さんが、まだ思春期の目をしたままの僕にお酒を教え、人付き合いを教えてくれた

初めてご飯に行ったとき彼はニット帽を被っていて、生意気な僕はそれをいじってバカにした ニット帽なんて、、と。   ほぼ初対面なのに

地元のヤンキーが拳を交わして仲良くなる的なイメージだろうか        今覚えば正気の沙汰ではない 

本当は人見知りと、劣等感と見栄っ張りをこじらせていただけだった

お酒の加勢もあったのか 無意識に生意気な僕は面白がられ、そこからこのお兄さんたちにいいようにされていった

急にラーメン食べに連れ出されたり、0時も過ぎた頃2次会に呼ばれ説教されたり、車の中で永遠、久保田と宇多田とダイアンを聞かされたりした

サークルに行くようになった僕に「みんなでつるんで酒飲んで、タバコとか吸って何が楽しいん」と皮肉めいたことをいわれた

僕が振られたときは日焼けしに行こうと芝生のある公園をはしごし、銭湯に行き、ちゃんこ屋で 「しょうもない、忘れろ」的なことを言ってくれた

そんなこんなを2年間続け、その間僕はその時間が苦痛になったりめんどくさくなったり少し好きになったりした


うまくやっていくためにという建前で自分を守るために過剰な壁を作っていた僕は粉々にされ適度な壁を作れるようになった

かわいくない後輩だった僕をかわいくなくない後輩にしてくれた



新生活を始めて数ヶ月、今では時々電話がかかってきて飲みにいくぐらいの距離感

生意気だった僕は就活生になり、彼女ができた

毎週末僕を連れ回し、普通の大学生をやたらバカにしていた彼は芸人を目指す仲間とシェアハウスをし、友達と飲み会をしているらしい



難波から僕の住んでいる駅まで手ぶらでやってくる

この街も代わり映えせんなーと呟く 

いや4回目やんと返す


いつも通りの会話



彼は最近始めたタバコをくわえ、僕はニット帽をかぶっている。





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