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<UMA遺産 第17回>昭和の都市伝説が生み出した社会問題となった噂の女性UMA!「口裂け女」~岐阜県ほか日本全国各地

UMA(未確認生物)出現が噂されるミステリアスなエリアを、UMAゆかりの聖地として、「UMA CREW PROJECT」が独断と偏見で選定、紹介する「シリーズUMA遺産」。第17回目は・・・・。

「口裂け女」

1979年(昭和54年)、日本で初めて東京サミットが開催され、インベーダーゲームが大流行、ソニーウォークマンが発売、「エガワる」の流行語まで生み出した江川卓が巨人入団、そして「ナウい」「ダサイ」という言葉が生まれたこの年。
日本の子供たちは、恐ろしい都市伝説に震撼することになる。そう、40代中盤以上の皆様には未だに恐ろしい社会現象として、忘れられない存在でもある「口裂け女」伝説が、日本列島を駆け巡ったのである。

「口裂け女」は、都市伝説が生んだ架空の妖怪、もしくは幽霊とも定義しがたい存在と考えられる。その昔の「雪女」や「四谷怪談のお岩さん」、「番町皿屋敷のお菊さん」、「牡丹燈籠のお露さん」などに近い存在とも言えなくはない。しかし、妖怪でも幽霊でもなく、人々の噂話が全国へとまたたく間に語り継がれた、まさに都市伝説が生み出したUMA(未確認生物)とも言えよう。
昨今の状況もあり、マスクをしている姿が当たり前になっている現在、一見すると「口裂け女」は珍しくない存在なのかもしれないが、一方でどこに潜んでいるかわからない存在でもある。マスクに覆い隠された顔の秘密には、社会問題にまで発展させた何かの背景や理由、動機などがあるのかもしれない。今回は、「口裂け女」をテーマにUMA遺産を巡ってみよう。

こんな薄暗い住宅街の電柱の影に、隠れていたのだろうか?

寒い季節でもないのに赤いコートを着て、マスクをした長い髪の女性が、下校中の子供たちに話しかける。
「ワタシって、キレイ?」
子供たちが「キレイ」と答えると、
「・・・これでも~?」とマスクを外し、耳元まで裂けた口を見せつける。驚いた子供たちは、「うわぁぁぁ~」と叫び声を上げ、一目散に逃げる。
もし、子供たちが「キレイじゃない」と答えると、コートの下に隠していた包丁で刺される。

思わず、「懐かしい」と独り言を言いながら、当時を思い出し震えてる皆さんは、オジサン・オバサン世代の皆さんだろう。初めて耳にする皆さんには、昭和の時代の都市伝説として、いつかどこかで聞いたことがあるかもしれない。

「口裂け女」各地での目撃談

「口裂け女」の発症の地は、岐阜県とされる。1978年12月初めに噂が起こり、ニュースとして1979年1月26日、岐阜県の新聞「岐阜日日新聞」にて、岐阜の子供たちの噂で、ある女優似の美人な口裂け女に遭遇した噂が、記事となった。
さらに、1979年6月29日号に雑誌「週刊朝日」にて、岐阜県本巣郡真正町にて、農家の老婆が母屋から離れたトイレに行った際、口裂け女を見て腰を抜かした、という噂の記事が紹介されていたという。

口コミのスピードは速いもので、岐阜県発祥の「口裂け女」伝説は、瞬く間に全国へと拡散されることとなる。小・中学生を中心とした子供たちの間では、噂が噂を呼び、福島県郡山市や神奈川県平塚市では、目撃情報による通報でパトカーの出動騒動が起き、北海道釧路市や埼玉県新座市では、恐れおののいた子供たちに、学校側も集団下校を行うに至った。
また、兵庫県姫路市の25歳女性がいたずらで口裂け女の格好をし、包丁を持っていたところを、銃刀法違反容疑で逮捕された事件も起きるなど、日本全国が「口裂け女」パニックに陥っていたと言える。

全国で異なる「口裂け女」その容姿・特徴

「赤いコートにマスク姿で長い髪」が、一般的な「口裂け女」の容姿とされるが、赤いベレー帽を被り、赤い服を着て、赤いハイヒールを履いているという説もあり、それは血の目立たない赤い服装をしているとされる説や、逆に血の目立つ真っ白い服を着ている説もあるようだ。
東京の中でも、江戸川区では赤い傘をさし空を飛ぶといった話や、北区王子では、白いコートに白いブーツという組合せの服装だったという説もある。そして、多摩川付近では薄汚い格好をしており、八王子市や国分寺市では着物を着て、かつサングラスをかけているというように、東京だけでも異なる噂がいくつも飛び交っている様子がわかる。

イラスト例
イラスト例

また、特徴として、「電柱の陰に潜んでいる」「体育館のステージ下にいる」「神社の奥に寝泊りしている」「墓石の置き場所に現れる」といった、居場所に関する噂や「三軒茶屋や三宮等、地名に”三”がつく街に出没する」という子供らしい噂や、はたまた「マスクをしている学校の保健の先生が実は口裂け女」などという噂まで、想像力に富んだ噂が絶えない。

そして、当時子供たちを最も怖がらせた噂として、「口裂け女」から逃げようとしても、足が速いのですぐに追いつかれ、結局は命を奪われてしまうというものがあった。何でも、100mを6秒で走るという、具体的な速度の情報までもがあった。
子供たちが学校の先生に「口裂け女」の話をした際、先生は生徒たちにその存在を否定したかったため、「そんなに早く走れる女性がいるのなら、とっくにオリンピックに出て金メダルを取っているはずでしょ?だから、口裂け女なんている訳ない」と言ったそうだが、生徒たちには何の説得力もなかったという。

どんなに逃げ回ってもすぐに追いつかれてしまう恐怖…

なぜ「口裂け女」が誕生してしまったのか?

噂となり、都市伝説になる前の「口裂け女」のルーツとも言われる伝説がいくつかある。舞台はやはり岐阜県となるが、江戸時代の農民一揆で処罰された者の怨念が、妖怪伝説となり、時を経て見た目にも恐ろしい形相をした「口裂け女」に姿を変えたとの説がある。
また、明治時代に入ると、滋賀県や岐阜県では、女性が独りで恋人に会うために山道を越えていくのは物騒だったことから、白装束の格好で顔には白粉を塗り、頭は髪を乱し蝋燭を立て、ニンジンを咥え、手に鎌を持って峠を越えたといい、これが都市伝説のモデルになったという説もある。

このように、昔も岐阜県には「口裂け女」のルーツと思しき逸話があるが、1979年頃、岐阜の小学校では裕福な家庭の子供だけが学習塾に通える環境だったことから、子供たちを塾から遠ざけるために「塾の行き帰りの夜道で口裂け女に襲われる」と、あらぬ噂を流したことがルーツともされている。
また、これも岐阜県での噂となるが、「口裂け女」は精神病院からの脱走者とされる説もある。座敷牢に監禁されていた精神病の女性が、口紅を顔の下半分に塗りたくって夜に外出し、見た人が驚いたという説もある。「徘徊している精神病患者」=「口裂け女」が、関連づけられるエピソードは他にも多い。精神病ではなく、整形手術の失敗で口が裂けてしまい、理性を失ったことから、「口裂け女」になったとされる説も強い。
最後に、都市伝説らしいルーツ論となるが、「口裂け女」はアメリカのCIAが、噂の広がり方を検証するために流した情報だという説まである。

境港市水木しげるロードに設置された
「口裂け女」のブロンズ像  ※Wikipediaより

「口裂け女」に出会ってしまったら、どうすればいい?

さて、そんな世にも恐ろしい「口裂け女」に遭遇してしまったら、どうすればいいのか?逃げても逃げても、相手はすぐに追いついてしまうほど俊足の持ち主なのだ。そんな時、おまじないにも似た対策法も各地で、異なるものが噂となった。

一般には、おまじないのように「ポマード、ポマード、ポマード」と3回唱えると「口裂け女」が嫌がるので、その隙に逃げる方法。(6回唱えるという地方もあったようだ。)何故「ポマード」なのかは、「口裂け女」が手術の時に医者がつけていた、ポマードの臭いが苦手だからとされている。

また、「口裂け女」の好物が「べっこう飴」であることから、これをあげると夢中で舐め始めるので、その隙に逃げる方法。しかし、関東地方では、「口裂け女」は、逆にべっこう飴が嫌いで、飴を投げつけると怯むことから、その隙に逃げることができるともいう説もある。

千葉県我孫子市では、べっこう飴5個を見せると喜び、金平糖5個を見せると逃げ出すともいう。また、べっこう飴がない場合、ボンタンアメで撃退できるらしい。

豆腐を見せると逃げ出すという説と、逆に豆腐が好物という説まである。

福岡県では「口裂け女」は、当時流行したスペースインベーダーが大のお気に入りで、百円玉を投げつけると必死に拾おうとするため、その隙に逃げられるというご当地伝説まで様々だ。

「口裂け女」は今やホラー映画の鉄板キャラクターに!

妖怪、幽霊、怪談、都市伝説・・・人々を怖がらせることには長けている「口裂け女」というキャラクターは、現代風にアレンジを加えられ、日本のみならずアメリカでも映画化され、今やホラー映画の金字塔とも言える存在だ。
映画以外のエンタテインメント作品にも、漫画・アニメ等様々な「口裂け女」関連作品があるが、今回は映画の一連のシリーズを紹介しよう。

あの都市伝説のスーパーキャラクター
口裂け女が帰って来た!
「口裂け女」

公開日:2007年3月17日 監督:白石晃士
出演:佐藤江梨子 加藤晴彦 水野美紀 川合千春
配給:トルネード・フィルム 制作国:日本(2006)
年齢制限:PG-12 上映時間:90分
Ⓒ2006「口裂け女」製作委員会

1978年5月18日 岐阜県で起こった連続殺人事件。
死者13名、負傷者52名・凶器ハサミ…。
「口裂け女2」

公開日 2008年3月22日
監督・脚本:寺内康太郎 脚本:佐上佳嗣
出演:飛鳥凛 川村ゆきえ 岩佐真悠子 斎藤洋介
中野英雄 配給:ジョリー・ロジャー 制作国:日本(2008)
年齢制限:R-15 上映時間:98分

口裂け女vs口裂け女 前代未聞のストーリー
「口裂け女 リターンズ」

公開日:2012年7月7日
監督:山本淳一 出演:大堀恵 里久鳴祐果 小澤真利奈
山下まみ 杉本凌士 加瀬信行 花秋奈津
配給:ジョリー・ロジャー 制作国:日本(2012)
上映時間:74分 Ⓒ2012
「口裂け女 リターンズ」製作委員会

そして、「口裂け女」は、この映画でワールドワイドに人々を震え上がらせる存在となった。

世界15カ国30以上の映画祭からの凱旋公開
「口裂け女 in L.A.」

公開日:2016年1月16日
キャスト:監督・脚本:比呂啓 廣瀬陽 小川和也 曽根剛
出演:ローレン・テイラー メンネル・アル=カワジャ
配給:キャンター 制作国:日本(2014) 上映時間:104分
Ⓒ2015 映画「口裂け女 in L.A.」製作委員会

さて、お届けしてきた「口裂け女」」いかがだっただろう…
最初は一つの噂話に過ぎなかったエピソードが、新聞や雑誌、口コミなどを通じて、女性であることには変わらないものの、これほどまでに姿・形・色や特徴までを変え、全国各地でそれぞれにアレンジを加えられながら伝承され、ひいては、ホラー映画の鉄板キャラクターにまでなったUMAも珍しい。子供たちを中心に、全国各地で想像力を膨らませ、それぞれにバリエーション豊かな「口裂け女」を創り出したのであろう。

「口裂け女」の都市伝説が拡散されたすべての地域を、UMA遺産群と勝手に認定させていただきたい。

しかし「口裂け女」を創造されたものと、解釈するには早合点と思われる。暫く、マスク生活が続きそうな現代にこそ「口裂け女」は、またその姿形を変え、我々を震撼させることになるかもしれない…。



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