【前半】第14回MRI認定試験回答解説
※注意点:転載等行う場合はこのURLを貼るようにして下さい。
1) 静磁場が強くなると起こる現象に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. T2値は長くなる.
2. 信号雑音比は大きくなる.
3. 磁気回転比は大きくなる.
4. ラジオ波の波長は長くなる.
5. Magnetization transfer 効果は強くなる.
答 2,5
1 核種のT2値を記します。横磁化は静磁場には依存しないと言われている。
静磁場に依存するのは縦磁化の大きさです。 よって×
1.5Tから3Tになることで、各組織のT1値が延びているのが確認できます。
2 これは1.5Tから3Tに変えた時の大きなメリットの一つであるSNRの高さである。
ノイズは変わらずに信号強度が上がるため、SNRが上昇する。 よって〇
※信号強度が上がる理由はゼーマン分裂が関わっているから、詳しくは教科書等でゼーマン分裂を別途調べると良。
3 磁気回転比はラーモア周波数式、ω=γBのγです。
このω=γBは非常に大事な式なので、必ず覚えておくことをお勧めします。(重要度5/5)
このω=γBのωは核種毎に持っている固定の値であるため、磁気回転比が大きくなるのは×となる。 よって×
4ラジオ波の波長が長くなる、これはさっきのω=γBから考えて、Bが静磁場強度だから、静磁場強度が強くなったら、このωは大きくなる。
共鳴周波数が大きくなることは、波長λとしては短くなる(ω=1/λ←これも重要!!)
つまり、ラジオ波の波長は短く が正しい。 よって×
5よくMT効果と言われているものです。
水の中心周波数から離れた所にRFパルスがかかった時に、周りの高分子が励起される。
この高分子が、実際信号を取る水の信号も引き下げてしまうというか、信号低下をもたらしてしまうのがMT効果です。
磁場強度が上がると、縦磁化の回復が遅くなるので、このMT効果は強く出てしまうことになります。
よって〇
2) 正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. T1値 ≧ T2値
2. T2値 > T2 * 値
3. 脂肪の T1値 > 水の T1値
4. 脂肪の T2値 > 水の T2値
5. 大脳白質の ADC > 大脳灰白質の ADC
答 1, 2
1 T1値はT2値よりも長いかという問です。1の問題で、T1値とT2値の表を思い返すと、T1回復(値)の方が長かったですね。
これはT1値の方が長いということになります。よって〇
2 これは、T2値が組織固有の緩和、横緩和になりますが、T2*はその緩和の早さに加えて、磁場不均一の影響を含んでいるので、必ずT2*の方が減衰は早くなります。
T2*を撮ると出血や鉄成分を含むものが低信号になりやすいのは、このせいです。
このため、金属入った患者をT2*撮ると真っ黒になりやすい。
よって〇
3、4 これはお互い似た問題ですね。
上の図で脂肪を確認してみてください。
脂肪は水よりもT1回復は早くて、T2減衰も早い。水が、他の組織よりもT1値もT2値も長いって覚えた方がいいのかもしれないですが、
脂肪は少なくとも水よりもT1回復もT2減衰も早い。
よって、3,4はどちらも×。
5 これは大脳白質と灰白質のADCですね。
灰白質と白質、どちらも同じ程度の印象ですが・・・ADCを測ったことないので、
実際に、測って答えを確認するほうが良いでしょう。
まぁ、1,2が明確に正解なので、試験では考える必要はなさそうです。
3) NMR 信号の信号雑音比に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. T1値の長い試料ほど大きくなる.
2. T2値の長い試料ほど大きくなる.
3. エコー時間が長くなると大きくなる.
4. 繰り返し時間が長くなると大きくなる.
5. 1ch あたりの受信コイルの半径が長くなると大きくなる
答 2 4
1 MRSを撮るときのTRの設定にもよりますが、T1値の長い試料だと、あんまり縦磁化が回復しない。それを踏まえて考えると×。
2:T2値が長い試料ほど大きくなる。
同じ固定のTEでT2値が異なる試料でどちら方が信号が残りやすいかで考えてみます。
T2値が長い方が横磁化の減衰が少なく、信号が残っていることになりますね。
よって〇
3 エコー時間が長くなると、大きくなる。これは2と関連してます。
TEの設定を長くしたら、で考えてみましょう。
これはTEを長くすると、各組織の横磁化は減衰します。減衰が進んでしまうので、取得する信号は小さくなる。よって×
4:繰り返し時間が長くなると、大きくなる。
これ1と関連してます。TRを長くすると、縦磁化は回復しやすくなるので、その縦磁化成分が横磁化に反映され、信号強度は高くなる。よって〇
5 受信コイルの半径が長くなると、大きくなる。
受信コイルは小さい方が局所的な感度が高くなるので、信号雑音比が大きくなります。
よって×
4) 円筒型の全身用超電導 MRI 装置において利用が困難な受信コイルはどれか. ※静磁場は体軸方向
1. アレイコイル
2. サドルコイル
3. ソレノイドコイル
4. サーフェスコイル
5. バードケージコイル
答 3
まず、根本的な理屈として、コイルの受信面が静磁場方向と平行に配置されていると信号が受信できない。それを踏まえた問題だと思います。
そもそもMRIの原理のところで、プロトンの縦磁化を90°のRFpulseで横磁化にするのか?という所です。
下記の参考URLをご覧下さい。
この中で説明されているように、コイルに向かって磁石が近づいたり遠ざかったりすると、誘導起電力が発生して、電気が流れます。
MR信号はこの電気を信号として検出しているので、縦磁化のままでは、コイルに近づいたり遠ざかったりしないから、MR信号が受信できません。
そこで、横磁化にすると、コイルに近づいたり遠ざかったりするので、信号が受信できるようになります。
こう考えると、下の図に出している左側は磁石の方向と垂直方向にコイル面が配置されています。これであれば、信号は受信できるけど、右みたいに静磁場の方向とコイルの面が並行だと受信ができなくなってしまいます。
一応それぞれのコイルを簡単にそれぞれ紹介します。
アレイコイル:一つのコイルの中に複数のエレメントが入っている多チャンネルコイル。
これは最近のMRI装置で、皆さんが良く使用しているコイルです。
https://www.mriquestions.com/array-coils.html
サドルコイル:これは自転車のサドルというよりは鞍型のような形をしてます。
被写体周りに置いて撮るようなコイルです。
https://www.innervision.co.jp/suite/hitachi/supplement/0904/topics/index.html
ソレノイドコイル:
ソレノイドコイルは一般にはオープン型、永久磁石に使われるようです。
これを超電導タイプで使うとなると、このコイルの中に人が入るので、静磁場方向と同じ向きにコイルの面が来てしまうような感じです。
https://www.innervision.co.jp/sp/ad/suite/hitachi/sup201809/kokontozai
サーフェスコイル:これは円形コイルを想像するといいと思います。撮影したい部位の体表面に近い所に置いて信号を取るので、SNRが高い画像を得られやすいです。
なので、この円形コイルを複数配列したものが、最初に説明したアレイコイルですね。
https://www.info.pmda.go.jp/ygo/pack/530979/21000BZY00169000_A_01_08/
バードケージコイル:これは名前の通り、鳥かごのような形状をしていて、頭部の送受信コイルなどにも使用されています。
https://www.terrabyte.co.jp/Hyper/exe-feko/feko-sample1.htm
なので、正解(使いにくいコイル)はソレノイドコイルです。
コイルの種類は教科書なんかでも取り上げられているから復習しておくとよいです。
5) 受信コイルの半径を r,共鳴周波数をωとした場合,信号強度を表す関係式はどれか. ※ノイズは無視する.
1. 𝑟𝜔2
2. 𝑟2𝜔2
3. 𝑟3𝜔2
4. √𝑟 𝜔
5. 𝜔√r
答 2
式の参考URL(超電導21より)
https://www.tia-nano.jp/ascot/tyoudendou/series/2009-horigami.pdf
これは、上記の文献を参考にしましたが、この式を導き出すことができませんでした。
動画では、いろいろ考察した経緯を載せましたが、しっくりくる回答を出せていないです。
6) RF パルスを 3 回印可したときに発生するエコー数はどれか. ※RF パルスの 1 番目と 2 番目の間隔は 20ms,2 番目と 3 番目の間隔は 40ms とする.
1. 2
2. 3
3. 5
4. 7
5. 8
答 4
2つのRFpuleからは、ハーンのspinエコーが生じます。これがa-b、b-c、a-cです。
a-bのエコーが出ているということは、横磁化の位相が揃っている状態と考えられます。 a-bのエコーが発生してから20ms後にpulse-cが印加されるのですが、この20ms間に位相がずれている、少しdephaseしているはずです。
そして、このpulse-cが再収束(dephase)pulseの働きをするので、cから20ms後にエコーが出ます。これが、second spin echoです。
さらにstimulated echo(STE)があるから
Cから20ms後にSTEが発生します。
ということで、すべてのエコーを合わせると、4つ?でしょうか。
aとbとb-c、a-cからなるハーンのスピンエコー3つに、セカンドスピンエコーの青、さらにSTE、この2つが重なっているので、答えは4つと考えたのですが、
答えの中に4がありません。
更に、熟考すると、そこにグラジエントエコー(緑で付け足した部分)、それぞれのRF pulseの後にグラジエントエコーも発生するだろうから、4+3=7で4番が正解かなと考えます。
動画では、pulse間隔を変えたVersion も図にしてみましたので、動画もご参考に。
7) 1-2-1 の二項展開パルス(binomial expansion pulses)によって水を励起する.1 H の共鳴周波数を f [MHz],ケミカル シフトを C [ppm]とした場合のパルス間隔はどれか.
1. C・f
2. 2・C・f
3. 1 / (C・f )
4. 2 / (C・f )
5. 1 / (2・C・f )
答 5
RFパルスで励起する際に、何回かに分割してRFパルスを印加して、90度励起する方法を2項展開パルス(binominal expansion pulses)と言います。
どのように分割するか は、下記のパスカルの三角形で示すような組み合わせが使用されます。1-1や1-2-1は代表的な組み合わせです。]
この2項パルスを使うことで、水と脂肪の共鳴周波数差を利用し、脂肪抑制撮像をすることができます。
赤が水で緑が脂肪だとすると、ある一定の時間間隔でpulseを印加すると、上記の図のように、水のみを励起することができ、脂肪抑制画像となります。
このある一定の時間間隔というのが、out of phaseです。
メーカーさんごとにこの2項展開パルスの名前は違いWater excitation、Proset、SSRF
と呼ばれています。メーカー毎の名前を覚えておくといいかもしれません。
パルスの間隔が Out of phaseの時間 というのはわかりましたので、数字で書くと
水と脂肪の周波数差3.5ppmで考えると、単位をHzに直して
3.5ppm×64MHz=224MHz (1秒間に回転する数)
回転するのにかかる時間は?
1÷224 = 0.00446
その半分の時間がopposed phase ⇒ 0.0046÷2=0.0023sec(2.3msec) です。
この式を、f (MHz), C(ppm )に置き換えると、
1秒間に回転する数:C×f
1回転にかかる時間(周期):1/(C・f )
その半分の時間 ⇒ 1/(2・C・f )
8) X 軸に対して 20mT/m の傾斜磁場をかけた場合,磁場中心から X 軸方向に 10cm,Y 軸方向にも 10cm 離れた地 点の磁場はどれか.
1. 1mT
2. 1.4mT
3. 2mT
4. 4mT
5. 10mT
答 3
20mT/mとは、10cm移動するごとに2mT上がるということです。
その傾斜磁場をx軸だけにかけると、xの座標の10cmの所では静磁場+2mT上がり、
20cmの座標では4mT上がります。
問題を見てみると、x軸方向にy軸方向に10cmです。
x軸方向に10cmなので、2mT上がりますが、y軸方向には傾斜磁場かかってないのでy方向はどれも同じはずです。図のように赤く示した部分です。
なので磁場の強さは、静磁場+2mT です。
よって3が正解? 静磁場は0なのかな? と疑問。
9) 傾斜磁場の波形を以下に示す.この傾斜磁場波形のスリューレート(mT/m/s)で正しいのはどれか.
1. G / d
2. G / d×10-6
3. G×10-3 / d
4. 2G / d×10-6
5. G / 2d×10-6
答 2
目的の磁場強度まで立ち上がる時間がスリューレートで、計算式は小学校の時に習った「みはじ」とか「きはじ」って所で考えると「距離/時間」でいいと思います。
注意点は、GはmT/mでdがμs(マイクロセカンド)になっています。実際スリューレートの単位を見ると、mT/m/sなので、μsをmsに直さないといけないです。
μsはmsに直すと10の6乗なので、G /(d・10-6) となります。
10)正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. 部分フーリエ法は撮像時間を短縮できる.
2. ゼロ充填補間法は空間分解能が向上する.
3. 実空間の位置(座標)はk 空間の位置に対応している.
4. 実空間のピクセル径(ΔX)の逆数がk 空間の横軸の長さ(kx)になる.
5. k 空間の空間周波数成分(Δkx)の逆数が実空間のピクセル径(ΔX)になる.
答え ・・・1と2は△、4が〇 なので2つ選べとすると、2と4 でしょうか
1:〇でもあり、×でもある。
部分フーリエ法は、つまりpartial fourier 法のことで、MRI画像は、k-spaceの持つ共役対称性の性質から、約半分のデータがあれば、補間によって再構成できるといわれてます。
実際は、k-spaceの中心部分は補間しないように6割程度は充填するようにしていると思います。この方法を部分フーリエ法と呼んでます。
位相エンコードのstep数が減るので、SE法やGRE法では、撮像時間は短くなります。
ただし、singleshot系のシーケンス(DWIやSSFSE、HASTE)はどうでしょうか?
これはもともと1回の励起ですべての位相エンコードstepを充填するので、撮像時間は変わりませんね。(データ収集している時間は減っています)
ということで、
1は、〇だと思いますが、シーケンスによっては×なので、?です。
2:〇でもあり、×でもある。
ゼロ充填補間法は、zero-fillingという補間法のことと思います。これは、k-spaceの周囲に0を配置させてk-space全体を大きくする=imageドメインでは空間分解能を高くする ことができます。(逆に、imageドメインでFOVを大きくする = k spaceでは、より細かく収集する(⊿Kxが小さくなる)です)
なので、0 fillingをすると、数値上の空間分解能は高くなるはずです。
ただし、視覚的に分解能が高くなるかというと?です。ぼけた感じに見える可能性もあります。
3:×、4:〇、5:×
3~5は、同じ内容の質問です。
まず、実空間での位置(座標)は、k空間の位置とは対応しません。
イメージで書くと、下の図のような感じです。
実空間のピクセル径、つまり空間分解能は、k空間では、原点からどこまで遠いところまでデータを収集するか、つまりk空間でのFOVの大きさで決まります。
上記の図での記号であらわすと、kx=1/⊿x となります。
11) 正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. 傾斜磁場は磁気モーメントの位相分散(dephasing)を伴う.
2. 傾斜磁場強度が低いほど,薄いスライス厚の撮像が可能である.
3. 送信BW(バンド幅)が広いほど,薄いスライス厚の撮像が可能である.
4. 励起RF パルスはシンク波で左右のローブが多いほどフーリエ変換は矩形に近づく.
5. スライス選択傾斜磁場(GZ)をt 時間印加したことによる位相分散を再収束させるには,
極性が反対で同じ強さの傾斜磁場(-GZ)を同じt 時間印加すればよい.
答 1、4、
2、3は、スライス厚の問題です。
左の図は、傾斜磁場強度をしています。傾斜磁場が強いほど、薄いスライス厚での撮像が可能です。
右の図は、送信バンド幅の比較です。送信バンド幅が狭い方が、薄いスライス厚の撮像になります。
4:シンク波をフーリエ変換すると、矩形波になります。これは重要なので覚えておくといいでしょう。
参考:https://wirelesspi.com/pulse-shaping-filter/
サイドローブを無限にとると、完全な矩形になりますが、サイドローブが少ないと、矩形の形が悪くなり、slice profileが悪くなります。
5:これは、迷う問題だと思います。
1の記載のように、傾斜磁場を印加すると、その大きさと時間に応じて位相分散(dephasing)がおきます。下の図では、黒い□が傾斜磁場の強さ、時間をしめし、オレンジの点線はそれによる位相分散を示しています。
傾斜磁場をかけた分、位相分散するため、これをキャンセルするには、同じ面積をもつ逆極性の傾斜磁場を印加する必要があります。
と、考えると、5の記述は正しく見えますが、
5はスライス選択傾斜磁場ということなので、ここにRFpulseを追記してみましょう。
RFpulseには、励起するとともに位相もそろえる効果があるため、傾斜磁場による位相分散はisodelayの時間のみになります。
このisodelayは、RFexcitationのpeak~endまで、つまりSinc波やSLRパルスでは、約半分の時間に相当します。
(Generally the isodelay corresponds to the amount of time from the peak to the end of the RF excitation pulse. For SINC and linear-phase SLR pulses the isodelay is nearly equal to one-half the RF pulse width. : HANDBOOK OF MRI Pulse Sequence p75 より抜粋 )
ということで、今回の問題では、同じ傾斜磁場強度であれば、t/2時間 負の方向に印加すればよいことになります。
12) 化学シフトに関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. 水の1H 原子核の化学シフトは脂肪より約3.5ppm 低い.
2. 化学シフトアーチファクトは受信バンド幅を広げると強くなる.
3. 第2 の化学シフトアーチファクトはあらゆる方向に出現する.
4. 第2 の化学シフトアーチファクトを利用すると脂肪を定量できる.
5. EPI を除き化学シフトアーチファクトは位相エンコード方向に現れる.
答 3、4
1:水と脂肪には、3.5ppmの差がありますが、周波数が高いのは水4.26ppmで、脂肪の主な周波数は0.9~1.4ppm に存在します。
引用元:MR Spectroscopy of the Liver: Principles and Clinical Applications
(https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/rg.296095520)
脂肪に含まれるプロトンは、水に比べ分子構造が多いため、プトロンの周囲に多くの電子で囲まれています。この電子雲に磁場の強さが阻害され、脂肪の中のプロトンは、静磁場よりも弱い磁場を感じており、ω=γ・Bから、周波数が少し低くなります。
2、5:ケミカルシフトアーチファクトは、水と脂肪の共鳴周波数の差により、周波数エンコード時に脂肪信号が本来の位置よりも低周波側にズレてしまうことで起こります。
脂肪信号を周波数エンコードするときに、装置は水と思ってエンコードしているので、画像化してみると、もともと周波数の低い脂肪が、低い位置に画像化された という感じです。
水と脂肪の周波数差は3.5ppmつまり1.5Tでは約224Hzの差があり、位置ズレも224Hz分ズレます。そう考えると、受信のバンド幅を広げ、1pixelあたり224Hz以上のバンド幅を持てば、画像上のずれは1pixel以内に収まりアーチファクトの低減につながります。
このケミカルシフトアーチファクトは、基本的に上の図のように周波数エンコードの際に起こりますが、位相エンコード方向では起こるのか?も知っておくといいです。
一般的な位相エンコードの方法では、ケミカルシフトアーチファクトは生じません。
これは、位相エンコードの各stepは独立しているため、バンド幅としては∞になるためです。ただし、EPIのような一筆書きのデータ収取では、位相エンコード方向にもサンプリング時間(間隔)の概念が生まれ、バンド幅が存在することになります。そのため、EPIをつかったDWI画像では、位相エンコード方向にケミカルシフト(歪み)が生じます。
引用元:http://www.sart.jp/member2005/backnumbar/2011/4/gakujutsu.pdf
3、4:
1つのボクセル内に水と脂肪が混在しているとき、それぞれの周波数の差によって下の図のように、同位相(a、d)や逆位相(c)になることがGRE法では起こります。これを第2の化学シフトアーチファクトといい、DIXON法などへ利用されています。
最近ではGREだけでなくTSE法でもDIXON法はあります。
引用元:http://www.sart.jp/member2005/backnumbar/2011/4/gakujutsu.pdf
この第2の化学シフトアーチファクトは、画像のコントラストに影響をかえるもので、
周波数エンコードや位相エンコードの方向に関係なく、現れます。
またこの方法を利用して、脂肪含有率を定量することが可能です。
引用元:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3002753/
Quantification of Liver Fat with Magnetic Resonance Imaging
最近では、multi echoの画像から、T2*減衰を補正した脂肪含有率の定量化もされています。
13) NEMA における均一性測定に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. スライス厚は10 ㎜以上にする.
2. スパンΔは(Smax-Smin)/2 である.
3. TR は信号発生物のT1 値の3 倍以上にする.
4. データ収集マトリクスは256×256 以上にする.
5. 撮像画像に9 点ローパスフィルター処理を行う.
答 2、5
均一性測定では、撮像した画像にROIを設定(ファントムの75%以上の大きさにする)し、得られる信号値のMax、Minからスパン⊿と信号平均値Saveを出し、均一性の指標となるU を求めます。
⊿=(Smax-Smin)/2
Save=(Smax+Smin)/2
U=±100・⊿/Save =±100・(Smax-Smin)/(Smax+Smin)
Uが0に近いほど、均一という評価になる。
NEMAで指定されている各評価のファントム撮像時の指定パラメータは下記です。
引用元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmp1992/17/1/17_53/_pdf/-char/ja MRI装置のQA より
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmp1992/17/1/17_53/_pdf/-char/ja
MRI装置のQAに各評価の計測法が詳しく載っていますので、ご参照ください。
均一性(Uniformity )では、slice厚は10㎜以下、TRは測定する物質のT1値の5倍以下となっています。
TRを測定する物質のT1値の3倍以上にするのは、Slice厚測定 のようです。
均一性試験なので、MT効果やクロストークの影響をなくすためにsingle sliceでの撮像が推奨されていると思います。
画像に含まれるノイズが、均一性評価の結果に影響をあたえるため、平滑化処理が行われる場合があります。9点ローパスフィルターもその平滑化フィルターの1つなので、正解としました。ガウシアンフィルターでもいいと思います。もともとSNRが高ければ、フィルターなしでもOKではないかと・・・。
Matrix の指定はないので、通常の範囲でいいと思います。
14) NEMA におけるスライス厚測定に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. 高速SE 法が望ましい.
2. シングルスライスで撮像する.
3. TR は信号発生物質のT1 値の3 倍以上にする.
4. ウエッジ法のスライス厚はFWHM × tan 𝛼である.
5. ウェッジファントムが2 つあるのは磁場不均一の補正のためである.
答 3、4
13で示した表と引用文献を参照ください。
装置のQAとしてはTEが1つのSpin echo 方が望ましく、slice厚測定では3slice以上を設定してください。
シーケンスやパラメータによるslice厚特性を見たい場合には、Spin echoに限らなくてもいいと思います。
TRは、ファントムのT1値の3倍以上とします。
ウェッジファントムが2つあるのは、撮像時のファントムの傾き(y軸への回転)補正のためにあります。
ウェッジファントム1つの場合の計算式は、下の図を参考に(回転補正なし)
スライス厚=FWHM・tanα
になります。
15) NEMA におけるSNR 測定に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. 部屋とファントムの温度は22±4℃にする.
2. 信号発生物質のT2値は50ms以下である.
3.信号発生物質のT1値は1200ms以上である.
4.TEは信号発生物のT2値の1/2以上にする.
5.TRは信号発生物のT1値の3倍以上にする.
答 1、5 かな?
13で示した、表や引用元の文献では、SNR測定時のTRは、測定物質のT1値の5倍以下と記載されていましたが、日本磁気共鳴専門技術者認定機(http://plaza.umin.ac.jp/~JMRTS/exam/exam2.html)のHPでは、撮像条件は下記に記されていました。
2)ファントムについて
・頭部:最小寸法は撮像面内で直径10cmの円または保証範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
・体幹部:最小寸法は撮像面内で直径20cmの円または補償範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
・T1値<1200ms、T2値>50ms
・頭部と体幹部の2種類の大きさのファントムを使用すること。
3)撮像条件
・ファントムはアイソセンターに置かれたRF受信コイルの中心に配置する。
・室温およびファントム温度は22±4℃。
・Spin echo(SE)法が望ましいが、必ずしもこの限りではない。
・TR≧3×T1、TEは一般的に臨床に使用される範囲。
・シングルスライスで、撮像面はAxial。
・FOVは面内においてRFコイルの最大径の110%を超えないこと。
・スライス厚≦10mm
・表面コイルは使用できない。
・Parallel imagingを使用してはいけない。
・ROIは画像断面の75%は少なくとも囲むこと。
ということで、1、5を正解とします。
16) パラレルイメージングファクタを1 から2 に増やし,受信バンド幅を2 倍,スライス厚を2 倍にした場合のSNR はどれか.
※ジオメトリファクターは無視する
1. 1/2
2. 1/√2
3. 1
4. 1 × √2
5. 2
答 3
下記の式より、
BWを2倍にすると、SNRは1/√2 倍
スライス厚を2倍にすると、SNRは2 倍
パラレルイメージングでは、位相エンコード数が1/2 になりますが、ボクセルサイズは変わらないため、データ量として1/√2 になる。
つまり、全体では、1/√2 ×2×1/√2 = 1
参考に、パラレルイメージングを使用したときのSNRpは、
SNRp = SNR /(√R×g₋factor)
R:reduction factor
g – factor : ジオメトリファクター
17)スピンエコー法に対する高速スピンエコー法の特徴に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. 脂肪の信号が高くなる.
2. T1コントラストが向上する.
3. T2コントラストが向上する.
4. T2値の長い組織の信号が強調される.
5. メタルアーチファクトの影響が顕著になる.
答 1, 4
SEとTSEの違いに関する問題ですね。TSEはTurbo Factor(TF)の数だけ1TRでEchoを取得することが大きな違いです。
そのため、データを取得するDuration自体もTSEの方が長くなります。
※ただし、問題文にはTurbo Factorの値に関する記載はないですね笑
これTSE Turbo Factor=1ということだったら逆にややこしい問題になりますが・・・
まぁ素直に高い値のTFだと想定して解きます。
1 ここで着目すべきはJカップリングです。
SEではJカップリングが起きることにより、脂肪信号が低下します。
一方、TSEでは再収束パルスを短い時間で連続で印加するため、Jカップリングは阻害されるので、脂肪の信号は低下しません。
そのため、TSEの方が脂肪信号は高く出ます。
よって〇です。
※下記の文献でSEとTSEの脂肪の信号強度による違いが画像付きで掲載されています。
Bright Fat on FSE - Questions and Answers in MRI (mri-q.com)
※Jカップリングに関しては、MRI完全解説【脂肪とタンパク質】の項目を参照すると学習しやすいです。
https://www.amazon.co.jp/%E6%B1%BA%E5%AE%9A%E7%89%88-MRI%E5%AE%8C%E5%85%A8%E8%A7%A3%E8%AA%AC-%E7%AC%AC2%E7%89%88-%E8%8D%92%E6%9C%A8-%E5%8A%9B/dp/478090885X
※その他下記の文献にもJカップリングに関してわかりやすい説明が掲載されています。
http://www.sart.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/7.Rensaikikaku.pdf
2&3 これは説明がどちらにも当てはまるので統一します。
TSEは再収束パルスが多く、これがMTパルスの働きをしてしまい、MT効果の起きやすい組織では、コントラスト低下が考えられます。これは、T1w画像でもT2w画像でも起きるので、どちらのコントラストも低下する可能性があります。
4 こちらも着目はMT効果の問題です。
MT効果は、組織によって起きやすい、起きにくい があります。
自由水の多い組織(CSF)ではMT効果は起きにくく、信号が強調されます。
よって〇
5 SE, TSEは共通して再収束パルスにより、磁場不均一の影響は小さくされています。
そのため、両者での磁場不均一の影響差は顕著ではないと考えます。
よって〇です。
18) マルチスライス法によるスピンエコー法(TR 500ms, TE 10ms, サンプリング時間 8ms)の撮像可能枚数の上限はどれか
1. 27 枚
2. 28 枚
3. 30 枚
4. 35 枚
5. 36 枚
答 4
解説 まず、スピンエコー法における信号収集までの過程を考えます。
90度励起パルス、180度反転パルス、その後にエコーが発生・サンプリングするのがスピンエコーです。
この過程の間に他のスライスを励起したりすることはできません。
ということは、1枚のスライスを90度パルスで励起し、エコーのサンプリングを行うまでの時間がわかれば、決まったTRの間で何度繰り返すことができるかを計算できます。
ここで、引っ掛けなのが、TEは90度励起パルスから発生エコーの中心までということです。
そのため、エコーは左右対称であるため実際にサンプリング時間にかかったのは、TEの値にサンプリング時間の半分の時間(この場合では4ms)を足す必要があります。
ということは、1枚のスライス当たりTEの10msとサンプリング時間の半分である4msを足して14ms/枚となります。
あとは、それがTR500msの中で何度繰り返されるか・・・によるので、
500÷14=35.714285……..
ということは35枚までは入るということです。
36枚入れるにはTRが約0.3ms足りないですね・・・(オシイ!!)
ということで答えは4です。
19)反転回復(IR)法に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. STIR 法は脂肪に対する特異性が低い.
2. STIR 法は CHESS 法より信号雑音比が向上する.
3. FLAIR 法はスライス非選択性の IR パルスを使用する.
4. White matter attenuated IR 法は脳組織の灰白質の信号を抑制できる.
5. Null point の時間は抑制したい組織の T1値に 0.693 を乗じと求めることができる
答 1, 5
1 この問題の場合、脂肪の選択性のことを指しています。
要は特異的に脂肪を抑制するかどうかといった意味です。
STIRは反転パルスからの回復時間で脂肪に似たT1値を抑制することになってしまうため、特異性は低いことになります。
2 STIRは全ての組織に反転パルスをかけます。一方で、Chessは脂肪組織のみに飽和パルス(90度若しくはその付近)を印加します。
このことから、STIRは全体的にChessと比べ信号は低くなってしまうので、SNR(信号雑音比)としても悪くなります。
3 スライス選択/非選択と問題にあることから、2Dの話であると考えます。
FLAIRはCSFの動きの影響を加味して、設定スライス厚以上の範囲にIRパルスを印加するような工夫がされています。(ここはメーカーによる差がある部分です)
仮に非選択(脳全体)にかけてしまうと、スライスの励起ごとに最初の縦磁化の極性が、上下してしまうので、ダメですね。
ということで、2Dにおいては、選択的にIRパルスを印加するので、×とします。
4 White matter attenuated IR法!?聞いたことないぞ?
そう思ってしまっても落ち着きましょう。
あえて違う呼び名や回りくどい表現をしてるので、惑わされてはダメです。(とはいえ文献上存在します)
英語を紐解くと、白質が弱毒化されたIR、白質信号が落とされてるという意味に取れますね。
なので、この時点で灰白質(Gray matter)が抑制されたわけではないことが想像できるので、知らなくても自ずと×となります。
ちなみに、CSFと白質の信号を抑制するのに使用するDouble IR法とも呼ばれているスキャン法もあります。
5 Null pointとは全ての組織が縦磁化回復する69.3%の部分で0(null)となると言われております。
教科書ではTI=ln2(T1)として書いていたりします。Ln2=Log2のため、0.693となります。
ただし、その組織の磁化が完全に回復していることが前提ですのでご注意ください。
例えばTRが短くて、完全に回復していない場合は、null pointは変わります。
今回の問題では、正解が2つで、2、3、4が×なので、5は正解とします。
よって〇ですね。
20)Single-shot EPI に対する multi-shot EPI の特徴に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. 撮像時間が短い.
2. 磁化率アーチファクトが増加する.
3. Readout 方向にも multishot 化できる.
4. 動きによるアーチファクトを生じやすい.
5. エヌハーフゴースト(N/2 ghost)を生じやすい.
答 3,4
ここでのmulti shot EPIはk-spaceをPhase方向、Readout方向にmulti shot化したそれぞれのシーケンスに関して出題していると考えます。
1 single shotの方が撮影時間は短くできるため×
2 echo spaceやデータ収集時間がmulti shotによる分割したシーケンスの方が小さくなるため、磁化率アーチファクトが減少する。よって×
3 Readout方向にもSegment化可能。※ただし、メーカーが限定される。
4 single shotの方が一般に動きに強いため、動きのアーチファクトは出やすくなる。よって〇
5 EPIの読み取り方法は一緒のため、N/2アーチファクトは変わらない。よって×
21)Apparent diffusion coefficient(ADC)に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. ADC 値の単位は[s/mm2 ]である.
2. 生体組織の温度は ADC 値に影響する.
3. 運動検出傾斜磁場の印可時間や間隔は同じ b 値であれば ADC 値に影響しない.
4. ADC 値を計算するためには運動検出傾斜磁場を 3 軸方向以上に印可しなければならない.
5. 大きな MPG(b2)の信号強度を S2,小さな MPG(b1)の信号強度を S1 とすると
ln(S1/S2)/(b2-b1)で求める ことができる.
答 2,5
1 これはb値の単位です。ADCの単位は記載されていないことも多いが、書く場合はb値の逆数となることから、mm2/secとなる。
よって×
2 拡散係数は、生体組織の温度に比例します。温度が高いと拡散しやすいということですね。
そのため、その拡散強調画像からADCが作成されるため、実際のADC値にも影響を及ぼしてしまいます。
よって〇
※参考文献 拡散MRI 拡散Ⅱ ストークス-アインシュタインの式
https://gakken-mesh.jp/book/detail/9784879623416.html
#熱伝導方程式 #ストークス-アインシュタインの式
3 これは、少し判断しがたい問題です。
もともとADCは、定量値として考えられているので、本来、パラメータによって変動してほしくないのですが、撮像シーケンス、diffusion time、Vender間でもADCに変動がでることもあります。特にDiffusion timeは、拡散の運動を観測する時間なので、ADCに大きくかかわります。
b値の定義式はγ2G2δ2(Δ-δ/3)と定義されていて、
γ=磁気回転比、G=傾斜磁場強度、δ=MPG印加時間、Δ=MPG間隔 です。
δやΔはDiffusion timeに関わる因子で、このDiffusion timeが同じb値であれば、ADCも一定であってほしいところ・・・・だけど、シーケンスが違えば、ADCに影響しそうなど、いろいろ考えられるので、保留します。
他に正しい記述があればそれを優先しましょう。
※b値の定義式の参考文献 拡散MRI (拡散強調画像の特徴より(6-1-6))
https://gakken-mesh.jp/book/detail/9784879623416.html
運動検出傾斜磁場というキーワードが慣れ親しみないと思いますが、MPG(Motion Probing Gradient)を日本語直訳しただけです。
こういったわざと日本語にしたり、他の言い回しにした上で理解度を求める傾向は多くの問題で見受けられますので、落ち着いて対処していきましょう。
4 MPGの軸が1つであったとしても各b値の画像は出てきます・・・が、1軸では異方性の影響で正しいADCになるのか?という疑問も。
肝臓では1軸DWIでも3軸と同程度のADC評価ができると論文出ていますので、
これは、× として、1軸でもいいよ としましょう。
そう考えると、3の、b値が同じであればADCは・・・は軸数違えば、ADC変わるね って話になるので、3も× ですね。
5 これは教科書などで算出過程をしっかり学んだ方が納得すると思いますが、
一応、図式しておきます。
ADCは、右図の傾きなので、ln(SI1/SI2)/(b2-b1) になります。
ADCの出し方は装置・条件によって計算過程は違うので、実際に装置を使う場合は把握する必要があります。
例:b値2点の場合1次直線だが、3点以上になると逐次近似直線になるなど・・・
※参考文献 拡散MRI (拡散強調画像の信号強度 (6-3-5)参照)
https://gakken-mesh.jp/book/detail/9784879623416.html
22) 正しい記述はどれか. 2 つ選べ
1. Compressed sensing(CS) MRI は画像容量を圧縮することができる.
2. Quantitative susceptibility mapping(QSM)は磁化率を定量することができる.
3. Synthetic MRI はデータベースを元に T1値や T2値などを推定するこができる.
4. MR fingerprinting は古典的なカーブフィッティングにて T1値や T2値などを推定することができる.
5. Chemical exchange saturation transfer(CEST) MRI は水素イオン指数の変化を捉えることができる.
比較的最新技術にフォーカスした問題です。
答 2,5
1 Compressed Sensing(CS)は、画像の圧縮技術を応用していますが、MRI画像そのも
のを圧縮していることではありません。
不可逆圧縮した画像も、ある条件下では復元できる という技術をMRIに応用して、きれいな画像を作るには全然足りないデータ量(圧縮された量)から、iterative reconstructionをすることで最適な画像を作る技術です。
そのため、再構成された画像のデータ量は、画素数と色のbit数で決まるのでCSを使っていない画像と同じです。
2 言葉の和訳そのままに磁化率を定量化できるmappingです。
SWI(Susceptibility weighted Imaging)は、T2 *w画像に、位相情報を組み合わせて組織の磁化率を強調した画像ですが、QSMはその磁化率を定量的に評価できる技術です。
SWIと同様に、Magnitude画像とPhase 画像を用います。QSMの解析法には truncation 法, TKD ( Threshold-based k-space Division ) 法 , MEDI (Morphology Enabled Dipole Inversion)法など、いろいろ提唱されています。
※参考文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/mii/32/4/32_liv/_pdf/-char/en
こんなHPもありますよ
http://pre.weill.cornell.edu/mri/pages/qsm.html
QSMのソフトを提供してくれるようです。
よって〇
3 Synthetic MRIは、1回の撮像でT1値、T2値、プロトン密度のような定量値を取得し、この定量値から、retrospectiveにTR、TE、TIなどを設定してT1wやT2wなどの画像を作る技術を言います。代表的なものは、GEのMAGiC です。
データベースからT1値やT2値を推定するものは、MRF(Finger printing)と呼ばれている別の技術となります。
※文献:https://www.innervision.co.jp/ressources/pdf/innervision2018/iv201809_022.pdf
よって×
4 3で述べたように、MR Fingerprinting(MRF)もSynthetic MRIと同様に1回の撮像で、T1値やT2値、プロトン密度などの定量値を得られる技術 という面では似ていますが、その定量値を推定する手法が大きく異なります。
Synthetic MRIは、T1値を得るためには、TRもしくはTIの異なるデータを取得、T2値を得るには複数のTEのデータという、それぞれの緩和時間を測定するために必要なパルスシーケンスを組み合わせていますが、MRFは、固定のTR、TE、FAを繰り返し行う撮像ではなく、MRF用にデザインされたランダムなTR、TE、FAでデータを取得します。
また、この撮像をしたら、こんなデータが取得できるはずです という組織毎のデータをシミュレーションで作成し、辞書として保持しておきます。
実際に取得したデータと、辞書にあるデータをマッチングさせて、T1値、T2値などを推定する技術がMRFです。
引用:Magnetic Resonance Fingerprinting-An Overview より
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5984038/
よって×
5 CESTは、MT(NOE、cross relaxation)に似た現象ですが、MTが励起や飽和されたプロトンと、双極子結合関係のプロトンとのエネルギー交換であるのに対し、CESTは、励起・飽和されたプロトン自体が、化学結合関係のプロトンと入れ替わる現象をいいます。
つまり、エネルギーだけの交換か、プロトンそのものが入れ変わるか です。
CESTの臨床応用の1つに、APT Imagingがあります。
APT は、3.5ppmに共鳴周波数をもつため、その周波数帯域でpre saturation pulse(CEST pulse)を印加すると、APTのプロトンが飽和します。この飽和したAPTのプロトンが、水分子のプロトンと交換され、水信号が低下します。
次に、-3.5ppmの共鳴周波数でpre saturation pulse(CEST pulse)を印加し、同じ撮像をします。この時はAPTのCEST効果による水信号の低下はないです。
この両者の水信号の差分をmap化したのが、APT Imagingです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmrm/advpub/0/advpub_2020-1721/_pdf/-char/ja
CESTは、プロトンそのものが交換現象を起こすといいましたが、この交換速度がpHに依存することもわかっています。
http://jsrtkinki.jp/wp/wp-content/uploads/db9d79b278f207edefd7a81ed208d26b.pdf
したがって、pH(水素イオン濃度指数)の変化をとらえる は〇
23) 脳血流を評価するためのArterial spin labeling(ASL)法に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. T2* 強調像を利用する.
2. 遅延血流がある場合には血管内信号が高くなることがある.
3. Post labeling delay(PLD) time は1 秒以下に設定しなければならない.
4. 血流に信号を与えるRF パルスの印加効率は,連続波の方が単独波より高い.
5. 本法で得られる脳血流定量値はヘマトクリット値やヘモグロビン濃度によって変化する.
答 :2のみ?
問題には2Dか3Dといった指定がないため、両方を考慮した上で考えます。
1 ASLは、Inversion pulseの印加された血液のInflowを見るものであり、縦磁化の大きさに着目したものです。そのため、T2やT2*による影響をなるべく減らしたいので、T2*強調画像は用いません。
よって×
2 血流が遅い場合は脳実質に血液が到着する時間にも関わらず、まだ血管内にタグパルスが残っていることがあります。
このような場合は高信号となります。
よって〇
3 PLDは文献にもよりますが、健常者でも1800-1900msと言われております。
そのため、1秒(1000ms)以下としてしまうと、タグパルスが当たった血液が来るには早すぎる時間となってしまいます。
小児などは若干早い報告(1600ms程度)がありますが、それでも早すぎる設定です。
よって、×
4 ラベリング効率は、下記の表を参考に
引用:Recommended Implementation of Arterial Spin-Labeled Perfusion MRI for Clinical Applications: A Consensus of the ISMRM Perfusion Study Group and the European Consortium for ASL in Dementia より
ごく短いpulseでラベリングするPASLは、血流の影響を受けにくいため、ラベリング効率は高いです。一方、CASLやpCASLのような連続的なIRpulseは、血流の影響を受けラベリング効率はPASLよりも劣ります。
・CASL、PASL、pCASLのラベリング効率を述べた論文↓
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mrm.21403
・pCASLのラベリング効率を検討した文献↓
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2922009/
ラベルする位置、血液の速さで効率が変わっているのがわかります。
ということで、4も×
5 ASL信号からCBFを算出する式には、ヘマトクリットの値は含まれていないので、
引用:Recommended Implementation of Arterial Spin-Labeled Perfusion MRI for Clinical Applications: A Consensus of the ISMRM Perfusion Study Group and the European Consortium for ASL in Dementia より
ヘマトクリットには依存しません。
DSC perfusion から得られるCBFは、ヘマトクリットに依存します。
こんな文献を見つけました↓
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4821017/
DSCperfusionで算出したヘマトクリット依存のCBFと、ASLから得たヘマトクリット非依存のCBFから、脳内のヘマトクリット値を算出する というものです。
ということで、×です。
答えが、2のみになってしましました・・・・
4のRFパルスの印加効率というのがラベリング効率という意味か、もしくは、最終ASL信号として取得できるSNRという意味か。後者であれば、長時間ラベリングできるCASLやpCASLの方がASL信号のSNRは高くなりますので、〇?
まさか、1がのT2*強調画像というのが・・・
使用するシーケンス的に、EPIなので、T2*の影響が出る と言われれば・・・
3Dは、3D RARE stack of spirals や3D GRASEを使用するので、T2 *の影響は出にくいだろうと。
24) 脳卒中のMRI 検査に関する正しい記述はどれか. 3 つ選べ.
1. 早期の脳梗塞部の多くは見かけの拡散係数(ADC)が上昇する.
2. アルテプラーゼ(rt-PA)の適応選択にMRI を用いることができる.
3. アルテプラーゼ(rt-PA)治療後の経過観察にMRI を用いことができる.
4. 脳血管解離が疑われた場合でも拡散強調像で梗塞巣があればアルテプラーゼ(rt-PA)は適応である.
5. 発症後8 時間を超え16 時間以内の急性期脳梗塞に対して血栓回収術を施行する場合は,灌流と臨床所見等のミスマッチを検出する必要がある.
答 2、3、5
rt-PAのガイドライン↓
https://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA03.pdf
この問題は、間違いを探す方が早いでしょう
1 早期の脳梗塞はDWIで高信号、ADCは低下します。
あまりにも早期だと、DWIでも高信号が出現せず、ADCも変化しないことがあります。
なので、1は×
4 rt-PAの適応は、「全ての臨床カテゴリーの虚血性脳血管障害患者(アテローム血栓性梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症、その他の原因確定・未確定の脳梗塞、本治療の後に症候が消失した一過性脳虚血発作を含む)である」(ガイドラインより)
なので、解離による脳梗塞は対象外と考えます。
解離していたら、出血の可能性もあるので、怖いですよね。
rt-PAと解離といえば、胸部の大動脈解離にも注意しましょう。命にかかわる危険性があります。
5 2019年のガイドライン改訂前は、
rt-PAは発症後4.5h以内
血栓回収は6h以内
でしたが、2019年の改訂後
rt-PA:
4.5h以内は変わらないが、発症時間不明な場合、DWI/FLAIRミスマッチがあれば4.5h以内と判断でき、wake up strokeへの適応が広がりました。
血栓回収:
発症後6時間以上でも、梗塞領域と臨床所見のミスマッチや、虚血コアと灌流異常領域のミスマッチを、画像診断を基に判断した場合、16hまたは最大24hまで、血栓回収療法をできるようになりました。
25)Proton MR spectroscopy(MRS)に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. 肝性脳症はグルタミンが低下する.
2. 脳虚血は乳酸(lactate) が低下する.
3. 多発性硬化症はコリン(cho)が上昇する.
4. 放射線壊死のような病態では脂質(lipid)が上昇する.
5. びまん性軸索損傷は NAA(N-acetyl-aspartate)が上昇する.
答 3、4
1 これは正直難しい内容です。そのため、これを覚えるというより他の選択肢で正しいものを探した方が得策です。
肝性脳症自体は血液中に多くのアンモニアが残ってしまいます。
肝障害がある患者では、血液中にアンモニアがたまり高アンモニア血症の要因となります。
よって、高アンモニア血症の記述で正しいものを選択します。
高アンモニア血症ではグルタミン(Gln+Glu)が高値と報告されています。
よって×
2 脳虚血では、酸素を利用した代謝ができなくなり、嫌気性代謝の副産物として乳酸がたまります。なので、lactateは上昇します。
3 多発性硬化症では、急性期ではChoは上昇し、NAAは低下。慢性期でChoは正常値に戻るという報告があります。
4 放射線壊死では、Lipid ピークが上昇するようです、Lipid はLacとppmが近いため、分離するのが難しいですが、Lacは反対向きのピークになるTEで撮像するなどの工夫がされます。Lipidを含むのか、Lacなのかで放射線壊死か腫瘍再発化をみるんだと思います。
5 びまん性軸索損傷は軸索が損傷しているので、神経伝達物質の指標であるNAAは低下するだろうと思います。
Proton MRSの臨床有用性コンセンサスガイドライン 高アンモニア血症、高アンモニア性脳症
http://www.jsmrm.jp/modules/other/index.php?content_id=5
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