2024年1月27日(土)の300字小説

「分からないことはあるかい?」
 ジムでお爺さんにそうきかれて、私は苦笑する。
 いるのだ。こういう教えたがりな老人は。ターゲットはだいたい若い女性。
 彼らは一体何を求めているんだろう。教えてくださりありがとうございます、とてもためになりました、と感謝されたいのだろうか。
 いいです、とも言えず私は苦笑したまま、ランニングマシンのスイッチを押した。そうしたら、いきなりスピードが速く始まって、私の身体はガクンとバランスを崩した。
「危ない!」
 お爺さんは倒れてきた私を咄嗟に支えた。見た目より筋肉質だった。
「危なかったね。大丈夫だったかい」
 お爺さんは私を支えたままそう言った。ちょっとだけトゥンク……とときめいた。
おしまい

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