#よしなにの10年
明日も仕事だしサクッと書く。
10年前のあの瞬間、僕は半裸でテイルズオブグレイセスFの秘奥義集を見ながらバイトへ行く準備を進めていた。
最初こそボンヤリと「揺れてる…?」と思っていたがその後間もなく「YouTube見てる場合じゃねえ」と認識し、とりあえず身の安全を確保する。
料理中の母の「頭守れ!」という怒号を耳にしながら暫くその場にステイ。すべてが落ち着いた時には物臭に机に積み上げた学校のプリントは床へ投げ出され、大多数の食器が粉々となり、コンロから落ちた味噌汁鍋は一切まわりに飛び散ることなくゴミ箱へジャストミートしていた。
風呂を洗っていた妹は玄関のドアを開けて避難通路を確保しながら揺れに耐えていた。我が妹ながらあの状況におけるベストな判断だったと思う。
一旦外へ出て同じ団地の住民と被害状況について話をする。
当時上の階に住んでいた女性の元へ男性が車で迎えに来ていた。
あまり話したことはなかったが既婚者であることは知っていたので、旦那さんが迎えに来ていたのかと思ったが、どうやら彼氏さんだったらしい。
前の年に、チリの落盤事故に巻き込まれた採掘作業員が救出された際に別居中の妻のかわりに愛人が迎えに来た、というニュースを見ていたので
「あれの日本版がこんな近くで…」
と謎の感動を覚えていた。
家族の安否はその日のうちに全員確認できた。
勾当台公園近くで働く父と当時フリーターの姉も夕方ごろには帰ってきて、その日はゴミ箱にジャストミートした味噌汁を除く晩飯をつつきながら居間に雑魚寝した。
姉は誕生日だった。
ここ数年姉は、3月11日のあの時間が近づくと車でどこかへ買い物や用事を済ませに行くらしい。
理由は「目をつぶらなくて済むから」とのことだった。
その後のことを全部書いてたら時間がいくらあっても足りないのでここに箇条書きにする。
翌日には電気が復旧した。
親戚全員の無事を確認できた。
当時の漫才の相方・伊藤の母から伊藤の無事を確認できた。
バイト先のコンビニで手売りの手伝いをして食糧を確保した。
スーパーに並ぶタイミングで中学の同級生と3年ぶりに再会した。
姉が関西へ出向になった。
2時間並んで極楽湯で体を洗った。
前年5月に勝った「もしも高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら」を読み終えた。
何故かこのタイミングでブラックコーヒーが飲めるようになった。
余震にビビった。
マジでなんでこのタイミングなんだと思いながら花粉症を発症した。
ダンガンロンパをプレイした。
まどマギ最終回の延期に憤った。
あの花にハマった。
ガスが1か月ぶりに通った。
家で風呂に入った。
三週間遅れで学校が始まった。
今日の仕事帰り。
ふと、あの瞬間のことを思い出してYouTubeで検索をかけてみると当時見ていたあの動画がまだ残っていた。
身の回りの人間があまり大きな被害を被らなかったこともあってか、自分の中で過去のことになりかけていたあの出来事を思い起こすきっかけとなった秘奥義集。
あれから10年。
現在、あの当時とはまた別の天災がきっかけとなり、家でYouTubeを見る頻度が俄然増えた。
今後日本はどうなっていくかはわからないけれど、たぶん僕は変わらずボンヤリとYouTubeを眺めながら身に降り掛かる理不尽な天災に立ち向かっていくのだろう。
とりあえず、そんな感じでボンヤリと、しかし図太く生き延びていきたいと思います。
最後に。
10年という節目を迎えた東北の未来が明るいことを願って。
コロナウイルスの迅速な収束を願って。
そして、これを読んでくれた全ての皆様がボンヤリYouTubeを眺めて時々ニヤニヤ笑いながら生きていけることを願って。
この言葉を以て締めさせていただきます。
よしなに!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
#それぞれの10年