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プーチン大統領はBRICSサミットの後の記者会見で何を語ったのか?
10月22日から24日、ロシアの地方都市カザンにおいて、BRICS首脳会議が開催されました。
この会議への参加国は35か国、そのうち、首脳レベルの参加は22か国になりました。
5か国の正式メンバーに加え、新しく4か国が加盟。9か国が正式BRICS参加国になります。その新BRICS:9か国の人口を合わせると、世界人口の45%、約36億人、世界のGDPの35%です。
この会議は明らかに成功したように見えました。会議参加国が多数である事、どの国も自主的に参加している事(強制ではなく)、さらに、パートナーという新しい枠組みにより、新しい国が参加しやすくなったことなどがあげられます。
今回は国連グテーレス事務総長も参加。BRICSは、すでに世界的な機関として、認定されていると言っていいでしょう。
今回の会議の後、議長国であった、ロシアのプーチン大統領が、世界の報道機関を相手に、記者会見を開きました。そのビデオを見つけましたので、その内容を、皆様と共有したいと思いました。
日本語訳されていますので、ビデオを直接ご覧になっていただくのが一番確実だと思いますが、お忙しい方のために、重要な点をまとめ、また、追加の情報も加え、以下に書き出してみました。
これからの世界情勢を予想するためには、見逃せない内容だと思いました。ぜひ、皆様の将来設計に、お役立て下さい。
BRICS加盟国リスト
記者会見の内容の前に、参加国を確認しておきます。
BRICS国:ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ
今回正式にBRICS国となった国:
エジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦
以上の9か国がBRICS加盟国になります。正式にBRICS加盟国になるには、全メンバーの賛成が必要です。そうなると、加盟が難しい国も出てきます。
そこで考え出されたのが、「パートナー」という緩やかな加盟です。
これは正式な加盟のための申請を行っている状態のようです。
パートナー国:
アルジェリア、カザフスタン、ウガンダ、ウズベキスタン、ベラルーシ、ボリビア、キューバ、インドネシア、マレーシア、ナイジェリア、タイ、トルコ、ベトナム 計13か国
今回の会議に出席した国:35か国+6つの国際機関
以下、「」はプーチン氏の会話になります。()または括弧なしは私の補足説明です。
冒頭のプーチン大統領の声明
「第16回BRICS会は大成功で、新しいメンバーも「家族」として溶け込めるような有意義なものだった。相互尊重、相互利益の元で、様々な会合で、有益な意見が交わされた。
35か国と、6つの国際機関の代表が参加。独自の発展モデル、独自の文化を持つ、それぞれの国の権利と独立性を保ち、文明の多様性、ユニークな組み合わせにこそ、協力の力と可能性を秘めている。
国際法と国連憲章に基づいた、民主的で包括的、多極的な世界秩序に対する共通理解を得られた。不正な制裁や、伝統的な道徳価値を損なおうとする試みに対抗する共通の決意も示された。
BRICSは金融分野でのパートナーシップに意欲的。自国の国家通貨での決済に取り組む。(ドルの決済を離れる。)また、開発途上にある国々には、新開発銀行による各国の発展を援助する。
BRICSは閉じた会議ではない。BRICSの価値観を共有する全ての国に開かれている。外部からの指示や、狭いアプローチを押し付けることがない、共同解決策を模索する。
これは、そのような協力のあり方を求める、世界の高まる要求に答えざるを得かったからだ。
BRICSの拡大のために、新しいカテゴリーである、「パートナー国」の枠を設置。サミット期間中は、各国とも積極的な議論により、2国間協議など、非常に有意義な成果があった。
来年の議長国はブラジル。」
ここからは記者からの質問に応じたプーチン大統領の答え
Q ウクライナについて
ウクライナについては、プーチンはあまり答えたくないようでした。これまでも充分に説明を繰り返してきているので、同じ話をしたくないという感じです。苛立っているようにも見えました。
しかし、「平和を望んでいる」また、「平和協定に努力している国々(トルコなど)に感謝している」と最初は、述べるにとどめました。
しかし、その後、他の質問内容に答えている間に、我慢できなくなったようです。非常に的確に、また簡潔に、現在起こっている状況を説明を交えながら、ウクライナ情勢について答えました。
「2014年のウクライナのクーデターはアメリカの責任。その8年前のミンスク合意を西側は強調していたが、我々はだまされた。欧州のある国の支配者にだまされた。ウクライナの軍備は西側、NATOの協力がなければ出来ないはず。」
「トルコがロシアとウクライナ交渉の手順を踏んでくれた。停戦合意にロシア側は常に賛成してきた。しかし、キエフ政府がいつも拒否する。キエフは、非合理的な指導者だ。」
Q トランプ前大統領について
トランプ大統領と直接の関係はないと断言。
「アメリカの大統領が誰であろうとも、ロシアと前向きな関係を求めるのであれば、こちらもそのように対応する。
ロシアを脅迫すれば、逆にロシアを奮い立たせるだけ。西側から話しかけがあれば、いつでも会話は拒否しない。
しかし、心配なのは、アメリカの3つの赤字だ。アメリカの成長は3-3.2%で悪くはないが、国家債務が34兆円(この会議の後の発表では35.8兆円に膨らむ)、対外貿易赤字、支払いバランス。」
Q ロシアの安全保障について
「ロシアにとっては、主権が大事。西側はロシアを常に二次的国家として扱ってきた歴史がある。長い間、ロシアには国家的主権がなく、原材料の供給国家としての役割を求められてきた。
ロシアは、軍事、経済、金融の主権と独立を果たしたい。
NATOの東方拡大を無視できない。NATOは長い間、拡大はないとごまかし、約束を破ってきた。ウクライナ内に勝手に基地を建設。国際法や国連憲章を無視し、ウクライナのクーデターに資金援助をし、戦争を促した。
西側国内での条約によれば、一国の安全が他国の安全を侵害することは出来ないとある。ロシアもこれを強調したい。NATOの拡大は、ロシアの安全を侵害。何の公正さもない。ロシアはこの状態を変えたい。
ヨーロッパの内部の混乱は、内政の失策の結果。EUは今やリセッションの瀬戸際にある。不動産や観光のわずかな成長しかなく、ロシアの豊富で安いエネルギーを拒否し続け、自分の首を絞めている。
ちなみに、バルト海にはまだもう一本のノルドストリームのパイプラインが、残っているよ。ボタン一つで稼働するが、西側は、政治的な理由でそれを行わない。
ドイツなどは、全産業をアメリカに移転する暴挙に出ている。経済政策や国内政治の誤った決定から、責任転嫁しようとしているが、病んだ頭を変えなければならない。
米や欧州では、地球温暖化や環境破壊を悪用しようとしている人々がいる。原子力、石油、石炭を止めようとしている。新植民地主義の手段だと考えている。
新しい技術や融資に依存させ、貧しい国を押し下げようとしている。融資は悪条件で、返済は不可能。これは再依存させようとしていること。」
Q 中東について
「エスカレーションを引き起こすのは、いつも西側。
イランとは常に連絡を取っているが、紛争悪化を望んではいない。相互の妥協点を探りたい。
ガザの状況に心痛まない人はいない。4万人の女性と子供が被害者だ。その解決の一番は、パレスチナ国家の樹立にあると思う。紛争の悪化は許さない。そのために、イスラエルとも協力したい。イスラエルが対峙しているテロを認め、レバノンなどとも慎重な活動を求めたい。
しかし、これに関しては不注意な発言をしたくない。」
Q BRICSの中央主権的な機関の必要性は?
「参加国は、基本的に、自主自立で行動し、過度の官僚化を避けたい(EUみたいにしたくない)。高い給与をもらい、高級車を乗り回す官僚を生み出したくない。しかし、一連の構造化は考えなければならない。
サウジアラビヤは友人。今回も(外相が)参加している。
(ブラジルの記者の質問に答える形で)ブラジルと、ロシアの意見は違う。ベネズエラは主権のために戦っている。」
アメリカ政府はベネズエラの野党を支持。今回の選挙で、国民の支持を集めたマドゥロ大統領が、BRICSに参加。ブラジルは、米国政府寄りの左派大統領に変わってしまい、ベネズエラをいきなり非難しているような雰囲気。
Q 開発分野の公正
「パンデミックで何が起こっていたのか?
アメリカ6兆ドル、EU3兆ドルを、食料費と、医薬品の買い占めに使われた。そして、その医薬品はほどんどが廃棄されている。
食料買い占めのおかげで、世界でインフレが進行中である。
先進国は何をしたのか?
世界の金融の独占的な地位の乱用、稼ぐ以上に消費した。これは公正なのか?私たちはそうでないと考えている。
この(バカな)状態を変えたい。それがBRICSで取り組んでいることだ。」
「アフリカの安定に、ロシアが貢献できることが分かった。
投資プラットフォームーBRICSの枠組みでーはインフレを起こさず、効率よく機能。これらの国々では、毎年1000万人の人口増加により、都市化が起こる。生活水準も上がる。資本の蓄積が出来る。(※アフリカについては、翻訳が少し不明瞭でしたので、後で再度確認します。)
BRICSの開発銀行による、投資は、投資をする方も、受ける方も、相互の利益になるような形にする。」
その他のデータ
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私の感想
プーチン大統領は、きちんとした資料や数字をしっかりと把握し、出来るだけ分かりやすく、理路整然と説明していたように思います。私は長年、西側の政治家や官僚しか、見たことがありません。
プーチン大統領の記者会見を感動と共に聞き、「普通の優秀な政治家」を初めて見たような気がしました。
その庶民的な感覚は、一般の方と変わりません。
また、現在先進国が抱えている問題ーそしてそれは、世界の貧困国に困難を押し付けている状況は、不自然で、何とか解決したいという、熱意も感じられました。
世界の植民地化からの脱却は、誰もが願っている事です。しかし、自主・自立を求められた弱り切っている国々が、優れたアイディアや指導が必要な事も事実です。
こんな時に、BRICS内に日本が入っていればなあと、残念に思いました。
(追記:誤字脱字などは随時修正変更いたします。)
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