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過疎の村に来て思い出した30年前のこと
今から30年くらい昔、
イギリスの湖水地方コッツウォルズにあるケンブルという町に1ヶ月ホームステイする機会がありました。
数年前から丹後で暮らすようになって地域の事に関わりながら人口減少や過疎高齢化の話を聞くと、ふとこの村のことを思い出すのです。30年も前のことなので、ずっと忘れていたことなのですが。
ホームステイ先は森と丘に囲まれた、のどか過ぎる小さな村。
日曜日はお店はどこも閉まるし、みんなで教会に出かけたり、まだキツネ狩りやってたりと、当時まだバブルであくせく働いていた日本からはまるで別世界みたいなところでした。
ホームステイ先は築400年の石造りの家におばあさん1人と犬1匹と子猫が1匹。出掛けようにも周りは何もなく、冬は3時には暗くなるので夕食までおばあさんとおしゃべりするだけ。人が入れるくらい大きな暖炉の前のロッキングチェアーにおばあさんが座り、足下には犬が寝そべって子猫がウロチョロ。
日曜は教会に行き、ついでにお買い物。イギリスは料理がまずいって言われるけど料理好きだったおばあさんの手料理は最高でした。食事しながら、
「400年前の家にまだ住めるなんてすごいですね」
って言うと、
「あら、あなたが座ってる椅子は200年前よ」
って普通に返されてびびりつつも、さすがイギリス!と思ったものです。
たぶん当時のイギリスでも、田舎は人が減ってお年寄りばかり。今の日本の田舎の10年先を進んでいた気がします。
そのおばあさんも独居老人。
天気もどんより、娯楽もない。
だけどそういう暮らしもいいな…
おばあさんにはロンドンで働く孫娘がいて、たまの週末、彼氏と一緒におばあさんちに帰ってくることがありました。
彼女のおばあさんち、彼氏はちょっと居心地悪かったと思います。
リビングのテレビで借りてきたダイハードみたいなビデオ観たりしてると、
「私はハリウッドのうるさい映画はキライだわ」
って眉をひそめておばあさんが言うと、彼氏はさらに居心地悪そうでした。
ハリウッドのうるさい映画はキライだったけど、ちょうどその冬、クイーンのフレディマーキュリーが亡くなったニュースにはとっても寂しそうだった。
そんなおばあちゃんにまで愛されてるクイーンってすごいなあと思ったものです。
話がそれちゃったけど、30年前にイギリスの田舎で過ごした日々のことが、30年経った今、丹後の田舎で暮らしながらふと思い出したのです。
(ああ、日本もやっとあの暮らしに追いついてきたのかな)
人はこれからもまだ減っていくし、高齢化もどんどん進む。
日本は過疎だ、高齢化だ、消滅都市だ、なんとかしなきゃってみんな騒ぐけど、私は日本もやっとイギリスに追いつけたのかなって思うのです。
あくせく追いかけるばかりじゃない静かな暮らし。
坂道を転がるボールを頑張って追いかけても、ボールはどんどん落ちていくだけ。下り坂を楽しみながらゆっくり歩いていければいい。
いつかここでも、コッツウォルズの田園生活が描けたらいいなと夢を見ています。
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