不語怪神(ふごかいしん)第1巻-ウロボロスの庶子Ⅱ 私がかつて見た髭の長い黒衣の大僧正について
彼はちょうど、北極星の下にある暗い空間に浮かんでいて、胸の前で組んでいた指をゆっくり解き始めているところだった。指解きの運動の一つ一つに、私の庭に伸び出した夜咲花(よるさくはな)が花弁の結びを緩めて緩めきり、夜気に淡いまろい色を灯すだけの時間がかかっていた。彼は、指を開くと帽子を取って、開いた方の手で髪を撫であげる。帽子をまた乗せて、顎髭をひとしごきした後で両目を開いていった。
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