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Human Performance in Air Traffic Management Safety EUROCONTROL/FAA 2010年 の勝手なサマリー
航空管制の研究をし出したので白書や論文を読む機会が増えた。ただ英語がきついので、まとめながら読んでいる。せっかくまとめているのだから公開するか…ということで書いてみた。把握違いがあれば指摘をお願いいたします。(適当がなせる写真の業)
引用元となる白書のURL:https://www.eurocontrol.int/sites/default/files/article/content/documents/nm/safety/hp_white_paper_2010_low.pdf
=============以下本文===========
人間の特性を、管制に取り込むことこそが必要である。そのためには、普段漠然と捉えられているエラー要因としてのヒューマンパフォーマンスを、定性的で一回の発生をも許さないものから、ある程度の発生を許容した上でそれを最小化する方向での管制体制設計が必要である。発生を抑える工夫をした方が、のちにかかるコストも少なく経済的であるとされる。
ヒューマンファクターとは、デザインの領域から端を発した言葉で、働く人々や仕事自体のデザインに関してパフォーマンスに関する知識を提供する考え方である。主にファクターは「業務の適正」「施設や道具」「規則や手順」「コミュニケーションの仕方」「身体的、組織的な運営環境」に分かれる。この他にヒューマンパフォーマンスに影響を与えるファクターは、「採用と教育、配置」と「社会的要因と運営方針」がある。これら3つは相互に関わっていることに気をつけられたい。
ケースp7:
Critical Incident Stress Management(CISM)がHuman Performance向上のためにヨーロッパ各地で行われている。この有無によって、インシデント発生後における交通流の混乱が減少し、スムースな航空管制が可能になったとの報告。
ATMでのヒューマンパフォーマンスは次の3つに分割される。
・人の能力
・モチベ、勤務姿勢
・周辺システム
である。
管制官は常に意思決定を行わねばならない。しかしそのタスクは多岐にわたり、常に状況が変わるので、注意を払われない場合も多々ある。例えば着陸機のセパレーションに気を取られていると、滑走路上の航空機に目がいかなくなる。つまり、必要に応じて「第二のタスク」を消すことがあるのだ。これはヒューマンパフォーマンスにおいて通常のことであるがゆえに、パフォーマンスを個人または集団レベルで向上させる必要がある。このパフォーマンスを測る手法は図(p12)に示してあるので、活用すると良いだろう。
ケースp13:
管制区域のハンドオーバーにおける意思伝達について、イギリスのある大きな空港では、HFのスペシャリストが実験としてPRAWNSというチェックリストを作った。引き継ぎに約1分ほど追加されてしまったが、セット時間が早くなり円滑な引き継ぎが可能になった。
航空管制において、ヒューマンパフォーマンスと安全は密接に関わり合っている。人間が機体を操縦し指示を出し受けしている以上、全ての航空管制業務はヒューマンパフォーマンスに依存する。つまりエラー発生の原因は、複雑に見えて実は、ヒューマンパフォーマンスただ一つに依拠するのである。
このような事象に対し、ヒューマンエラーの専門家であるヒューマンファクター論者(以下HF論者)は、「エラー発生可能性」として原因をまとめることを嫌いたがり、かつエラーを事例をベースに、定性的に捉えようと試みる。これはHF評価手法に基づくものであり、それ自体は否定されないが、安全評価の際には定量的かつ評価基準に依拠したそれが求められる。
人間信頼性調査(Human Reliability Analysis)がその差を埋めるだろう。つまり、HF論者の言う「複雑な原因」のそれぞれを抜き出し、実際の行動に合わせてエラー発生確率を計測、予測した上でシステムを評価するのである。これの代表例が、仮想交通流の設計と特殊な計算手法による短時間のシミュレーション評価を組み合わせた、オランダ航空宇宙研究所(NLR)のTOPAZシステムである。
このような際に必要な評価方法について、pp16〜19でまとまっているのでご覧いただきたい。つまり、定性的な部分を定量的に扱い、評価につなげる融合的な手法を解説するものである。
ケースp20:
ヒースロー空港の管制塔を移転するときに、運営会社であるNATSが定性的かつ定量的なアプローチで安全評価を行なった。❶変化を理解し、❷人間の行動リスクをどの程度まで許容するかを判定した上で細かくリスクを分け、❸判断パターンを許容値まで下げるよう設計、❹最低限として許容したリスクが許容されうるかを実験した上で、❺実際の管制運用でデータを更新、妥当性を検証する、というフローをたどらせた。データを取得するために、新たな管制等で必要な360度の「シャドーイング」と呼ばれる訓練において管制風景を観察の上評価した。この評価により能力向上が見られたため最低限のリスク回避は認められ、実際の管制での観察評価に移した。結果としてこのような方式の意向は非常にうまくいき、ヒューマンパフォーマンスに注目した設計の良さが証明される形となった。
EUとアメリカはそれぞれ航空管制について、「SESAR」と「NextGen」というプログラムで拡張を目指している。前者は人間が未だに管制意思決定の中心になるとし、機械と人間の分業の中で高度なコンピュータが人間の意思決定をサポートするだろうとしている。後者は主に利用者の意向を最大限尊重し、需要をベースにした航空管制システムを構築するが、分散的な意思決定をそこに組み込んでコンフリクトを解消する。前者が閉鎖的、後者が開放的な管制プラットフォーム構想ではあるが、どちらのプロセスにおいても管制容量の増加は決定事項であり、意思決定を簡易化する必要があるためヒューマンパフォーマンスの議論は重要である。人間が航空管制に関わり続ける故に、ヒューマンパフォーマンスの評価、管制手法の設計は今後も議論されるべき領域と言える。
ケースp24:ヒューマンファクターの議論に合わせて航空管制卓も進化した。近年ではコンピュータと人間のコラボを考え、新たにモニターが増設されたりした(補足:現在ではストリップの電子化などが進み、ここに表示されるよりも画面の重要度が増している)