ビシッと格好いい父、またはその反対

こんにちは。ゆりりうすです。
久しぶりに寝言の話から始めます。少したまりました。
①「いやいやいや、違う違う。」(誰かとしゃべっているらしい)
「今、あなたが考えなきゃならないのは『ガバナンス』じゃなくて『ガバメント』だろう!」
誰と話していたのかが、一目瞭然です。
②「うんうん、そうやって考えることはすごく良いことだよ。でもまだちょっと狭いかな。あのねー、俯瞰も合わせて4つくらいの視点を持つと、だいぶ考え方が広がるよ。私もやっている。けど若いのに、その辺まで考えているのはすごいOKなことだよ!」
わー、何様だろう、私。
③「ふっふっふ」(笑っている)「今どきさあ、カツオがおやつをつまみ食いするんじゃないんだから、ラップくらいかけるでしょ。そのまま皿でおやつしまうなんてさー(笑)。」
④「うーん、今回は生かしておけば?わざわざ殺さなくてもいいでしょ。生かしておこうよ、後がめんどくさいじゃん。」
物騒な寝言です。たぶん、前の晩に映画「ベイビーわるきゅーれ」(殺し屋の女子高生の話です)を観ていたから、その影響だと思います。普段間違っても、こんなこと言いませんよ、ゆりりうすは。
いかがです?相も変わらず、これを午前2時~3時くらいに大声で、しゃべっているそうです。
なぜなのか?なぞです。そしてなぞは続く…
今日は「ビシッと格好いい父、またはその反対」というお話です。
私の父は皆さん読んでいる方はご存知の通り、落語家でした。
33年前に亡くなりましたが、エピソードだらけの強烈な人物でした。
その父は落語家なので、着物はとにかく格好いいんです。当たり前に思う方が多いかも知れないけど、若手だと、まだまだ着物に着られちゃっている人が多い世界です。綺麗に格好良く着るのは難しいんですよ。
一番格好いいなあ、と思っていたのが、毎年、年末からお正月にかけての落語界のお年始詣りの時でした。羽織袴がビシッと決まっており、羽織には自分の芸名が入っている燕の紋入り。髪の毛は多めの、オールバック。まゆ毛も整えて、ひげも剃り、そりゃー、見とれるくらい格好良かったです。
なので、我が家では子供の頃、父親とお正月を迎えるということがありませんでした。商売柄、仕方ないですよね。その上、父の師匠の五代目柳家小さんの誕生日が1月2日だったので、その日も帰って来ません。
おめでたいことに、金の糸目をつけぬ世界。何かと物入りで、母もさぞかし大変だったのではないでしょうか。
それに加え、その当時の父は落語界一、横笛が上手くて、歌舞伎座からお呼びがかかることもしばしば。
父が着物を着て、タクシーの運転手さんに「歌舞伎座まで。」と言うと、ちゃんと裏口の楽屋口に車を停めてもらえたらしいです。
だから、着物を着ていた父は格好良かったです。それは間違いなく。
ところが、洋服となると、これがいけない。ダサイんです。
もう普段着なんてね、昭和の汚れた川っぺりに捨てられている、汚いキューピー人形みたいな服を着るんです。
それで外に出ようとするから、「チチー、ダメー!」とSPY×FAMILYのアーニャじゃなくても叫んじゃいますよね。ハラハラするくらい洋服がダメだった。
一度、新宿の寄席が終わって、私服に着替えて外に出たら、「おじさん、いい仕事あるよ。」って日雇い労働者と間違えられて、声をかけられたとか。
そんな格好をしていたんですね。どうして着物と洋服で、こんなに差があるんだっていうくらい洋服ダメだったなあ。
途中から、家でジャージとか着るようになっちゃったし。今どきの格好いいやつじゃないですよ。昔のダメダメな方のです。
今でも覚えている。紺色と水色のジャージで、ウサギにチャックのところを食べられてしまった代物。
うーん、やめて。
でも、ひと度着物となると、人の物でも黙っていられなかったのは職業柄なのかしら?
小学生の時、友達と縁日に行くので、「浴衣着せてー。」と父に言ったら「よしきた!」と張り切り、綺麗に着付けをしてくれたんですが、最後がいけない。襟を思いっきり「グイッ」って抜くんですよ。
いや、私小学生なのに、何か芸者さんみたいな玄人さんの着方になっちゃっているんですけど。
仕方なく、母に直してもらいました。あれはひどかった。
だから、家族でお出かけって時は、もう他の家族からチェック入りまくりです。
「背広は、うーん、コーデュロイなら、まあ、黄土色だけどいいか。」
「中に着る薄いセーターは、エンジ色だけど、まあいいか。」
「下はデニムか、うーん、まあいいや。」
こんな感じでした。
夏によく、甚平さんを着た男の子と、浴衣を着た女の子を見ますよね?
父はこれにも文句を言う。「だいたい、甚平なんてものはね、パジャマ代わりみたいなもんなんだから、せいぜいそれで外に出ても、1km以内だ。コンビニに行く距離くらい。ちゃんと女の子とお祭りとか、花火でデートしたかったら、自分も着物を着るべきだ。それから、着物を着ている子でも、あんまり高い位置に帯を巻いたらおかしいからね。まるで、サナトリウムにいる結核患者みたいになっちゃう。」
ギャーギャー、うるさい。
そんな父のお葬式。お棺の中でビシッと着物を着ていたかどうか。結構昔の記憶力がある、ゆりりうすなんだけど、覚えていないんですよ。
でも、誰も着付け出来ませんでしたし。たぶん、普通だったんじゃないかな。
きっと父のことだから、「それが心残りだった。」って言って、息を引き取りました。って最後まで落語調になっちゃたよ、ゆりりうす。
デデン。

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