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sakuraのお話② 「ネカマだって女性?」

今から20年ほど前、シリコンバレーで働いていた頃のお話。

当時アメリカにいて、仕事以外にそれほど日本人との接点がなかったこともあり、日本とのchatにはまっていた時期がありました。

チャットはネットを介してとはいえ、向こう側には生身の人間がいる世界なので、なかなかに繊細なものです。

会話をするチャット部屋もどんな部屋でもいいわけではなく、どんな人でも受け入れてくれるわけでもなく、実社会と同じく、居心地のいい場所、自分と合うグループ、合わない人がいたりするわけです。

アメリカからだと時差があったので、チャットする時間が日本の真夜中だったり、明け方だったりすることも多かったので、必然、そんな時間にチャット部屋をウロウロしてる人たちとなると、カワリモノも多かった(というかカワリモノしかいない?)ようです。

当時もビデオチャットや音声チャットのようなものはあったのだけれど、まだまだ文字によるチャットがメインだったので、相手を認識する手立ては相手が打ち込んでくる文字(言葉)しかないわけです。

霊長類的にいえば、極めて五感を制限された状態でしかコミュニケーションをとれていなかったわけです。

そんな制約の中、文字を駆使して会話するわけなのですが、それはそれでなかなかに文字によるコミュニケーション力は研ぎ澄まされる世界だったような気がします。

部屋に入っての初動から、

「こんにちはーーーー!」なのか、「初めてまして、よろしくです。」なのか、無言なのか、自分のことから話すのか、部屋の流れを読むことから始めるのか、などとお人柄がにじみでたものです。

かわいい話しぶりだからといって必ずしも可愛い女の子だとは限らず、むさっ苦しいオッサンだったりするかもしれないし、特に私が主に出没していた、日本の深夜帯などは、ネカマ、変態、荒らしなど魑魅魍魎の跋扈するところでなかなか楽しい世界でした。

「チャットなんて相手が見えないからどんな人か分からないし、気持ち悪い。」という人がいます。というより大半の人がそうでしょう。
「うんうん、そのとおり!」というのが共感されるパターンで、「うーん、そう?」というのは共感されないパターン。

確かに見えたら見えたでいいのだけれど、見えないよさ、見えることによる弊害もあるのです。

例えば、同じことを言っていても、相手が目の澄んだ純粋な高校生女子だったりすると、「うんうん!」って共感できるのに、相手がむさっ苦しい怪しげなオッサンだと「なにゆうとんねん!」って共感しないどころか敵意すら抱いたりします。

それっていいんでしょうか? 同じこと言ってるのに?

それって言う人の見た目に左右されてない?

かわいい人、かっこいい人が言うとただそれだけで信じちゃわない?

見た目がノイズになって本質見失うことない?

五感をフルに使ってないからこそ伝わる情報もあるんじゃない?

とか思ってしまうのです。

なので、相手の姿かたちが見えず、バックグラウンドもわからず、ただ打ち込まれる文字しか見えないチャットの世界は、極めてピュアに「言うこと」だけでコミュニケーションできたのです。

言い切ってしまえば、ネカマはたしかに気持ちの悪いものです。

ネカマといえど、ネットの向こう側には生身の人間がいます。
例え顔が見えず、言葉しか手段がなかったとしても、伝わるものがあるのです。

いくらうまく言葉だけで騙そうとしても、上辺だけのネカマは話しているうちになぜかわかってしまいます。

言葉は言い回し、フレーズだけじゃなく、もっと深いもので、どう暮らし、なにを考えて、何に悩んでいるか、、、読んでる雑誌や美容院、お店とか、普段から女性として生活していないと、話しているうちに浅いネカマはボロが出ます。

逆にいうと、文字だけのチャットで話していて、チャット内の仕草、話題も完璧に女性だと思える人だったら、たとえそれが本当はオッサンだったとしても、中身は女性なのかも、って思えます。

ネカマ以外では、学歴詐称師もいます。「オレ、東大」的な輩にしても、ネットの上で知的?な会話が繰り広げられる能力があるのなら、本当に東大かどうかはわからないけど、知的であることは紛れもない事実なのです。

私の場合も「アメリカから」って言うと、たいがい嘘っぽいんですが、やっぱり話していれば嘘じゃないことはわかるようで「そっちはどうなん?」みたいな話が自然と生まれてきます。

ネットの世界はたしかに本当のことはわかりません。
それでも五感に惑わされない真実にも触れられる世界なんじゃないかなあと思うのです。
実はリアルの世界でも本当のことは結局わからないのかもしれません。

さて、そんなチャットにはまっていた当時、ひとまずの居場所として、自分のチャット部屋を気まぐれで開いていました。

話が長くなったので、続きはまたということで。

sakuraのお話①「アナタは共感されにくい。」


京都北部の山あいの小さな集落にただ1軒の小さな百貨店から田舎の日常を書いています。子供達に豊かな未来を残すためにサポートよろしくお願いします!