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BCスキーに特化したULシェルターをカスタムオーダーしたい

HMGのUltaMid2は本当に良くできたシェルターです。約10年にわたり私のスキーハイキングの良き相棒でした。厳冬期でも使用できるようにスノーフラップを取り付けた以外はデフォルトのまま使用していました。残念ながら生地のキューベンファイバーが経年劣化してしまい、現在は引退させています。その後ドームテントも使用していますが、雪上におけるフロアレステントの使い勝手はやはり忘れ難く、まるで別れた恋人を想うように改めてその魅力を再確認しています。

アダプターポールで延長したスキーポール2本でAフレーム設営
190cmのクロカンスキー2本で設営

スキーハイキングの文脈でUltaMid2を語る時、特に優れた点を2つ挙げておきます。

①スキー2本をAフレームで支柱にした場合の絶妙なサイズ感
②スキーで設営する想定で天頂部に補強パッドが付いている

172センチのスキー2本で設営
天頂部にスキーを受ける補強パッドが付いている
受けの補強パッドが無いシェルターだと生地を傷めてしまいます


キューベン素材で軽いとか、見た目が格好良いとかはどうでも良くて、あくまでスキーを使って設営できる点に他の商品には無い独自性があります。
①については同社のUltaMid4だと横幅が大きすぎます。他社のシェルターでも同じサイズ感の商品はなかなか見当たりません(大抵高さが足りない)。②においては私の知る限りHMGの商品のみです。実際にUltaMid2に変わる商品を随分探しましたが、天頂部にスキーを受けるための補強パッドが付いた商品は見当たりません。

23年4月の立山でLOCUS GEARの吉田さんに偶然お会いした際に、ピラミッドシェルターをスキーで設営する方法について意見を交わしました。仮にLOCUS GEARの製品をベースにカスタムオーダーするとなると、やはりポイントになるのが上記に挙げた2点となります。それに基づいて、候補として思い浮かぶ同社のKhafraとHapiをベースにちょっと考察してみます。
※現在は指定したサイズでのカスタムオーダーは受け付けていないようですので、今回の記事はあくまで個人の妄想です。

床面が正方形のKhafraだとUltaMid4と同じ理由で横幅が広すぎます(スキーのサイズ感に合わない)。Aフレームに対応させる場合の床の形は正方形ではなく長方形が理想です。もともとUltaMid2と形の似ているHapiだと今度は全体のサイズが小さすぎます。つまりKhafraをベースに縦横比を変えてサイズダウンするか、Hapiをベースに全体をサイズアップするかのどちらかになります。元からのデザインバランスを考えればHapiベースで考えるほうが自然ではないかと一時は考えましたが、高さに合わせてサイズアップさせると横幅と奥行きのサイズが大きく変わってしまいます。そこから更にサイズ比を変えてしまうと、もはや原型は留めないと思われるので、最初から大きさの近いkhafraをベースにカスタムしたほうが良いと現時点では考えています。

■シェルターとスキーのサイズ感
UltaMid2の正確なサイズを表記すると、高さ162cm、幅210cm、奥行き271cmとなります。実績として、190cmのクロカンスキーから、160cmの軽量スキーまで幅広い設営経験があります。実際にはスキーの長さは180cmから170cmの間が最も有効なサイズ感だと思います。一般的にも現代のBCスキーヤーの手持ちのスキーもそのサイズ感に収まるのではないでしょうか。私の主力スキーも180cmと172cmの2本です。雪上で設営する場合、スキーが長ければテール側を雪に埋めれば良いので厳密に何センチでないとダメとはなりません。スキーが短くなるほど設営した際に2本のスキーの間に生まれる居住空間が狭くなるイメージですが、最終的に人間がひとり間に寝ることが出来れば問題ありません。

■素材について
正直キューベンファイバーは長く使える素材ではありません。軽さは魅力ですが、カスタムオーダーするならシルナイロンと決めています。散々褒めちぎったUltaMid2を再購入しないのはその為です。多少の伸縮性があるシルナイロンのほうが設営時にテンションを掛けやすく、多様なシチュエーションにおいて使いやすいはずです。特にイグルーと併用する際にそう感じました。

このように奇抜な設営の場合はシルナイロンのほうが対応幅が広い

■サイズ感の検証
カスタムする上で一番頭を悩ませているのは自分の手持ちのスキーに合ったサイズ感です。UltaMid2と全く同じサイズでオーダーするか、今までの経験から得た細かい気づきをフィードバックするか、その判断にだいぶ時間を使いました。結論から言うとあと5cm~10cmの間で高さを上げたいです。それに伴い横幅と奥行も数%大きくなります。横幅と奥行きに関してはかねてよりもう少し大きいほうが良いと感じていました。理由として、12月の湿った雪やハイシーズンの豪雪に埋もれた場合に、幕が雪に押しつぶされ、ライフスペースが狭くなることが多かったからです。

同じ冬季使用と謳っても、降雪期と残雪期で設営するフィールドの条件は異なります。フワフワの新雪の上での設営と、ある程度硬いザラメ雪での設営では適切なスキーのサイズ感は微妙に異なります。例えば土の地面と同じようにある程度硬い雪面でスキーを立てる場合、スキーのテールは殆ど沈みません。新雪の場合、たとえ整地して踏み固めた雪面でもスキーのテールは10センチ~15センチ程沈みます。多くの滑り手がパウダー期と残雪期でスキーを使い分けると仮定すると、パウダー期は190センチ~180センチ、残雪期は180~170センチのスキーで設営が可能となるように、シェルターのサイズを想定すべきです。

180センチのスキーで設営した場合(残雪期を想定すると少し高さが足りません)
幕体が地面から15センチ程浮きます(新雪だとテールが沈み高さは相殺されます)
172センチのスキーで設営(残雪期を想定するとこれくらいが丁度よい)
幕体は5センチ程度浮いてます(悪天時はスノーフラップが必須)
残雪期の設営風景(スノーフラップの内側から雪を積んで固定しています)
雪上なら地面を掘り下げて高さ調節も可能です
スキーのセンター幅は106センチ。これくらいが丁度良く収まります
風に煽られた時でもビンディングが幕体に触れないようにスペースが必要です


■天頂部の補強パッドのサイズ感
現行のUltaid2のパッドだとスキーの幅が大きいと収まりが悪くなります。センター幅110センチを超えるようなパウダー専用のスキーだと少しカップサイズが足りない印象です。おそらく10年以上前にデザインされた当時だとそこまで太い板での設営を想定していなかったのかもしれません。ここ10年でファットスキーはより太くなりました。ここは改善したいポイントですね。また、極端なロッカー形状のスキーだとこのカップ内にスキーのトップが収まらず、そもそもAフレームでの設営に向きません。

補強カップの径は3cm程大きくしたい


■比較対象となるKhaflaとHapiのサイズを記載します

Khafla Sil

Khafla Silのサイズが高さ170cm、幅280cm、奥行き280cmです。ultamid2は高さ162cm、幅210cm、奥行き271cmとなります。ultamid2よりも高さは7cm、奥行きは10cm長くなります。その状態で横幅だけ短くするのが一番回答に近いのではないかと考えられます。

次にHapiです

Hapi Silのサイズが高さ130cm、幅180cm、奥行き270cmです。仮にultamid2を高さ5センチアップした場合、高さは167cmとなります。高さを基準にHapiのサイズ比に換算すると。各辺のサイズを28.5%アップするとして、高さ167cm、幅231cm、奥行き347cmとなります。これでは横幅と奥行きが大きくなりすぎてしまいます。そこからサイズ比を変更したとしても、それではHapiをベースにする意味はありません。

そこで、一旦ultamid2からのフィードバックを優先させ、高さは5センチUP、横幅と奥行きは各10センチupで考えてみます。その場合、高さ167cm、幅220cm、奥行き281cmとなります。これならKhaflaの高さと奥行きに近くなります。そのうえで横幅を狭くするカスタムを施せば理想のサイズに近くなります。あとは実際に発注する際にバランスを調整してもらうイメージです。

■暫定的な結論
Khafla Silをデフォルトの高さと奥行きのまま、横幅だけ220cmにカスタム。スノーフラップはスピンネイカーの生地が手元にあるので自分で後付けします。取付方法はスナップボタンで着脱可能にと考えています。天頂部のパッドは手持ちのUltaMid2からはぎ取って縫い付けてもらうか、一から作る場合はカップサイズをひと周り大きくしてほしいです。ここ10年でファットスキーはサイズアップしているため、スキーのノーズの収まり具合を考えると、現行のUltaMid2のパッドだと小さく感じます。

あと3センチ程収まりを深くしたい
スキーのノーズがぎりぎり収まっている感じです

残念ながら年々雪の降る量が減ってきているため、10年後の上信越エリアのスキーシーズンは確実に短くなっていると想像できてしまいます。健康で楽しく遊べるうちにこのカスタム案は実現させたいですね。未来の相棒と雪山を自由に旅するシーンを目に浮かべながら今年の初雪を待つことにします。

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