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些細なこと

些細なことで気持ちが沈んでしまった。

本当に些細なこと。
誰も悪くない。
仕方のないこと。

久しぶりの電話の約束だったのに通知に気づかなくて時間が遅くなってしまったから、急いで電話したの。

「もしもし、遅くなってごめんね」

「大丈夫?」
「もしかして元気ない?眠い?」


まだ話してもないのになんでばれたの?
せっかくの電話なのに楽しく話さなきゃ。
まだ間に合う。

「大丈夫だよ、ごめんね」

胸が重くて痛かった。涙が溢れた。

そのあとは普通に話した。話してたつもりだった。
だけど彼が感じた違和感は拭えなくて。


「ねぇ、何があったの?話して?」


何にもないよ、ほんとに。何にもないの。大丈夫だから。
取り繕う私。なんで、せっかく電話してくれたんだから楽しい話をしたいのに。
こんな落ち込んでて惨めな姿見せたくない。
いつも泣いてたらめんどくさいって嫌われちゃう。

「何にもなくないでしょ」
「いいから話して」

こんな時、いつも強引だ。
私が話すまで絶対に折れてくれない。
どうしても彼に勝てない。また涙が溢れた。

私は些細な出来事を話した。

誰も悪くない、仕方がないこと。

本当は誰かが悪いんじゃないかと思ってしまうこと。
悔しくて憤っていること。

頑張ることが無駄になっている気がすること。
意味のないことだと思ってしまうこと。
誰にも認められず、惨めだと思うこと。

腐ったら負けだと知っているから、頑張るしかないこと。

涙が溢れてうまく話せなかったけど、最後までちゃんと聞いてくれた。

「偉い!お主偉いぞ!」
「でも休んでいいんだよ。休憩していいんだよ。」

そんなふうに言うのがおかしくて嬉しいのに。

涙が止まらない。
子供みたいに声をあげて泣くしかできなかった。


私が落ち着くと、少し話して一緒に寝ることにした。
彼は疲れてるからすぐに寝ちゃったから電話を切った。

彼が気がついてくれて、折れずに、手を離さずにいてくれて良かった。
心底そう思った。

そして心底わからないこと。

どうしてこんなに素敵な彼が私のそばにいてくれるの?
私はもらった分を彼に返せているのかな?

考えてもわからないから、できることから返すしかできないと思った。それがどんなに些細なことでも。

些細なことに気づいてくれる彼、些細なことで泣いちゃう私。

そんな些細な話。

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