【詩】愛のひと
愛とはなんでしょうか
わたしにはわかりません
愛とは何か、が書かれたものはたくさんあるけれど
愛とは何か、を語る人はたくさんいたけれど
読んでも、聴いても、アタマは理解しても、やっぱりわからないのです
でもときどき、ほんのたまに、不思議なことが起こります
不意に、自分のなかが何かでいっぱいになって、あふれ出しそうになるのです
かすかな痺れとともに、泣き崩れそうになるのです
たとえばそれは、ある人の必死な姿をみたときです
遠くにすむ友人が病に倒れて苦しんでいるとき
その人は、視界がひらけた場所まで行き、友人の住む方角に向かって、せいっぱいの声で友人の名を呼びます
「負けるな」と叫ぶのです
大きな決断をして離島へ移住する友人が旅立つ日の朝
その人は、友人が乗る飛行機が見える場所まで車を飛ばし
上空の飛行機に向かって千切れるほど手を振り
本人には届かないエールを声のかぎり送り続けます
愛とは何かと問われたら、
私は答えます
愛は衝動
愛は祈りですと