人は1日100キロ歩いたらどうなるのか検証してみた【東京エクストリームウォーク100体験記】
2022年5月14日〜15日、生まれて初めて100キロウォークに参加しました。
数ある大会の中で選んだのが『東京エクストリームウォーク100』。
もともと、なぜ100キロウォークに参加する人がいるのか不思議だったので、自分自身で参加して検証したらいろいろ見えてくるんじゃないかということで参加してみることにしました。
道中に体験したことについて、感想を交えて記録しておきたいと思います。これを見て「100キロウォークって面白そうかも?」と思って、参加するキッカケにしていただいたら最高に嬉しいです。
大会概要
『東京エクストリームウォーク100』は朝日新聞社がスポンサーで開催する100キロウォーク。2,000人も参加する巨大な大会です。さすがに朝日新聞が主催だけあってブランディングが上手。デザインと写真と動画でオシャレ感を演出しています。
ところが、実際に参加してみるとかなり地獄です。「100kmっていったって、ずっと歩きだから楽勝だゼ!」的なノリで参加すると、間違いなく痛い目に遭います。100kmを歩き続けるには体力的にも精神的にも追い詰められるので、ある程度の事前準備と練習は必要になります。
ちなみに完歩率は76%(2022年5月開催)。4人に1人はリタイヤする程度に過酷であることは念頭に置いておきましょう。
コースはとてもシンプルです。小田原城をスタートして東に向かって海岸線をひたすら歩きます。
後半は江ノ島で内陸に折れて横浜〜川崎〜品川〜神宮外苑と北上します。
そもそもなんで100キロウォークを?
さて、ここで個人的なお話を。
数年前に知人が100キロウォークに参加して完歩したという話を聞いたとき、「なんでそんな無茶で無謀な大会に参加するんだろう?」と疑問に思ったことがあります。「罰ゲームみたい。ただツライだけなんじゃないの?」という印象がありました。
ところが、彼はとても楽しそうに充実した表情で「参加して良かった」と語っていたのが印象的でした。そこで私は、実際に参加すれば100キロウォークに参加する人の気持ちもわかるのではないかと考えたのです。
100キロを歩いた先には私の知らない世界があるかもしれない。100キロを歩いた自分はどう変わるのか知りたくなりました。
1日で100キロを歩いた先には何があるのか。
この問いに対する答えを得るために参加を決めました。
これまでの人生の中で、1日で100kmを歩いた経験はありません。自分がどれぐらいの時間で完歩できるか、もしくはできないのかわからない。
そこで、まずは軽いノリで「終電に間に合うようにゴールできたらいいな」という浅はかで漠然とした理由で16時間で完歩することを目標にしてみました。朝8時に小田原をスタートして夜12時に神宮外苑にゴールできたらそのまま終電に乗って帰れると。
ところが、実際に歩いてみて、とてもじゃないけど16時間で100kmなんて歩けないことを身をもって体験することになります。
何事もやってみて初めて見えてくることがあるものです。
スタート(小田原城址公園)〜第1AS(平塚漁港 しおかぜ広場)[0km-24km]
小田原城からスタートします。
天気予報では雨。そして実際に当日は雨。スタート時はかなりの大雨で、準備もそこそこにウェーブスタートは早回しで行われました。所定の時間では8:00だったのが、繰り上げされて7:40に出発です。
雨が降っていて準備できる場所もないので、どんどん出発させてしまえ!というノリでした。
ラッパの音とともにスタート。折り畳み傘を差しながら歩いていきます。予報では午後には雨はやむらしいので、しばらくの辛抱。
100キロウォークでは足の裏のマメが大敵です。クツが濡れてクツ下も濡れることで、足の裏にマメができてしまったら痛くて歩くのが遅くなる。それどころか、リタイヤの恐れも出てきます。そこで替えのクツ下を持参して、雨がやんだのを見計らって履き替えることにしました。
前を歩いている人はサンダルで歩いています。おそらく雨が止んだら乾いたシューズに履き替える作戦と思われます。なかなかの策士ですね。
100kmを歩く人たちが1,000人以上行進しているのは圧巻です。大行列って感じ。周囲にいる人は何が起こっているのか不思議そうな表情で眺めていて、恥ずかしくないこともありません。
スタート直後は参加者がまだバラけず、めちゃめちゃ長い列ができています。たびたび赤信号で人が渋滞して止まるため、ペース配分を考えるとかいう次元ではありません。慣れてくると「早くいけよ〜!」とイライラするのかもしれません。
ところが、私は初めてのウルトラウォーキング大会への参加。ノリがわからず緊張してドキドキしながら大人しくみんなについていくだけで精一杯。最初からガンガン周りの参加者を追い抜いていって良いのか、流れに合わせて歩き続けるべきなのかわからない。とりあえずなんとなくみんなについて歩くことにしました。
1時間ほどすると雨がやみました。さしていた傘を閉じてリュックサックに入れ、ついでに着ていたウインドブレーカーもたたむことに。両手が空き、半袖になってかなり身軽になりました。
しばらく歩き続けていると、少しずつ参加者がバラけてきました。歩きながらだんだんと心地良いペースで歩けるようになってきます。ペースができてくると、どんどん前の人を追い抜いていけて楽しくなってきました。
次第に前の方に進んでいくと、「いかにもプロ」という感じの競歩の選手っぽいクネクネした歩き方をする人が後ろに迫ってきました。服装もプロっぽく、自転車の選手が着るような胸チャックのジャージをピッチリ着込み、驚くほど速い。7km/h以上は出ている様子です。
そこでその方をペースメーカーとして使わせていただくことにしました。10メートルほど距離を置いて歩いていると楽にハイペースを維持できます。F1レースでよくみられる「スリップストリーム」的なイメージです。前の車にピッタリ着いて、空気の渦で引っぱられる感覚。徒歩では引っぱられるような空気の渦なんてできていませんが(笑)
さすがにその方は速いので、おいていかれそうになります。が、市街地ではすぐに赤信号で停められるので追いつけます。距離を空けられては赤信号で追いつき、また空けられては追いつくパターン。
そんな駆け引きをしていると勝負に集中できるせいか、時の経つのも忘れかなり距離を稼げました。
スタートから最初のエイドまでは、地図の上では海の近くを歩いていますが、市街地なためほとんど海を感じることはありません。初めて海を意識するのは、最初のエイドです。海を一望できます。
砂浜を通り過ぎて駐車場を抜けると、気持ちの良い芝生の広場に出ます。そこが第1エイドのしおかぜ広場。スタートから24km地点です。プロっぽい人に徹底的にくっついて歩いたので、4時間弱で到着しました。
エイドではミネラルウォーターとカップスープに加え、カレーパンを提供してくれます。カレーパンはめちゃめちゃウマかったです。
右足のかかとがヒリヒリ痛むので、テーピングを重ねて補強します。このまま放置すると大きなマメができて歩くことが苦痛になり、途中でリタイヤするハメになりかねません。早めの処置が超大事。
かかとには幅50mmの太めのテーピングが貼りやすいです。ズレても患部に当たっていてくれるからオススメ!細いテーピングは足の指に貼るのに有効です。
すぐに雨がやんだおかげで、クツ下もほとんど濡れていませんでした。交換せずに歩き続けることにしました。
ちなみに、クツ下は5本指のものがオススメです。指が分かれていないと、それぞれの指がぶつかってマメができやすい。その点、5本指くつ下だと各々の指がくるまれた状態なので、マメになりにくいメリットがあります。
このエイドでは、思ったよりもかかとの治療に時間がかかってしまって、30分近く休んでしまいました。
出発直前に『塩分チャージタブレッツ』を10個連続で食べ、たっぷりと塩分チャージして出発。
第1AS(平塚漁港 しおかぜ広場)〜第1CP(湘南海岸公園 クラゲ広場)[24km-36km]
しおかぜ広場からコースに戻ると、まっすぐで広い歩道を歩きます。とても歩きやすい!相模川を越えるときに橋の上から海が見渡せて良い気分です。
しばらくすると、コースは海岸線の遊歩道に入ります。ここを約10km歩く。信号もなく車も走っていないので非常に快適。その上アップダウンもなくてまっすぐなので、ペースを上げて飛ばせるのでタイムを稼げます。
雨がやむと、太陽がギラギラと照りつけるようになります。気温が高くなり、海からは熱風が吹いてきて、のぼせた状態になりました。
歩きやすいコースとのぼせた状態の相乗効果で、ウォーキングハイの恍惚状態になりました。めちゃめちゃ気持ちがいい!「いつまでもこの道を歩いていたい」という不思議な気持ちになりました。
この遊歩道は茅ヶ崎・辻堂・鵠沼海岸といった「いかにも湘南」的な土地を通っています。自然とサーファーと多く遭遇することになり、世の中にはサーファーという人たちがたくさんいることを知りました。(ちなみに湘南の定義については、神奈川県が進めている『かながわシープロジェクト Feel SHONAN』には「湯河原から三浦までの相模湾沿岸を『湘南』と呼びます」と書かれています)
サーファーにはかなりの年配の方もいて、サーフィンは生涯スポーツだと初めて知りました。
海岸線を歩き始めたときから遠くに江ノ島が見えますが、なかなか近づいてこないのがもどかしい。
ウォーキングハイのまま歩き続けたので、平均時速7km/hで歩きました。おかげで第1CPのクラゲ広場には13時前に着きました。
ここで事件が発生します。
今朝、乾電池式バッテリーチャージャーでスマホに充電した状態でリックサックに入れて運んできたのですが、まるで充電されていないことが発覚します。2時間以上充電しているのに、スマホのバッテリーは減る一方。おかげで写真も動画もまったく撮影できないハメに(この投稿に画像が少ないのはこの理由からです)
次回の100kmウォーキングではAnkerのしっかりしたバッテリーチャージャーを買って持ってくることを強く誓いました。
クラゲ広場のエイドに到着すると、おにぎりやジュースの種類が豊富で選び放題。スタッフさんたちから親切な声がけをしてもらって元気になりました。
このエイドが36km地点なので、ようやく全体の1/3をクリアしたことになります。このときは、自分が全体のうちどの位置にいるのかわかりませんでしたが、「ちょっと飛ばし過ぎかな」という漠然とした感覚はありました。ここまでかなり飛ばしたので、このペースで100kmを歩ききれるか若干の不安がありました。
第1CP(湘南海岸公園 クラゲ広場)〜第2CP(横浜市児童遊園地)[36km-56km]
ここまでのコースは、直射日光と海からの熱風で気温が高くて、心拍数が150を切ることがありませんでした。ここから内陸に入るので、少し涼しくなります。快適に歩けそうなので、ホッとひと安心。
ところが、地形も多少の起伏が出てきて、一定のペースを保つのが難しくなってきました。引き続き近くを歩いている人をペースメーカーにしてついていく戦略でペースを作ります。しかし、自分に適したペースで歩いている人が見つかりません。自分なりのペースを維持しようとするのですが、アップダウンが激しい地形と赤信号でつかまることでペースを乱されます。だんだんバテてきてしまいました。
コカコーラがめちゃめちゃ飲みたくなり、自販機で購入してガブガブ摂取。加えてアクエリアスをガブ飲み。塩分濃度が低いドリンクなので、うまく水分が体に吸収されずタプンタプンの満腹状態で歩き続けます。
50km地点で8時間を超えてしまったので、当初目標にしていた16時間以内にゴールできないことが判明。ここで軽く投げやりになりました。
緊張の糸がプツッと切れて、コンビニ前のベンチで足の裏のメンテナンスをすることに。ぼんやりしていると、年配の上品そうな親娘がやってきて「何かの大会ですか?がんばってください」と言ってくれました。知らない人に声をかけられることに慣れていなかったので、「は・・・はい、ありがとうございます。がんばりますっ」とシドロモドロになりながらお返事しました。
すると間をおかずに、年配のおじさんからも「がんばってね」とエールを送ってもらいました。
「ええっ、応援してくれる人がいるんだ」と軽く感動して、ムクムクとやる気が出てきました。自分を応援してくれる人がいることに気づける。東京エクストリームウォークに参加していると、いろいろな人から声をかけられるんです。元気の素です。
次のエイドである第2CPの横浜市児童遊園地までは、休んでいたコンビニから3km程度でした。
この公園は、敷地に入ってからのぼりとくだりがあって一番奥にエイドがあります。2食パンとコーヒーをいただきました。これがうまい!
しばらくくつろいでいると、ドーッと疲れが出てきてベンチからなかなか立てず、たっぷり休んでしまいました。
ここで日が暮れてきます。持ってきたヘッドライトを使おうとしたところ、まったく点かないというトラブルが発生。仕方なく無灯火のまま出発します。真っ暗ですが、街の灯りで問題なく歩けます。都会を歩くウォーキング大会のメリットです。
第2CP(横浜市児童遊園地)〜第2AS(ポートサイド公園)[56km-70km]
この区間を地図で見ると不自然に迂回しています。というのも、関内〜桜木町周辺の「いかにもヨコハマ」的なきらびやかなエリアをわざわざ通るからです。主催者側の演出なんでしょうね。ビルや観覧車がライトアップされて、本来なら楽しいコースです。
ところが、私が通過したのが19時〜20時だったため、家族連れやカップルがいっぱいでした。人がいっぱいすぎて歩きにくい。歩く速度も思うように上げられず、ひたすら人を避けて前に進むことに集中しました。
しかもコースが入り組んでいて、階段を登ったり人混みの中を歩いたり。結局、メンタル的に一番疲れた区間となりました。第2ASのポートサイド公園に到着したときはホッとしました。
ぶっちゃけ、個人的には保土ヶ谷から川崎に向かって国道1号線をまっすぐ突き進むコースにしてほしいというのが正直な感想です。
再び右のかかとがヒリヒリしてきました。第1エイドでテーピングを厚くしてあるので問題はないと思っていましたが、ふやけてすでに水ぶくれになっている様子です。ピンを刺して水を抜くのはあまり好きではないので、このままの状態で歩くことにしました。
エイドのベンチで休んでいてふと斜め前を見ると、スタート時にサンダルで歩いていた男性が椅子に座って丁寧に足の裏を拭いてメンテナンスしていました。しばらくすると、彼はおもむろに5本指くつ下をはき、しっかりシューズのヒモを結んで出発していました。やはり、雨が上がってからシューズが濡れないようにはく作戦だった様子です。彼のような参加者を観察していると、100キロウォークは体力以上に事前の準備や作戦が重要であることが見えてきます。
第2AS(ポートサイド公園)〜第3AS(稲毛神社)[70km-81km]
ポートサイド公園を出発時にトイレに寄ろうとしましたが、混んでいたのでそのまま出ることにしました。
突然寒くなってきてガタガタ震えてきました。気温が急に下がったのかな?と不思議に思いながら歩きます。道沿いに公園があってトイレがあったので用足しをしたところ、ピタッと震えが止まりまったく寒くなくなりました。快適になったところで再出発です。
次のエイドの稲毛神社は、ひたすら国道15号線を歩いて11km。アップダウンもなく歩道も広い快適な道が続きます。時折歩道橋を越えなければならないのが苦痛ですが。階段の上り下りをする際にヒザを曲げると痛みが走るのです。たまらずロキソニンを1錠摂取。効いたような効いてないような微妙な感覚です。
トレッキングポールを突きながら歩いている年配の男性が前方を歩いていました。足が痛すぎていよいよ歩けなくなりそうな雰囲気で、あえぎながらゆっくり歩いています。声をかけようとしたところ、そばにいた同じくポールを持った中年女性が駆け寄ってきて「大丈夫?」と話しかけました。どうやら連れのようです。
トレッキングポールは、山でトレイルランニングをする際に使うことがありますが、街中で使ったことはありません。「ポールを使うと4本足で歩くのと同じ効果がある」と専門家に教えてもらったことがあるので効果はあるのかもしれません。
しかし、地べたがアスファルトの街中でポールを突いて歩くと、地面に突いた時の衝撃がそのまま握っている掌に返ってくるので、手が痛くなって逆効果のような気がしなくもありません(あくまで主観的な意見です)この点については実験してみてもいいかもしれません。
とりあえず、大変そうな男性に「がんばって!」と念を送りつつ、先を急ぎました。
まっすぐなので、迷うことなく稲毛神社に到着。深夜0時。エイドは明かりも少なく神社の境内なので、真夜中の雰囲気がたっぷり出ています。
相変わらずバッテリーチャージャーは機能せず、スマホの残量は風前の灯。最後に家族へLINEを送ったところで力尽きる。役に立たないバッテリーチャージャーをゴミ箱に捨てました。
この時点でスタートから16時間が経過。当初、何も知らない状態で決めた16時間で完歩するという目標達成は不可能になりました。それならせめて20時間を切ろうと目標を切り替えます。
気持ちを入れ替えて出発です。
第3AS(稲毛神社)〜第3CP(鈴ヶ森道路自動遊園)[81km-88km]
この区間は7kmしかないので気が楽です。
残念なのは道路を走るバイクがうるさいことです。耳栓をして歩きたい気分です。ヤツらはマフラーを換えて走っている様子。バイク好きの私としては非常に残念な行為です。こういう輩がいるからバイクに対する世間的評価が下がるわけです。
日本でバイクが不人気になったのもこういう背景があると思われます。まじめに静かに純正マフラーで走っているライダーにとって非常に迷惑な話です。
現在、国内4大バイクメーカー(ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキ)は、ヨーロッパや東南アジアを中心に製品開発を展開。ニューモデルは彼の地で先に発表され、最後の最後に日本で発売されるという体たらく。バイクで走るときのマナーもちゃんとしたいものです。
・・・なんてことをモヤモヤ考えながら歩いていました。
第3CP(鈴ヶ森道路自動遊園)〜ゴール(神宮外苑室内球技場)[88km-100km]
第3CPに着いたところで装着しているスマートウォッチを見ると、94km歩いたと表示されていました。
つまり、あと6kmで100kmになるということです。もうひと踏ん張り!お茶を一杯いただき、ロキソニンをもう1錠飲んで速攻で出発。7km/hの速度でカッ飛ばします。
しばらくすると、前方30mぐらいのところに、なかなか追いつけない速さで歩いている人がいました。追いつけないということは、自分と同じくらいの速さで歩いているということなので、彼を基準にペースを作っていくことにしました。
ところが、しばらくひたすらついていったのですが、赤信号に捕まってしまって彼を見失ってしまいました。ペースメーカーは見えなくなってしまいましたが、その後もひたすら飛ばして歩きます。
いつしか品川駅前までやってきました。誰もいない品川駅を見るのは初めてです。腕時計には97km歩いたと表示されていました。
「ゴールまであと3kmか」
この調子なら20時間切りは余裕です。
ところが、しばらく歩いたところで、途中の青山方面への方向を指示してくれるスタッフさんが大きな声で、「ゴールまであと6kmでーす」と言っています。
あれ? 3kmズレている・・・。
「あと6kmなんですか?」
スタッフさんに聞き直すと、そうだと言う。
最後の最後で3kmのズレはデカい。疲れ切った体で3kmを歩くには30分以上かかります。20時間でゴールするには、午前4時までにゴールする必要がありますが、もう3時20分をすぎている。
残り3kmなら4時までにゴールできたが、6kmは無理。そう思った瞬間、緊張の糸が切れて力が抜けてしまいました。
「20時間切りもダメか・・・」
途方に暮れて、もういいや!という気分になって近くのコンビニで温かいほうじ茶を買って飲んでひと休み。
「いやぁ疲れた。のんびり行くか」
さっきまでのシャキシャキした歩きとは裏腹に、長旅の疲れも出てきてトボトボと六本木ヒルズの前をゆっくり歩きます。気づくとスマートウォッチのバッテリーが切れて何も表示されていませんでした。
今回は、スマホにしろスマートウォッチにしろヘッドライトにしろ、電子機器の充電が足りず使えなくなって泣かされました。特にスマホはスタート時からほとんど使えず写真も動画も撮影できず。Googleマップで現在地確認もできません。しかたなく周囲の人の動向を見ながらついていく形で歩いていました。
次回の100キロウォークでは、Ankerのモバイルバッテリーを買ってしっかり充電できる体制を整えよう。
ちなみに、残りの距離にズレた件について、スマートウォッチを購入して3年間経過して一度もアップデートしていなかったため、GPSの精度が低い状態だったのが原因でした。アップデートしたらまるで別の時計に生まれ変わりました。
話を戻して。
六本木にしろ、麻布十番にしろ、青山一丁目にしろ、おしゃれな街の代名詞。普段だったら多くの人で賑わっていますが、朝の4時には誰もいないわけです。自分がただひとり歩いているだけ。歩きやすくていい気分を満喫できました。
ヒルズを超えると地下に降りるエスカレーターに乗るようスタッフさんに誘導されました。ウォーキング大会でエスカレーターに乗れるのは優雅な気分になりました(笑)
地下道を抜け、上りエスカレーターに乗ってふたたび地上へ出ます。青山墓地の脇を抜け、青山一丁目駅前の大きな交差点へ。角にはホンダの青山本社です。その前を通過してまっすぐ行くと、右手に神宮外苑のイチョウ並木が見えてきました。ゴールまであと少し。
並木道を歩いてしばらく行くと、ゴールの室内球技場が見えてきます。
ゴール!
感動の瞬間。スタッフさんがひとりひとりに対してゴールテープを切らせてくれました。
タイムは20時間34分。初めての100キロウォークとしてはまあまあかな。
室内球技場の中でちょっと休んで、ゴールの余韻にひたっていい気分。朝4時半を過ぎたところなので、信濃町駅までゆっくり歩いて始発に乗れました。
おわりに
初めての100キロウォークということで、右も左も分からないままガムシャラに歩いた感がありました。スタート直後は緊張していましたが、だんだん慣れてきたところでゴールしたという感じでした。
エイドや道案内に立っていてくださるボランティアスタッフのみなさんの元気な応援に何度も助けられ、無事にゴールできたことを心から感謝したいです。
「小田原から神宮外苑まで歩くなんて無理だ!」と思っていたけれど、実際にやってみるとできるものだなと実感。ウルトラウォーキングに限らず、一見できそうに見えないほど壮大なことでも、取り組んで見ると意外とできちゃうものが多いのかもしれないとも思いました。
ウォーキングは体に良いと聞くけれど、一気に100kmも歩くのは本当に体に良いのか悪いのかちょっぴり疑問が残りました。少なくとも睡眠不足にはなるから良くない気はします(笑)
それはともあれ、ゴールした後の達成感と充実感はハンパありません。
「自分でも100km歩けた」という体験は、これから生きていく上で大きな自信になるはずです。
私にとって100キロ歩いた先にあったもの。
それは「自信」でした。
「あのとき100km歩けたんだからきっと大丈夫」
100kmを歩ききったという自信は、きっとこれから困難を乗り越えるときの助けになってくれるに違いありません。100キロウォークに参加したいと思う人の気持ちがよく理解できました。
100キロウォークに機会があったら、ぜひ参加してみてください。新しい視野が開けて面白い人生を歩めるかもしれませんよ。
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