見出し画像

ちょっとそこまで、、尾瀬スキーハイキング 雨との戦い。

2018.4.14-15 1泊2日

【目次】
①山行計画(スキーを使って旧街道を北へ)
②ルート概要(大清水~桧枝岐村をピストン)
③課題(雨対策)
④ルート詳細1(往路)
⑤桧枝岐村(南会津の秘境)
⑥キャンプ(唯一のキャンプ適地)
⑦ルート詳細2(復路)
⑧サプライズ(熊との遭遇)
⑨温泉&食事(お楽しみ)
⑩スキー装備(ATスキー)
⑪食糧(2日で2kgちょい)
⑫パッキング(残雪期ULスタイル)
⑬雨対策(使えるものは総動員)
⑭グローブの選択ミス(毛細管現象の罠)
⑮悪天時の食事(とにかく体温維持)
⑯まとめ(失敗と経験)

***

①山行計画(スキーを使って旧街道を北へ)
2017-2018シーズンは少雪と3月以降の急激な融雪により、当初計画していた奥利根県境スキー大縦走(白毛門~越後駒ケ岳)は断念。加えて4月中旬の不安定な天候により、稜線ハイクは敬遠し、雨風でも比較的安心してチャレンジできる尾瀬周辺のスキーハイキングを実行しました。結果的には強風と激しい雨の中でもハイキングを楽しむことができたので、やはり尾瀬周辺はハイカーフレンドリーなエリアだよね〜、と再認識させられた2日間となりました。以下詳細を記録します。

②ルート概要(大清水~桧枝岐村をピストン)
■大清水ー三平峠ー尾瀬沼ー沼山峠ー七入ー桧枝岐村

画像1

かつては上州と会津を繋いだ交易の道「沼田街道」を北上。尾瀬沼を横断、沼山峠・七入を経由して桧枝岐村までの区間をピストンしました。宿泊は桧枝岐村の某所とし、1泊して翌日往路を戻りました。桧枝岐村では入浴のほか、名物の「裁ち蕎麦」を食べたかったのですが、初日に寝坊、出発が遅くなり、到着も遅れたため断念しました。行動時間は初日が9時間(ヒッチハイク含む)、2日目は11時間。"ちょっと福島まで蕎麦食べに!ついでに温泉も!"にピッタリなルート設定です。当初クロカンスキーでも問題ないと考えていましたが、甘々でした。そこは後ほど詳しく解説します。

③課題(雨対策)
天気予報では大荒れ。初日の日中は曇り、夜間は強風。翌日は昼まで激しい雨。つまり宿泊装備と行動着に念入りな風雨対策が必要でした。風対策は経験上問題ありませんでしたが、雨対策については「準備に対して結果6割機能」といった自己判定です。一部ミスもありましたが、行動に支障はなく、実り多い経験ができました。こちらも後ほど詳しく解説します。

④ルート詳細1(往路)
■大清水ー尾瀬沼
入山口は大清水。4月13日に戸倉の入口ゲートは開通済みで、車でアクセス可能。仮にゲート開通前でも戸倉ゲートから先は標高差が少ないため、除雪済みであれば自転車の使用も選択肢の一つです。大清水ルートは自転車を利用する場合、登り下りのミックスで漕げるエリアも多いため、同じ自転車利用でも登りばかりの戸倉~鳩待峠間よりは身体的な負担が少ないのでは?との印象です。

管理棟は無人、駐車場は無料で利用可能。ただしトイレ・水道などはまだ使用不可でした。スタート地点の林道には雪がなく、スキーを担いで500mほど歩きました。その先の一ノ瀬までは快適なスキーハイキング。登山道に入ると藪もあり、途中雪切れもあったため、冬路沢を詰めて三平峠に乗り上げる迂回ルートを選択しました。登山道と迂回路の2択ですが、この時期はどちらにもトレースがあり、迷う心配はありません。登山道は最短距離ですが、雪が少ないと藪が濃く、スキーだと厄介です。冬路沢は文字通り尾瀬沼への冬期アクセスルートと思われ、特に危険個所もないため登りも下りも安全なハイクが可能となります。

画像2


画像3

三平峠に出たらあとは尾瀬沼まで一気に下ります。コンディションが良ければ快適滑走。今回はザラメの上に所々新雪があり、ストップ雪で全く快適ではありませんでした。ちょっと残念。

■尾瀬沼ー沼山峠
尾瀬沼は一面雪と氷で覆われており、湖面をスキーで通行可能でした。週末だったため先着組もありました(年配グループ、ソロハイカー、女性BCクロカン等)。燧ケ岳は雲の中。

喧噪を避けて長蔵小屋方面に湖面を横断。小屋の軒先を借りて温かい昼食。すぐに沼山峠に向けて出発。湖面や平地はシールは着けずにスケーティングで高速移動が可能です。沼山峠手前は登山道から一旦外れ、沢地形をそのまま真っすぐ詰め上がる方が安全です。峠に出た後は林間を赤テープもしくはスノーモービルの跡をたどればすぐに道路に出ます。

画像4

画像5


■沼山峠ー七入
今回の核心部がこのエリアです。夏道は歩いたことが無かったので、安全策を取りATスキーを選んだのは正解でした。このエリアはクロカンスキーでは厳しいでしょう。あらかじめルートの通過経験があれば、難しい場所はスキーを脱げば良いだけだと判断できますが、急斜面のトラバースも多いので自分は今後もクロカンでは行きません。特に「抱返ノ滝」を迂回する場所は急下降を強いられます。ATスキーならターンするスペースがなくても横滑りで降下可能。その後も等高線が緩むまではデリケートなトラバース区間があります。滑落しても川に落ちるような場所もないのでクロカンでもいいかな?と判断は五分五分かもしれません。どちらにせよアイゼンやピッケルは不要です。途中何度か橋を渡りますが、雪の付き方次第で判断すれば夏道どおりに橋を渡らなくても通過可能です。上流側なら水量もあまり多くないのでドボンしても死にません。沢地形ですが、上からのデブリの心配も殆どありませんでした。あとは自己責任で。トレイルが送電線と交わる頃には雪も少なくなり、所々夏道も出てきます。極力スキーは脱がずに強行突破。しばらくすると七入山荘が見えてきます。開業準備で既に人がいました。

画像6

画像7

■七入ー桧枝岐村
Twitterのフォロワーさんから得ていた事前情報では、七入から先は御池まで除雪が進んでいるとのことでしたが、ゲートはその手前のキリンテ橋で閉じているため、自家用車の乗り入れは不可。よって七入りから先は舗装道路を5kmほど歩くか、道路わきの雪を繋いでスキーで歩くかの2択で移動が可能です。実際は七入からキリンテ橋の区間、雪を繋いでスキー歩行できるのが8割程度でした。キリンテ橋のゲート前で偶然釣り人に遭遇。会話の流れで桧枝岐村まで車で送ってもらえる展開になりました。その場合、なるべく相手を楽しませてお互いが良い気分になれるような雰囲気作りがハイカー(ヒッチハイカー)側の礼儀です。仮にヒッチハイク出来なかったとすると、キリンテ橋から桧枝岐村までは徒歩1時間ほどは見たほうが良いでしょう。

画像8

画像9

⑤桧枝岐村(南会津の秘境)
人口600人程度。民宿は多くありますので悪天の場合、当日でも宿泊可能です。温泉施設は3か所ありますが、1か所はまだ閉鎖中。今回は1番手前にある「燧の湯」を利用しました。街道からの入口には「そば処開山」があります。桧枝岐村の蕎麦は「裁ちそば」と呼ばれ人気があるそうですが、到着が4時半、店は5時閉店、そのため今回は温泉を優先しました。次回に期待です。日程に余裕があれば民宿に泊まり、1日滞在して村内でのんびり過ごしても良いかもしれません。村営の歌舞伎(人気らしいです)、温泉、蕎麦、村内散歩で十分1日楽しめるでしょう。調べると他にもいろいろお店があるようです。

◎燧の湯:朝6時から夜9時まで営業、年中無休、大人500円

画像10

⑥キャンプ(唯一のキャンプ適地)
温泉施設の向かいに公園があります。村内で幕営出来そうな場所はここしかありません。風を避けるため杉林の中にテント設営。この時期はまだ雪の上となります。水は温泉施設で確保。強風に備えて念入りに張り綱を張りましたが、夜間の風はさほど強くならず快適な一夜でした。7時過ぎには就寝。2時半起床。3時半行動開始。

画像11

⑦ルート詳細2(復路)
桧枝岐~大清水
七入まで徒歩で移動。足元はシリコンスリッパ。暗闇の中、傘をさして歩きました。6時過ぎに七入。装備を雨対応にリセット。平地は傘をさしたままスキー歩行。トラバースや急登はダブルストックに変更。沼山峠の建物の軒先で濡れた下着を交換してから尾瀬沼を通過。暖かい飲み物を常に補給しながら三平峠を越えたらあとは降るのみ。

画像12

⑧サプライズ(熊との遭遇)
一ノ瀬に出る手前で廃道を利用したところクマに遭遇!至近距離でしたので身体全体を観察出来て興奮しました。足跡と実際の身体のサイズ感も比較出来たので貴重な体験となりました。クマはビックリして斜面を一目散に駆け上がりお尻を向けて逃走。一瞬の出来事で写真や動画は無理でした。廃れた林道は藪も濃く、スピーディーな移動は出来ませんでしたが、とりあえず通過は可能です。地図で見るより実際は距離があり、結果的に時間は余計にかかりましたが、クマに逢えたので良しとします。一ノ瀬に出たら後は快適な林道をオートで下山。最後だけスキーを担いで駐車場に戻りました。

画像13

⑨温泉&食事(お楽しみ)
下山後の定番といえば温泉と食事。帰路の途中にある老神温泉「餃子の満州」が大のお気に入りです。温泉とレストランが併設、食事は1000円ちょっとでたらふく食べられます。お持ち帰りの餃子を頼んで帰宅したのが6時前。充実した2日間でした。

画像14

⑩スキー装備(ATスキー)
スキー dynafit/pdg&tlt race
ブーツ fisher travars carbon
シール pomoca
ポール dynafit bload peak

【解説】
先述した通り、今回のエリアなら軽量ATスキー(もしくはエッジ付きの鱗板)が最適解。雪がない場所はブーツ歩行もあったため、登山靴に近い軽量ATブーツ(もしくはクロカンシューズ)が最適です。雨のためシールははがれやすくなるので対策を施しました(はがれた場合、ダクトテープやスキーストラップでシールを固定)。ポールは何でも可。これは場所に関わらず、スキーハイキングにおいてはベーシックな装備と言えるでしょう。

★近年の傾向

画像15

行先次第でATスキーか鱗板かの選択が可能ですが、近年はセンター幅の広いBCクロカン用の鱗板にATビンディングを装着し、ブーツも軽量ATブーツを選択するケースが海外のスキーハイカーにおいて散見されます。利点はシールの着脱の手間の排除とATセットの安定性・信頼性の確保が高い次元で両立できる事です。シールの必要性がある場合は追加装備としてシールを持つのも良いでしょう。この手法については自分も現在試行錯誤中です。

⑪食糧(2日で2kgちょい)

画像16

雨の予報でしたので、調理器具や保温ギアとセットで暖かいメニューを用意しました。暖かいそうめん、お粥、具沢山スープ、ホットポカリなど。雨天での行動中に食事が摂れないケースも想定して高カロリーな行動食は何時もの2倍用意しました。通常は1日1kg以下に抑えますが、少しオーバーしています。

⑫パッキング(残雪期ULスタイル)
バックパック、パックライナー、シェルター、シート、マット、枕、寝袋、高効率ガスストーブ&鍋、カトラリー、水筒、サーモスフードジャー&ボトル、トイレセット、寝間着、化繊インサレーション、補助雨具類、電熱ゴーグル、モバイルバッテリー、iphone、独立型GPSなど。base waightが6kg、水と食糧込みのpack waightが10kg弱でした。

画像17

【解説】
パッキングは残雪期の基本装備に加え、悪天時の補助ギアとしてビニールベスト、電熱ゴーグル、独立型GPSなどを加えました。

画像18

電熱ゴーグルや独立型のGPSは吹雪や濃霧の際でも行動可能なように持参しています。通常のゴーグルを悪天時のハイクで使用すると、体温や汗の湿気ですぐにレンズが曇ってしまいます。スマートフォン用の大容量バッテリー(anker power core 10000等)と併用すれば、長時間の使用も可能です。

スマートフォンをGPSとして使用する場合、画面が雨やミゾレで濡れてしまうとほとんど機能しなくなります。対策としてはタッチペンを使用することをお勧めしますが、独立型のGPSとの併用が最も安心でしょう。今後はinReachの導入を予定しています。

行動着兼保温着として化繊インサレーションを選択しています。この選択は正解で、化繊インサレーションは濡れても最低限の体温は維持できるため、特に濡れた帰路に関してはシェルの下に着用することで快適性が維持できました。ビニールベストはエマージェンシー用としては機能しましたが、防水機能の高いウェアをチョイスできれば不要です。

⑬雨対策(使えるものは総動員)
雨対策を更に詳しく解説します。あらかじめ強い雨と風が予想されたため、防水ハードシェルに加えて補助雨具を持参。万全な体制で臨むも完全に身体の濡れを防ぐことは物理的に不可能でした。

◎濡れの要因を細かく分析すると、
1、撥水性の低下(シェルの撥水性が維持できるのはわずか数時間)
2、防水膜の決壊(経年により膜が破れる/広がる→水分が侵入)
3、シェル内の結露(外気温とシェル内の温度差/発汗により結露が発生)
4、毛細管現象による水分の侵入(手首やフード周辺からの水分の侵入)
5、衣類の着脱による濡れ(止むを得ず衣類を濡らす場合)

※ベテランハイカーになるほど防水シェルに対する評価・期待値は低くなります。その理由は防水透湿素材の防水性が不完全だと考えるからです。新品のシェル以外は長時間行動すれば必ず濡れます。

画像19

◎補助雨具(帰路に使用)
1、ビニールベスト(体幹のみ防水、袖がないので蒸れない)
2、ごみ袋スカート(パックライナーを割いて急遽作成)
3、VBL用ビニールソックス(ブーツインナーを濡らさないように活用)
4、VBL用ビニール手袋(インナーグローブが濡れないように活用)
5、傘(平地歩きや樹林帯なら傘の出番)

画像20

【解説】
傘のように物理的に水分を衣類や体に近づけない手法は日常生活においては一般的です。同じ理屈で水分を通さないビニール衣類や小物を補助的に雨具として有効利用するのは経験値の高いハイカーなら賢い選択となります。VBLの手法を理解して活用するのも有効な手段です。濡れを完全に防ぐのではなく、濡れを軽減する・濡れても快適性を維持すると考えるのが有益ではないかと考えます。

あらかじめ撥水性・防水性の高いジャケット&パンツを用意できれば補助雨具は不要になりますが、ハイシーズンに酷使したスキージャケットは残雪期のころには撥水性が低下しています。都度撥水剤でメンテナンスする方法もありますが、経験上は焼け石に水です。コストのわりに効果の持続性が低いことも問題です。また、購入したばかりの商品なら気持ちよく水を弾いてくれますが。毎シーズン新しいジャケットを購入出来る人間ばかりでもないでしょう。今回使用したハードシェルジャケットはeVentの3レイヤー、表生地のデニール数も50~70デニールの生地が使われており、耐久性・防水性も高いモノでしたが、購入から5年ほど使用し、経年のため長時間の雨に打たれると、表面の撥水性は維持できず、徐々に表の生地が濡れてきます。行動中にジッパーやピットジップを開けたり、フードを脱いだりしていると、細部から水分が侵入し、徐々に裏地が濡れてきます。身体が汗をかけば、内部からも当然濡れてくるでしょう。また、パンツはネオシェル素材でしたが、股関節や膝など、生地が屈曲する箇所はジャケットよりも生地の劣化スピードは速く、劣化した防水膜から水分が侵入してきます。今回のベースレイヤーはメリノウール、ミドルレイヤーにフリースベストを着用していたので、ジャケットの内部が濡れてきても、最低限の快適性・保温性は維持できましたが、朝から雨だった2日目は昼に休憩するころには全身が濡れた状態でした。

対応として、濡れたベースレイヤーを同じメリノウールの寝間着の上下に着替え、ミドルレイヤーに保温着として持参した化繊インサレーションを着用、その上にシェルとビニールベストを重ねます。下半身はパックライナーに使っていたビニール袋(ikeaのひも付きごみ袋)を即席でレインスカートに転用しました。結果としてシェルは濡れていても内部の快適性は保たれ、最後までなんとか凍えずに温かく行動することが出来ました。

ごみ袋スカートはまさに緊急使用例です。使用したのは110リットル用のikeaの紐付きごみ袋です。普段はパックライナーとして使用、緊急時に底をカットすればひざ下まで覆えるレインスカートとして機能します。ひも付きな為、ウェスト部分で調節が可能。ずり下がることを防いでくれ、快適に着脱できます。エマージェンシーキットの中にコードロックが一つあるとスマートに対応できます。この使用例はオールシーズン適用できますが、パックライナーを雨具に転用するわけですから、当然バックパックの中身(寝袋など)は濡れてしまいます。最後の選択肢としてお考え下さい。

今回はこのような簡易雨具でも経験やテクニックで十分機能することが実証できました。仮に全身濡れるような状況でも、体幹部分だけ濡れを最小限に留め、保温、防風が可能になる事で、最悪の事態は避けることが出来ます。

当然ながら、上記の手法は森林限界を超えた稜線で行動するようなBCスキーヤーには適さない考え方です。あくまでも低山でのスキーハイキングの手法としてご理解ください。そのぶん、積雪期・残雪期だけでなく、無雪期のハイキングでも転用可能なテクニックとなります。

VBL用のビニールソックスは完璧に役にたってくれました。桧枝岐村からの復路(雨天の舗装路/2時間ほど)を歩く際に、バックパックにスキーブーツをスキーごと外着けしましたが、露出したインナーの濡れを防ぐ為、ビニールソックスを被せて防水。足元はシリコンスリッパとネオプレーンソックスで雨の中を歩いたため、ソックスは完全に濡れました。その後ブーツを履く際には、ネオプレンソックスの上からビニールソックスを履くことで、ブーツインナーの濡れは完全に防ぐことが出来ました。保温性に関しては、残雪期なら内部が完全に濡れた状態でもVBL効果で問題なく温かかったです。自分のように多様な歩き方・旅のスタイルを選ぶ以上、対応力においてこれほど使えるギアは他にありません。

VBL用のビニール手袋ですが、通常使用においてはテムレスとセットで問題なく使用できました。この手法はオールシーズン応用可能な定番テクニックです。ただし今回は特定の要因により雨天時にインナーグローブを濡らしてしまいました。原因については以下に別途解説します。

⑭グローブの選択ミス(毛細管現象の罠)
グローブシステムはテムレスを改造したVBLシステムに全幅の信頼を寄せていました。寒冷期、残雪期、雨天使用時とあらゆる状況で対応できる汎用性の高いシステムだと考えていましたが、意外な盲点がありました。

画像21

【インナーグローブの長さ】
インナーグローブには手首の丈が長いヘストラのウールインナーを採用していましたが、この丈の長さが災いし、防水性の甘い手首から侵入した水分が毛細管現象によってウール生地を伝わり、グローブ内部全体に広がってしまいました。加えてテムレスの表面に微細な穴が開いていたらしく、表面からの水分の侵入もあったようです。VBLを採用していたので、ネオプレンソックス同様、内部が濡れても保温性に致命的な影響ありませんでしたが、アウターとインナーの両方を濡らしてしまいました。仮に長期縦走中の出来事だったとすると、致命的なミスと言わざるを得なかったでしょう。同じ失敗を避けるには、事前の穴あきチェックとインナーグローブの手首のカットを実行すれば問題ないでしょう。これはとても良い失敗の例です。

⑮悪天時の食事(とにかく体温維持)
1、ホットポカリ(サーモス500に粉末ポカリを薄めて作成)
2、温かいソーメン(行動中のランチに、短時間で作成可能)
3、温かいスープ(行動中の補助食に、フードジャーであらかじめ作成)
4、行動食(チョコバー等、歩きながら食べる)

画像22

【解説】
寒い時期の体温維持に温かい飲料を携行することは非常に重要です。中身は何でもよく、白湯でも構いませんが、好みもありますので自分の場合は薄めに作成したホットポカリに落ち着きました。スーパーで入手可能な粉末ポカリを日数分持参します。

低温下でも雨風雪を避けられる状況を作れるなら行動中の調理も可能です。その場合、調理や湯沸かしに時間のかからない高効率ガスストーブのセットが最適です。間違ってもこの時期(積雪期)の悪天予想時にアルコールストーブを選択しないこと。自分はプリムス社のη(イータ)シリーズを採用しています。

行程上、休憩時に調理が望めないような状況なら、あらかじめ朝のテント内で保温ギア(サーモスフードジャー等)を使用し、ランチや行動食を作成しておきます。この時は温かい具沢山スープやお粥を作成しています。フードジャーなら立ったままでも食べることが可能なので悪天時にも安心です。

最悪な状況でも飲食ができるように高カロリーな行動食は必ず用意しましょう。重要なのはザックの中に入れず、すぐに食べられるような場所に準備しておくことです。天候により食糧計画が破綻する場合(行動食しか取れないような状況)もありますので、行動食に関しては少し余分に持つのがコツです。最悪の状況でも温かい飲料と行動食さえ摂取できれば、下山までの間、体温を維持し動き続けることは可能です。

⑯まとめ(失敗と経験)
新しい事にチャレンジしたぶん、失敗はつきものです。重要なことはチャレンジは少しだけに留めること。いきなりハイリスクなチャレンジをすれば、運が良い場合を除き、だれにでも手痛いリターンが待っています。スキーハイキングは樹林帯や穏やかな地形、天候の比較的安定した残雪期を選んで実行すべきです。今回のように通い慣れた尾瀬エリアを更にちょっとだけ開拓するような旅でしたら、経験値は高まり、失敗は最高の教師となるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?