おもしろおかしい初出産エピソード

昨年、初めての出産を終えた。
体調のこともあり、予定帝王切開だった。
十か月かけて大きくしたお腹を抱えて、私はベッドに寝かせられ真っ白な手術室へと運ばれて行った。

なにやらいろいろな機械が置いてあるし、思ったよりも感動のなさそうな出産になりそうだと思ったことを覚えている。
横向きの姿勢になって背中を丸めるよう、麻酔科医に指示されて、あっという間に麻酔用の針を刺された。これが一番痛かった。
少し涙目になりつつもなんとか耐えた。その体勢から仰向けになるよう指示されて、言われたとおりにする。
出産なのに、ずいぶんと淡々とした作業だと思った。

だんだんと下半身の感覚がなくなってきて、なんとか手術が始まりそうになった。しかし、私の知らないところでもう手術は始まっていた。

「えっ! もう切ってるんですか?」

私の問いに執刀医は「切ってるよー」とあっさり答えた。どうして言ってくれないんだ、心の準備というものがあるだろう、と思った。
しかし、その反面で私は『本当に切ってる感覚ってないんだ……』と感動していた。
「ありゃりゃ、思ったより頭が大きいな~。もう少し切るね」
恐ろしいことを言われた気がした。追加で切るということは、傷口が大きくなるということじゃないか。それは治りも遅くなりそうだし、術後も痛そうだ……と、私は泣きそうになっていた。

「もう少しで出るよ~」
執刀医の言葉に私は「もうですか!?」と問うた。「もうだよ」と半笑いで言われて、次の瞬間には赤ちゃんが生まれていた。

「あら、つるつるで綺麗な赤ちゃんだね」

麻酔のせいで朦朧とする意識の中、私はその言葉に不安を覚え、執刀医に問うた。

「髪、ありますか?」

執刀医は笑って答えた。

「そういう綺麗じゃないから、珠のような肌ってこと」

赤ちゃんは産声をあげて、助産師さんに抱きかかえられて私に顔を見せてくれた。
これが、私のおもしろおかしい初出産エピソード。

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