初めての立山BCスキー、7泊8日、春の嵐に遭遇(2018年5月)
2018.5.11~18
初めての立山を5月のGW明けに体験してきました。計画では9泊10日の予定でしたが、台風並みの嵐に2回遭遇し、8日目で耐え切れずリタイア。前半の天候は素晴らしく、滑りを満喫。悪天には見舞われましたが、全ての力を出し切り、素晴らしい時間を過ごしました。以下、まとめます。
【目次】
①計画(おのぼりさん)
②アクセス(意外と近い立山)
③装備計画(初めての試み)
④食糧計画(10日分の食糧)
⑤キャンプメニュー(充実の食生活)
⑥キャンプ生活(食べて寝て滑る&温泉)
⑦行動パターン(日帰りBCとの違い)
⑧嵐に耐えるキャンプ技術(camp or die)
⑨活躍した装備たち(ベスト9)
⑩来季の課題(その先のスタイル)
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①計画(おのぼりさん)
立山というか北アルプス自体が初めてでした。10連休が取れたので行先を考えていたところ、「せっかくだから行ってみたら?」と友人からのアドバイス。あまり興味のなかった北アルプスでしたが、自身のスタイルが広がると思い、チャレンジすることにしました。現金なものでいざ行く気になるとわくわくが止まりませんでした。
計画としては富山側からアクセス、室堂から雷鳥沢キャンプ場に移動、ベースキャンプを設置し、周辺の斜面を滑りこむ、と超アバウト。どんな斜面があるのかも分かりませんでしたので、とりあえず行ってみよう!となりました。
②アクセス(意外と近い立山)
新潟の自宅から電車を利用。
石打→六日町→直江津→糸魚川→泊→富山→立山
(ほくほく線→日本海ヒスイライン→あいの風富山鉄道→富山地鉄立山線)
となります。
所要時間は5時間20分。
そこからさらにケーブルカーとバスを乗り継げば室堂です。朝イチで出発、スムースに乗り継げば午後2時すぎには室堂に到着となります。石打からだと長野側よりも富山側からアクセスした方が途中の電車の乗り継ぎがスムースでより早く到着出来ます。移動コストは滞在費(キャンプ・温泉)含めて2万円で収まりました。
『北アルプスは遠い』
そんな先入観でしたが、意外と近い印象。
また、ローカル線を使った日本海側の列車の旅は風情もあり、妙高や白馬など、残雪の山々と水田のコントラストが絶妙でした。
③装備計画(初めての試み)
今までは移動しながらのスキー旅がメインでしたが、今回はベースキャンプを設置。滞在型BCスキーとなります。勝手は違いますが、今までの経験を活かして快適なキャンプ生活ができるように工夫してみました。
■基本装備
バックパック、パックライナー、シェルター、断熱シート、寝袋、マット、枕、スタッフサック各種、薄手ダウンジャケット、化繊インサレーション、パジャマ上下、ポッサムダウンソックス、高効率ガスストーブ&鍋、フライパン、チタン皿、カトラリー、食器、フードコンテナ、サーモスフードジャー、サーモス水筒、プラティパス×2、トイレセット、歯ブラシセット、手ぬぐい、充電器、ライト、日焼け止め、リップクリーム、サコッシュ、モバイルバッテリー、iphone6、エマージェンシーキット、電熱ゴーグル、ピッケル、チタンシャベル、アイゼン、スキーストラップ、単眼鏡、サンダル。燃料はガスカートリッジ大(500缶)を持参。
出発時のパックウェイトはスキー装備(スキー・ブーツ・ポール)無しで約14kg。
【雑感】
初日がいきなり放射冷却。マイナス10度まで気温が下がりました。それ以外は雨の日を除けば0度前後と温かかったのですが、1週間以上滞在する場合は、より幅広い温度帯に対応できるようにしたいです。その場合、保温力アップを狙うなら、マットと防寒着をバージョンアップすべき。滞在型なので快適性に関してはマージンも必要です。今回は快適度60%くらい。寝袋、マット、防寒着と色々組み合わせは考えられるので、次回が楽しみですね。前半と後半の2回の嵐については後ほど別途記述します。
■行動着
ウールベースレイヤー上下、ジャージパンツ、フリースベスト、ネオシェルパンツ、eVentハードシェルジャケット、ビーニー、サンバイザー、日よけバラクラバ、サングラス、テムレス 、予備グローブ、ネオプレンソックス
【雑感】
特に問題はありませんでしたが、ハードシェルの防水性が低く、急な雨で行動着が濡れました。逆に晴れている日はシェルの必要性が感じられず、春のBCならソフトシェルで行動、雨天時のみ防水性に特化した簡易雨具でも良いのではないかと思います。濡れた衣類は晴れた日中に天日干しすれば半日で乾きます。次回どんなレイヤリングにするかは時間をかけて検討します。
■スキー装備
スキー K2/カタマラン(センター120mm)
ビンディング マーカー/キングピン
ブーツ フィッシャー/トラバースカーボン
ポール ディナフィット/ブロードピーク
スキークランポン マーカーキングピン用120mm
シール ポモカ/クライムプログライド
【雑感】
直前にパウダー用のファットスキーを購入したため、ついノリでk2を持参しました。滑走性能は問題なく、初日こそ新雪がありましたが、ザラメ雪メインでも充分楽しめました。ただし残雪期はやはりセンター幅100mm前後がバランスが良く、軽量なほど移動も楽なため、次回はブリザードのコーチス(108mm)が有力です。その他、シールに関しては場所がら硫黄の成分がシールに付着するので新品のシールが汚れてしまいました。
■スキーバック
ikeaトートバックカスタム
立山でケーブルカーやその他の乗り物に乗る場合、専用のスキーケースか現地で購入できるビニールケースが必要になります。遊び半分でIKEAのトートバックを改造してスキーバックを試作、その過程でテント内のシートと併用できるアイデアが浮かびました。以下、試行錯誤の状況をTwitterのモーメントにまとめてあります。ご参考に。これめちゃ良いです。
④食糧計画(10日分の食糧)
【雑感】
通常のハイキングでは1日1kg換算で食糧計画を練りますが、食糧だけで10kgはきついため、内容を精査し、生ものやフルーツは極力持参せず、軽量な食材をメインに準備しました。実質9日分として6.6kg、1日換算だと730gです。移動型のキャンプやハイキングの場合、体力の消耗も激しいため、私の場合、1日4食ベースで計算します。しかし今回は滞在型のキャンプのため、行動時間や運動負荷もそれほど多くありません。もろもろ考慮すると、1日3食で足りると考えました。結果的には8日で終了したため、量的に不足することはありませんでしたが、仮に10日滞在したとしても、おそらく問題は無かったと思います。また、周辺の宿泊施設や室堂ターミナルでも飲食や補充が効くため、食糧不足の心配は無用です。むしろ燃料不足が心配だったので、ストレスが無いようにガス燃料は多めに持参、これは正解でした。メニューに関しては次項で詳しく説明します。
⑤キャンプメニュー(充実の食生活)
【雑感】
写真でも分かる通り、多彩なメニューを準備しました。なかでも今回初挑戦した味噌ラーメンの完成度は素晴らしく、キャンプエリアで屋台を出せるほどのクオリティーでした。勝因は自家製の味噌だれ、インスタントでは決して出せない美味しさでした。レシピは極秘です。また、滞在型のキャンプ生活はのんびりモード、ランチタイムが非常に優雅な時間となりました。主なメニューを書き出すと、
ベーグルサンド(クリームチーズ&あんこ)
ソーメンイタリアン
味噌ラーメン
カオマンガイ
チャーハン
杏仁豆腐
甘酒ラテ
ココナッツミルクラテ
ホットポカリ
などなどです。
ほか、特筆するとすれば杏仁豆腐です。朝に作成し、雪の上に放置すれば数時間で固まります。午前中に滑走を楽しんだ後、日中の温かい時間にキャンプサイトで冷たいデザートが楽しめます。ココナッツミルク味のハードタイプの杏仁豆腐で、こちらもお金が取れるレベルでした。
⑤行動パターン(日帰りBCとの違い)
【解説】
普段のスキーハイキングでは移動→滑走→キャンプとなりますが、ベースキャンプ型の場合、活動時間を朝と夕方に分けました。理由は2つあり、1つは雪質です。残雪期は日中10時を過ぎると日射がきつくなり、コンディションが悪化します。日の出前後に行動開始→日が出てコンディションが丁度良くなるのが9時から10時の間です。早すぎると斜面はまだカチカチです。そのぶんシールでのハイクは楽なので、やはり早朝移動は理にかなっています。遅くとも10時前にドロップインが理想。10時を過ぎると上部は良くても下部はストップ雪の場合が多いです。
2つ目の理由は紫外線対策です。残雪期の紫外線は凶悪です。下からの照り返しもあり、紫外線を避けるには完全防備が必要となります。その分ギアも増え、日焼けを防ぐための余計な作業も増えます。その意味でも、日射のきつい昼前後は行動を避けるのが賢い選択です。これは日帰りBCだと難しい行動パターンとなります。
午前の滑走を終え、キャンプサイトに戻り、ランチを食べて昼寝。洗濯や濡れたギアの乾燥もこの時間の仕事です。日が陰り始める午後3時以降に再度行動開始、夕方は気温にもよりますが、だいたい午後5時前後が丁度良く、緩んだザラメがほど良く冷え始めます。ドロップポイントに立ったらコンディションを確認。あせらず最適な雪質になるまで我慢。見極めたらドロップです。遅すぎると斜面が固くなりすぎるので注意。下山したらキャンプサイト近くの温泉に直行するため、ザックの中に温泉セットは忘れずに。
肝心の斜面に関しては言うことはありません。見渡す限りどこを滑っても良く、樹林帯がないので斜面が綺麗です。オープンバーンから岩の間をすり抜けるようなシュートまで、何本でもラインを引けます。今回目星を付けたところを全て滑ることは無理でした。どこを滑るかの判断ですが、何しろ初めてだったため、他の滑走者を良く観察し、自分が滑れそうなラインを決めました。その際に双眼鏡や単眼鏡があると、周りで滑る凄腕ライダーたちをチェックできます。撮影で滞在するプロのライダーさんたちもチラホラいらっしゃいます。ガイドツアーもよく観察しましたが、ガイドさんの行動も参考になりました。次回はさらに勉強して立山を楽しみたいと思います。
⑥キャンプ生活(食べて寝て滑る&温泉)
【解説】
おおよその行動パターンは前述したとおりです。滞在型キャンプ生活では日中の時間は優雅に流れます。日帰りBCの場合、特に立山では顕著ですが、滑走時間が昼前後になってしまい、コンディションが最高とは言えません。「今日は雪質悪いねー」と周りから声が聞こえてきたら優越感に浸れます。
雷鳥沢キャンプ場は1泊1000円。2泊以上は何泊しても2000円となります。サイト脇に受付小屋があり、トイレと水道は24時間OKです。周辺に宿泊可能な宿もあり、悪天時は避難(素泊まりなど)可能です。軽食程度なら食事も可能。温泉ももちろん入れます。日帰り入浴は700円。毎日入浴は贅沢だったので、2日に1回と決めて楽しみました。最高です。
今回ちょっと困ったのがモバイルバッテリーの充電でした。アンカーの充電器は正味4日分しかなく、途中どこかで充電できないかとも思いましたが、近隣の施設ではだめでした。宿泊客ならOKだそうです。最悪の場合、室堂ターミナルまでいけば何とかなりますが、次回はバッテリーを複数持つか、ソーラーバッテリーの採用も考慮すべきです。スマートフォンが使えなくなると情報収集の点で非常に困りますが、せめて携帯ラジオがあれば快適だったかなと思います。ちなみにキャンプサイトは携帯の電波が入りますので、ネット環境は問題ありません。立山全域もおおむね電波が入ります。
朝と夜の食事は簡単に済ませ、ランチのメニューを一番豪華にしました。調理時間も充分あり、食事が楽しくて仕方ありませんでした。
毎日昼寝をしました。日中は暖かく、リラックスできます。寝袋も当然ふかふかです。紫外線も避けられるので、疲労やダメージも最小限、寝不足も解消できます。充分休んで午後のハイクに備えます。
夕陽が沈む時間帯は斜面が美しく映え、自分のシュプールも良く見えます。パートナーがいれば写真を撮ってもらいたくなりますね。
⑧嵐に耐えるキャンプ技術(camp or die)
【解説】
7泊中、前半に1晩、後半に2晩と春の嵐に遭遇しました。最後はヘロヘロで下山です。以下5月の高山帯での悪天の特徴とその対策をまとめます。
1.台風並みの雨風、吹きっさらしの雷鳥沢キャンプ場
2、セオリーが通じなかった雪上キャンプ
3、強風と豪雨に耐える設営方式
4、シェルター内での濡れ対策
5、停滞時のトイレ問題
6、精神的な負担
***
1、台風並みの雨風、吹きっさらしの雷鳥沢キャンプ場
風速は常時20m以上、まるで真夏の夕立のような大量の雨が一晩中テントを襲いました。雪ならいくらでも対応できましたが、5月の雨は予想外。その時は20張り以上あったテントが朝になると全て撤退しており、残ったのはたまたま訓練中だった富山県警の山岳救助隊と自分のテントの2組でした。
2、セオリーが通じなかった雪上キャンプ
移動式のスキー縦走の場合、フロアレステントの設営は2本のスキーと4つに分割したスキーポールで完結します。この方式ならどんな悪天候でも対応できるのですが、定住式の場合はスキーやポールを設営に使うわけにはいかず、そのため四隅は割りばしを埋めてアンカーとし、中心のみスキーポール2本をAフレームにして立ち上げました(日中はポールを外します)。ところが信じられない雨量のため、テント周りの雪が一晩で50センチも溶けてしまい、アンカーに埋めた割りばしが徐々に露出、ついには深夜にテントの四隅が吹っ飛びました。ずぶ濡れになりながらピッケルなどで補強し、何とか朝を迎えました。センターポールも1本だけだと不安定です。
3、強風と豪雨に耐える設営方式
1回目の嵐が去った後、設営方式を再考。手持ちのスタッフサックを4つ用意し、中に雪を詰めてからアンカーの替わりとし、雪を50センチ掘り下げてから埋めました。たとえ次の雨で50センチ雪が溶けたとしても、この方式なら耐えられます(実際耐えました)。また、スノーフラップは内側に折り返し、シェルターの中から雪で覆い、生地全体にテンションを掛けました。内側の雪は風で飛ばされることも、雨で溶けることも無い為、風の吹込みはほぼ防げます。
4、シェルター内での濡れ対策
シェルターの内側は当然結露するわけですが、強い風雨でテントが煽られるたびに飛沫が飛び散ります。シェルター内は霧雨状態であっという間に寝袋が濡れてしまいます。このような場合はビビィサックでの対応が理想的ですが、緊急措置としてスキートートを逆さにして寝袋に被せて使用していました。
5、停滞時のトイレ問題
特に後半の悪天時は2日間テント内に閉じ込められました。激しい雨のため、テント外へは一歩も出ることが出来ませんでした。トイレ問題に関しては、小はジップロックで対応。大は何とか我慢しましたが、ぎりぎりの状態でした。対策として、小用にはいわゆるPボトルと、大用は携帯トイレを2個以上装備に加えるべきと学びました。室堂ターミナルには携帯トイレの回収ボックスがあります。
6、精神的な負担
雷鳥沢キャンプ場は携帯の電波はありますが、バッテリーが切れてしまうと何の情報源もなく、いつ天候が回復するのか、外の状況がどうなっているのか、全くわからない状態が続くことでの不安感、精神的なストレスは予想以上でした。電源確保のための予備バッテリーは大型化、さらに携帯ラジオなどを装備に加えても良いかもしれません。結果的には心が折れてしまい、予定よりも2日早い下山となりました。シェルター設営方式、濡れ対策、トイレ問題、ストレス対策など、あらかじめ万全なら悪天さえも楽しめたはずです。
⑨活躍した装備たち(ベスト9)
1、IKEAトート(スキー運搬、グランドシート、寝袋カバーと3パターン)
2、調理セット(煮る焼く沸かす、燃料も不安無し)
3、スタッフサック(歩が裏返り金に成る、思いもよらぬ活躍でした)
4、クリップ式サングラス(愛用品、3つ買った)
5、単眼鏡(観察用、凄腕ライダーをチェック)
6、H&M 手袋&ジャージ(これで充分、ジャージは着替え用)
7、IKEAごみ袋(テント内クローゼット)
8、おたふくバラクラバ(冷感素材、紫外線対策)
9、MIZOスコップ(剣スコ形状で固い雪にも強い)
⑩来季の課題(その先のスタイル)
初めての滞在型BCスキーでした。もちろん立山以外でも応用が可能です。今回は悪天に翻弄されましたが、その分学びが多く、普段のハイキングにも応用可能なTIPSを多く得ることが出来ました。また、解決できない課題に対しても、これから楽しく取り組むことが出来ると思います。1年後が楽しみですね。ここ10年は縦走メインのスキースタイルでしたが、今後しばらくはキャンプ技術を活かした滑走メインのベースキャンプ型スキーに取り組んでみます。
■覚え書き、来季の課題
上下ハードシェルを新調
スキーはセンター100前後を選択
スキートートは更に改良
設営方式の更なる工夫
ビビィサックの導入
マットはやはりダウンマットか?
温泉は毎日入りたい
モバイルバッテリーは2つ持ち?大型化?
停滞時の娯楽、ラジオ?タブレット?
テント内の快適性アップ
食事はさらに豪華にしたい
フライパンの大型化
紫外線対策
トイレ問題の解決
滑走斜面の情報収集
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